年表を「売れる物語」に変える!企業ストーリーの作り方5ステップ|採用・営業で響くプロの秘訣

「創業50年」「地域密着」「高い技術力」——自社のWebサイトには立派な沿革が並んでいる。でも、採用ページを見た学生の反応は薄い。営業資料を見た顧客の印象も、どこか平板だ。

こんな経験、ありませんか?

帝国データバンクの調査によると、2025年に創業10周年、50周年、100周年などの節目を迎える企業は全国で15万社以上にのぼります(参考:帝国データバンク|2024|2025周年記念企業の調査。このデータから専門家として言えるのは、多くの企業が自社の歴史を形式的に振り返る機会を持つ一方で、それを未来への推進力となる「物語」に昇華できている企業は極めて少ないということです。単なる年史の編纂で終わるか、未来を動かすストーリーを紡ぐか。その差が、次の10年の成長を大きく左右するでしょう。

当編集部では、世界的エンタメ企業で35年間にわたりブランドストーリーテリングの最前線に立ってきた専門家の知見をもとに、中小企業のマーケティング支援を19年間続けてきました。その中で痛感するのは、年表はあっても、物語がない企業が驚くほど多いということです。

「1975年設立」「2000年に新工場建設」「2015年ISO取得」…これらは確かに事実です。しかし、事実の羅列では、人の心は動きません。なぜその会社が生まれたのか、どんな苦労を乗り越えてきたのか、今どこへ向かおうとしているのか——そうした物語こそが、人を惹きつける力を持っています。

実際、企業のストーリーテリングは採用・営業・ブランディングの各領域で効果を発揮していることが、複数の調査で示唆されています。ある調査では、業務でストーリーテリングを利用していると回答した割合は42.1%にのぼり、ブランド認知度の向上に効果があったという回答が最も多くなっています(参考:Pzazz|2024|Storytelling Trends & Statistics 2024 Worldwide。また、物語として聞いた情報は事実の羅列よりも記憶に残りやすいという報告もあり、これが採用や営業の現場で応募者や顧客の心を動かす一因と考えられます(参考:Dodadsj|不明|物語として聞いた情報は約7割が記憶に残る!求める人材を… ※元記事に出典の明記なし)

本記事では、創業から現在までの歴史を「一つの物語」として整理し、採用・営業・社内共有で活用できる企業ストーリーの作り方を5ステップで解説します。読み終える頃には、自社の企業ストーリーの骨格が見えているはずです。

目次

第1章:企業ストーリーとは何か

1-1. 企業ストーリーの定義と範囲

企業ストーリーとは、会社の創業から現在に至るまでの歴史・価値観・転機を、一つの物語として再構成したものです。

単なる年表や沿革とは異なり、「主人公(創業者や会社そのもの)」「課題」「旅(挑戦)」「転機」「現在の価値観」という物語の要素を含んでいます。

企業ストーリーとブランドストーリーは混同されがちですが、厳密には異なる概念です:

  • 企業ストーリー(コーポレートストーリー):会社全体の歴史・価値観・ミッションを語る
  • ブランドストーリー:特定の商品・サービス・ブランドの誕生・特徴・価値を語る
  • 創業ストーリー:創業期の動機・苦労・成功に焦点を当てる

本記事では、この3つの中でも最も包括的な企業ストーリーに焦点を当てます。ただし、創業ストーリーは企業ストーリーの重要な一部ですし、ブランドストーリーも企業ストーリーと連動させることで説得力が増します。

1-2. なぜ今、企業ストーリーが重要なのか

19年間のWEBマーケティング支援で見えてきたのは、情報過多の時代だからこそ、物語が差別化の武器になるという現実です。

採用市場での優位性

候補者は給与や福利厚生だけで会社を選んでいるわけではありません。「この会社はなぜ存在するのか」「ここで働く意味は何か」を知りたがっています。

株式会社学情が実施した2024年の調査によれば、就活時に企業の「ビジョン/ミッション」を意識する学生は合計で67.4%に達しており、企業の「why(なぜこの事業をやるのか)」を明確にストーリーで伝えることが、採用競争力につながるのです(参考:Officeのミカタ(学情の調査引用)|2024|就活時に企業の「ビジョン/ミッション」を意識する学生 67.4%

営業・顧客関係での信頼構築

BtoB営業でも、企業ストーリーは威力を発揮します。特に初回商談では、「御社はどんな会社ですか?」という質問に対し、年表を読み上げるのと、創業の想いから現在の強みまでを1つの流れで語るのとでは、相手の印象がまったく違います。

ストーリーは信頼の土台を作ります。人は事実よりも物語を記憶し、物語を通じて感情的なつながりを持つからです。ある報告では、物語として聞いた情報は65〜70%が記憶に残ると示唆されており、これは商談相手の印象に残りやすいことを意味します(参考:Dodadsj|不明|物語として聞いた情報は約7割が記憶に残る!求める人材を… ※元記事に出典の明記なし)

社内の一体感とエンゲージメント

意外と見落とされがちなのが、社内向けの効果です。特に新入社員や中途入社者は、「この会社はどんな歴史を持ち、何を大切にしているのか」を知ることで、帰属意識が高まります。

企業ストーリーを社内で共有することで、従業員が「自社の歴史の一部を担っている」という当事者意識を持ちやすくなります。これは、長期的なエンゲージメント向上につながります。

1-3. 企業ストーリーに含めるべき5つの要素

効果的な企業ストーリーには、以下の5つの要素が必要です。これは、ブランドストーリーテリングの一般的な理論を企業ストーリーに応用したものです。

  1. 主人公
    通常は創業者ですが、「会社そのもの」を主人公にすることもできます。老舗企業の場合、初代から現在までを通して「会社」という存在を主人公にする方が自然です。
  2. 課題・動機
    なぜ創業したのか。どんな課題を解決したかったのか。ここに「why(なぜ)」が凝縮されます。
  3. 旅(挑戦と苦労)
    順風満帆な歴史だけでは、共感は生まれません。失敗、転機、苦労があるからこそ、物語は人を惹きつけます。
  4. 転機・成長
    苦労を乗り越えた瞬間、新しい価値観を獲得した出来事。これがストーリーの「盛り上がり」になります。
  5. 現在の価値観・未来への展望
    「だからこそ今、私たちはこう考えている」という結論。これが、ブランドの価値提案(Value Proposition)につながります。

【深掘りコラム】人を惹きつける物語の共通点「ヒーローズ・ジャーニー」
実は、人を惹きつける物語には共通の型があります。その代表が、神話学者のジョセフ・キャンベルが提唱した「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」です。これは「日常の世界」にいた主人公が、「冒険への誘い」を受け、「試練」を乗り越えて成長し、「宝」を持って帰還するという12のステップで構成されます。これを企業ストーリーに当てはめると、「日常の世界=創業前の社会課題」や「業界の不条理」、「試練=資金難や技術的障壁」、「宝=独自の価値やノウハウ」と読み解くことができ、自社の歴史をより劇的に、かつ共感されやすい構造で整理する強力なツールになります。

企業ストーリー骨子作成テンプレート

物語の要素 自社のエピソードを記入してみましょう
1. 主人公 (誰の物語か?) 例:創業者、会社そのもの、ある一人の技術者
2. 課題・動機 (なぜ旅に出たか?) 例:業界の不条理への怒り、顧客の満たされないニーズ
3. 旅 (挑戦と苦労) (どんな壁があったか?) 例:大手との競争、リーマンショックでの受注減、最初の失敗作
4. 転機・成長 (どう乗り越えたか?) 例:ある顧客の一言、キーパーソンとの出会い、技術的ブレークスルー
5. 現在の価値観 (旅を経て何を得たか?) 例:「品質第一」の本当の意味、顧客への約束、未来へのビジョン

企業ストーリーについてさらに深く学びたい方は、ブランドストーリーテリング完全ガイドで全体像を把握し、ブランドストーリーの作り方で具体的な作成ステップを確認してください。

第2章:企業ストーリー作成の5ステップ

企業ストーリーは、以下の5ステップで作成できます。このプロセスは、経済産業省が示す「価値創造ストーリー」の考え方や、大手コンサルティングファームが実践する制作フローとも整合性があり、実践的なベストプラクティスに基づいています(参考:経済産業省|2025|稼ぐ力強化取締役会5原則

まずは、作成プロセスの全体像を掴みましょう。企業ストーリーは大きく分けて5つのステップで作成します(【図】企業ストーリー作成の5ステップ・全体フロー)。

企業ストーリー作成の5ステップ・全体フロー

ステップ1: 資料収集とヒアリング(情報収集)

まずは、社内に眠っている一次資料を集めます。

収集すべき資料の例

  • 創業時の定款、事業計画書
  • 過去の会社案内、パンフレット
  • 社内報、周年記念誌
  • 創業者・歴代社長の挨拶文
  • 新聞記事、メディア掲載記録
  • 社員の表彰記録、社内イベントの写真

これらの資料から、「公式には残っていない」エピソードを拾い出すことが重要です。例えば、創業時の資金繰りの苦労、初めての大型受注、技術開発の失敗談など、沿革には載らないけれど印象的な出来事こそ、物語の核になります。

資料だけでは、感情や背景が見えません。キーパーソンへのヒアリングが不可欠です。

ヒアリング対象者の選定

  • 創業者(存命の場合)
  • 歴代社長
  • 古参社員(創業期〜成長期を知る人)
  • 顧客・取引先(外部視点)

ヒアリングすべき質問例

創業期について:
  • なぜこの事業を始めようと思ったのですか?
  • 創業時に最も苦労したことは?
  • 初めての顧客はどうやって獲得しましたか?
転機について:
  • 会社の方向性が大きく変わった出来事は?
  • 最大の失敗と、そこから学んだことは?
  • 「この瞬間に会社が変わった」と感じたのはいつですか?
価値観について:
  • この会社が大切にしてきたことは何ですか?
  • 今も変わらない信念は?
  • 次の世代に伝えたいことは?

ヒアリングは、1人あたり60〜90分を目安に、できるだけリラックスした雰囲気で行います。録音(許可を得て)しておくと、後で見返したときに新しい発見があります。

ステップ2: 時系列整理とストーリーラインの構築(骨組み)

集めた資料とヒアリング内容を、まず時系列で整理します。その上で、「どの時期を、どのくらいの分量で語るか」を決めます。

時系列整理のコツ

年表形式でいったん全てを並べます。その際、以下の情報を付記します:

  • 事実:何が起きたか
  • 背景:なぜそうなったか
  • 感情:当時の人々はどう感じたか
  • 影響:その出来事が会社に与えた影響

ストーリーラインの選択

全ての出来事を等しく扱う必要はありません。3〜5つの「章」に分けて、メリハリをつけます。

例:製造業A社(創業45年)の場合

  • 第1章:創業期(5年)—「町工場からのスタート」
  • 第2章:技術確立期(10年)—「独自技術の開発」
  • 第3章:危機と再生(5年)—「リーマンショックを乗り越えて」
  • 第4章:成長と多角化(15年)—「新市場への挑戦」
  • 第5章:現在と未来(10年)—「次世代への継承」

このように、等間隔ではなく、重要度に応じて章の長さを変えるのがポイントです。

ステップ3: エピソードの選定と肉付け(具体化)

ストーリーラインが決まったら、各章に「象徴的なエピソード」を配置します。

エピソード選定の基準

良いエピソードの条件:

  • 具体的で、誰が何をしたかが明確
  • 感情が動く(驚き、喜び、悔しさ、達成感など)
  • 会社の価値観を体現している
  • 読み手(採用候補者や顧客)が共感できる

避けるべきエピソード:

  • 内輪ネタすぎて、外部の人に伝わらない
  • ネガティブすぎて、会社のイメージを損なう
  • 守秘義務に抵触する可能性がある

肉付けのテクニック

エピソードを書く際は、5W1Hを意識します:

  • When:いつ
  • Where:どこで
  • Who:誰が
  • What:何を
  • Why:なぜ
  • How:どのように

さらに、感情の動きを加えると、物語が生き生きとします。

例:「2000年、初めての大型受注が決まった。社長は夜中まで工場で製品をチェックし続けた。『この仕事を失敗したら会社が終わる』—そんなプレッシャーの中、全社員が一丸となって納期に間に合わせた。納品が完了した瞬間、工場に拍手が響いた。」

このように、事実+感情+具体的な場面を組み合わせると、読み手の記憶に残るエピソードになります。

ステップ4: 複数バージョンの作成と用途別最適化(仕上げ)

企業ストーリーは、1つのバージョンだけでは不十分です。用途に応じて、長さと内容を調整します。

作成したストーリーの効果を最大化するには、用途に応じた使い分けが鍵となります。推奨する3つのバージョンと、それぞれの活用シーンの関係は【図】の通りです。

企業ストーリーの複数バージョンと活用シーンの関係図

推奨する3つのバージョン

1) 30秒版(エレベーターピッチ)
  • 文字数:150〜200字
  • 用途:名刺交換、SNSプロフィール、採用イベントでの自己紹介
  • 構成:創業の動機+現在の強み+一言メッセージ

例:「当社は1980年、『地域の困りごとを技術で解決したい』という想いから創業しました。以来45年、町工場から始まった私たちは、独自の精密加工技術を確立し、今では医療機器分野で高い評価をいただいています。『技術で、誰かの明日を支える』—これが私たちの使命です。」

2) 3分版(詳細ストーリー)
  • 文字数:800〜1,200字
  • 用途:会社案内、採用ページ、営業資料
  • 構成:創業〜現在を3〜5つの章で構成
3) 10分版(講演・プレゼン用)
  • 文字数:2,500〜3,500字
  • 用途:周年記念、社内研修、メディア取材
  • 構成:詳細なエピソードを含む、読み応えのある物語

用途別の最適化ポイント

採用向け:
  • 「若手が活躍した」「失敗を糧にした」といったエピソードを強調
  • 「ここで働く意味」が伝わる価値観の明示
営業向け:
  • 顧客の課題解決にフォーカスしたエピソード
  • 「なぜこの技術・サービスが生まれたか」の背景説明
社内向け:
  • 社員が知らない創業期のエピソードを含める
  • 「次の世代へのメッセージ」を明確に

第3章:業種・企業規模別の企業ストーリー設計

企業ストーリーの基本構造は共通ですが、業種や企業規模によって「見せ方」を工夫する必要があります。

自社の状況に合わせてストーリーを最適化するために、まずは代表的な4つの企業タイプ別に、強み・課題と設計のポイントを比較してみましょう(【表】企業タイプ別 ストーリー設計のポイント比較)。

スクロールできます
企業タイプ 主な強み 払拭したい課題 ストーリー設計のポイント
老舗企業
(創業50年以上)
歴史の重み、地域との関わり、技術の継承 「古い」「変化が遅い」というイメージ ・「伝統」と「革新」の二軸で語る
・世代交代をポジティブな転機として描く
・地域との信頼関係を具体エピソード化
成長企業
(創業10〜30年)
勢い、柔軟性、成長の実績 「歴史が浅い」「安定性への不安」 ・成長の軌跡を具体的な数字で補強
・大手との取引など象徴的な「転機」を強調
・「次の10年」の明確なビジョンを示す
スタートアップ
(創業5年未満)
革新性、創業者の情熱、機動力 「実績が少ない」「持続性への疑問」 ・創業者の「なぜ」という動機を熱く語る
・最初の顧客を獲得したエピソードを盛り込む
・チームの情熱や集まった背景を見せる
BtoB企業 顧客の成功を支える実績、専門性 「何をしているか」が伝わりにくい ・顧客名を匿名化し「顧客の成功物語」として語る
・課題解決のプロセスを具体的に描写
・業界内での評価や技術の背景を説明
本表は記事内容に基づきブランド塾編集部が作成。関連データとして、History Factory(2025)は若年層のヘリテージへの関心を示唆している。

3-1. 老舗企業(創業50年以上)のストーリー設計

強み:歴史の重み、地域との関わり、技術の継承
課題:「古い」「変化が遅い」というネガティブイメージの払拭

ストーリー設計のポイント:

  1. 歴史を「誇り」として語る
    • 「変わらない価値観」と「時代に合わせた変化」の両方を示す
    • 例:「創業時の『品質第一』は今も変わらない。ただし、品質の定義は時代とともに進化している」
  2. 世代交代をポジティブに描く
    • 「伝統の継承」と「新しい挑戦」を対比させる
    • 例:「三代目社長は、創業者の教えを守りながら、デジタル化に踏み切った」
  3. 地域との関わりを前面に
    • 地元で長く愛されている理由を具体的に
    • 例:「地元の祭りには毎年協賛し、社員も参加している。これが地域との信頼関係の証だ」

3-2. 成長企業(創業10〜30年)のストーリー設計

強み:勢い、柔軟性、成長の実績
課題:「まだ歴史が浅い」「安定性への不安」

ストーリー設計のポイント:

  1. 成長の軌跡を数字で補強
    • 売上・社員数・拠点数の推移を、ストーリーの中に自然に織り込む
    • 例:「創業5年で社員10名だった私たちは、今では100名を超える組織に成長した」
  2. 転機を強調
    • 「どうやって成長したか」の具体的なエピソード
    • 例:「2015年、大手企業との取引が決まった瞬間、会社の未来が変わった」
  3. 未来への展望を明確に
    • 「次の10年で何を目指すか」を明示
    • 例:「私たちは、この勢いで業界No.1を目指している」

3-3. スタートアップ(創業5年未満)のストーリー設計

強み:革新性、情熱、機動力
課題:「実績が少ない」「持続性への疑問」

ストーリー設計のポイント:

  1. 創業の動機を熱く語る
    • 「なぜこの事業をやるのか」のwhy強調
    • 例:「私たちは、既存の業界慣習に疑問を持った。もっと良い方法があるはずだ」
  2. 初期顧客のエピソードを入れる
    • 「最初の1社がどうやって獲得できたか」
    • 例:「最初のクライアントは、私たちのビジョンに共感してくれた。その信頼が、今の成長につながっている」
  3. チームの情熱を見せる
    • メンバーの背景、なぜこのチームが集まったか
    • 例:「創業メンバーは、全員が『業界を変えたい』という想いで集まった」

3-4. BtoB企業の特別な配慮

BtoB企業の場合、顧客企業名を出せないことが多いため、エピソード作りに工夫が必要です。

対応策:

  • 「業界A社」「製造業B社」といった匿名化表現
  • 「こんな課題を持つ企業が多い」という一般化
  • 具体的な数字は出さず、定性的な成果を語る

例:「ある大手製造業のお客様から、『納期短縮が課題』というご相談をいただきました。私たちは、独自の生産管理システムを提案し、結果として大幅な効率化を実現できました。」

第4章:企業ストーリーの活用方法

作成した企業ストーリーは、様々な場面で活用できます。

ストーリーは作って終わりではありません。具体的な活用シーンと、それぞれの目的に合わせた最適化のポイントを【表】にまとめました。

スクロールできます
活用シーン 主な目的 推奨バージョン 最適化のポイント
採用活動 働く意味の伝達、共感形成 3分版 / 10分版 ・若手が活躍した、失敗を乗り越えたエピソードを強調
・候補者が「自分ごと化」できる価値観を明示
営業・商談 信頼構築、パートナー認識の醸成 30秒版 / 3分版 ・顧客の課題解決に繋がるエピソードを語る
・「なぜこの技術が生まれたか」という背景を説明
社内共有 帰属意識向上、理念浸透 3分版 / 10分版 ・社員が知らない創業期のエピソードを盛り込む
・「次の世代へのメッセージ」を明確にする
Web・SNS ブランド認知拡大、ファン化促進 30秒版 / 3分版 ・専用ページで3分版を掲載
・SNSではエピソードを分割しシリーズ投稿
本表は記事内容に基づきブランド塾編集部が作成。採用市場の動向についてはMynavi(2025)、営業ピッチへの応用はHubSpot(2024)などが参考になる。

4-1. 採用活動での活用

採用サイトへの掲載

企業ストーリーを採用ページの冒頭に配置することで、候補者の関心を引きます。特に、「社長メッセージ」や「会社紹介」のセクションで、年表ではなくストーリー形式で語ると効果的です。

実際、企業ストーリーを採用サイトに掲載している企業では、候補者の志望動機が明確化しやすいという示唆があります。ストーリーを通じて「この会社で働く意味」が伝わるためです。

会社説明会での語り方

会社説明会では、冒頭5分で企業ストーリーを語ることを推奨します。PowerPointで年表を見せるのではなく、語り手(人事担当者や社長)が、自分の言葉で物語を伝える形が理想です。

説明会での語りのコツ:
・スライドは最小限(写真数枚程度)
・アイコンタクトを取りながら語る
・「実は、創業時はこんな失敗もあって…」といった、親近感を持たせるエピソードを入れる

4-2. 営業・商談での活用

初回商談での自己紹介

「御社はどんな会社ですか?」と聞かれたとき、企業ストーリーの30秒版を使います。これだけで、相手の印象は大きく変わります。

NG例:

「当社は1980年創業で、従業員50名、売上10億円です」

OK例:

「当社は1980年、『地域の困りごとを技術で解決したい』という想いから創業しました。以来45年、町工場から始まった私たちは、独自の精密加工技術を確立し、今では医療機器分野で高い評価をいただいています」

後者の方が、「なぜその会社が存在するのか」が伝わり、信頼感につながります。

提案資料への組み込み

提案資料の冒頭に、企業ストーリーの1〜2ページを入れることで、「単なるベンダー」ではなく「価値観を共有できるパートナー」として認識されやすくなります。

4-3. 社内共有とエンゲージメント向上

新入社員研修での活用

新入社員研修の初日に、社長または人事責任者が企業ストーリーを語ることで、会社への理解と愛着が深まります。

社内報・周年イベントでの発信

創業記念日や周年イベントで、企業ストーリーを改めて共有することは、社員の一体感を高める効果があります。特に、「過去を振り返り、未来を語る」という構成にすると、社員のモチベーション向上につながります。

4-4. WebサイトとSNSでの展開

「企業ストーリー」専用ページの作成

Webサイトに「About Us」や「私たちのストーリー」といった専用ページを作り、3分版のストーリーを掲載します。

SNSでの連載

企業ストーリーを「シリーズ投稿」として、週1回程度で発信する手法も効果的です。

例:
第1回:創業の動機
第2回:初めての大型受注
第3回:最大の危機と乗り越え方
第4回:現在の価値観と未来への展望

このように分割することで、1つ1つのエピソードが印象に残りやすくなります。

4-5. ストーリーの定期的な見直しと更新

企業ストーリーは、一度作って終わりではありません。会社の成長や変化に合わせて、定期的に見直します。

見直しのタイミング:

  • 周年イベント(5年ごと、10年ごと)
  • 経営者交代時
  • 事業内容の大きな変更があったとき
  • 採用市場の変化に対応する必要があるとき

第5章: 作成で失敗しないための3つの注意点

5-1. 「美化しすぎ」のリスク

企業ストーリーは、ポジティブな面だけを強調しがちです。しかし、失敗や苦労を隠しすぎると、かえって信頼性が失われます

良いバランスの例:
「創業当初は、資金繰りに苦労しました。給与が遅れたこともあります。しかし、社員全員が『この会社を守りたい』と思ってくれた。その絆が、今の会社を作っています」

このように、ネガティブな事実を隠さず、それをどう乗り越えたかを語ることで、共感と信頼が生まれます。

【深掘りコラム】なぜ「美化しすぎたストーリー」はすぐに見抜かれるのか?
企業ストーリー作成でよくあるのが、成功談ばかりを並べ、失敗や苦労を隠してしまうことです。しかし、これは逆効果。完璧すぎる物語は、現実味を失い、かえって読者の信頼を損ないます。心理学には「プラットフォール効果」というものがあり、有能な人が見せる些細な欠点や失敗は、その人の人間的魅力を高めることが知られています。企業の失敗談も同様で、それをどう乗り越えたかを正直に語ることで、単なる「強い会社」から「共感できる、信頼に足るパートナー」へと変わるのです。ストーリーの目的は完璧さを誇示することではなく、信頼関係を築くこと。その本質を忘れてはなりません。

5-2. 「内輪ネタ」になっていないか

社内の人には「当たり前」「常識」と思えることでも、外部の人にはまったく伝わらないことがあります。

チェックポイント:

  • 社外の人(家族や友人)に読んでもらい、理解できるか確認する
  • 専門用語や社内用語を使っていないか見直す
  • 「なぜそれが重要なのか」の説明が抜けていないか確認する

5-3. 守秘義務と固有名詞の扱い

顧客企業名や取引先名を、許可なく公開することはできません。

対応策:

  • 実名を出す場合は、事前に許可を取る
  • 匿名化する場合は、「業界A社」「大手メーカーB社」といった表現にする
  • 具体的な数字(売上、利益)は出さず、定性的な表現にする

まとめ:企業ストーリーで「選ばれる会社」になる

企業ストーリーは、採用・営業・社内エンゲージメントの全てに効果を発揮する、強力なツールです。年表を物語に変えることで、あなたの会社は「選ばれる会社」に変わります。

本記事で解説したステップを実践すれば、30秒版のストーリーは今日から作れます。
まずは、以下のアクションから始めてみてください。

今日のアクション:

  • 創業者・古参社員にヒアリングの打診をする(3名リストアップ)
  • 倉庫や社内サーバーから「昔の資料」を3種類探す
  • A4一枚でいいので、ざっくりとしたタイムラインを書く
  • 本記事のテンプレを使って、30秒版の企業ストーリーを1パターン書いてみる

セルフチェックリスト:

  • 主人公・課題・旅・転機・価値観の5要素が入っているか?
  • 読み手(採用候補者・顧客)が「自分ごと化」できる一文が入っているか?
  • ネガティブな出来事を隠しすぎていないか?

まずは完璧を目指さず、「バージョン0.1」を作ってみてください。社内の数人に見てもらい、フィードバックをもらいながら、少しずつブラッシュアップしていけばいいのです。

あなたの会社の物語を、世の中に届けましょう。

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FAQ:企業ストーリー作成のよくある質問

Q1:創業者が存命でない場合、どうやってストーリーを作ればいいですか?

A:創業者が存命でない場合でも、企業ストーリーは作成できます。以下の方法を組み合わせてください:

  1. 古参社員へのヒアリング:創業期を知る社員(退職者含む)に話を聞く
  2. 社内資料の発掘:創業時の定款、事業計画書、社内報、周年記念誌などから情報を集める
  3. 取引先・顧客へのヒアリング:外部の視点から、創業期のエピソードを補完する

また、創業者の直接の言葉がなくても、「なぜこの事業を始めたか」という動機は、会社の事業内容や社風から推測できることが多いです。歴代社長の挨拶文なども参考になります。

Q2:スタートアップで歴史が浅い場合、企業ストーリーは作れますか?

A:むしろ、スタートアップこそ企業ストーリーが重要です。歴史が浅い分、「なぜこの事業を始めたのか」(why)を明確に語ることで、採用や営業で差別化できます。

スタートアップの企業ストーリーは、以下の要素を中心に構成します:

  • 創業メンバーの背景と、なぜ集まったか
  • 解決したい社会課題や業界の問題点
  • 最初の顧客・ユーザーとのエピソード
  • 初期の失敗や苦労、そこから学んだこと
  • 今後の展望と、目指す未来

歴史の長さではなく、「情熱」「ビジョン」「初期の挑戦」を語ることで、共感を生み出せます。

Q3:BtoB企業で、顧客企業名を出せない場合、どうやってエピソードを語ればいいですか?

A:BtoB企業の場合、守秘義務の関係で具体的な社名や数字を出せないことが多いです。その場合は、以下の工夫をしてください:

  1. 匿名化表現を使う:「業界A社」「大手製造業B社」「地方の中堅企業C社」といった形で表現
  2. 一般化する:「こんな課題を持つ企業が多い」という切り口で語る
  3. 自社の技術・サービスに焦点を当てる:顧客名ではなく、「どんな課題を、どう解決したか」を中心に語る
  4. 許可を得た事例のみ実名で紹介:一部の顧客から許可が得られれば、その事例を詳しく語る

また、「業界での評価」「受賞歴」「メディア掲載」など、公開情報を活用するのも有効です。

Q4:企業ストーリーを社内で共有する際、どんな形式が効果的ですか?

A:社内共有では、以下の方法が効果的です:

  1. 新入社員研修での語り:社長または人事責任者が、入社初日に企業ストーリーを直接語る
  2. 動画化:社長インタビュー形式で企業ストーリーを動画にし、社内イントラネットで共有
  3. 冊子・ハンドブック:簡易版の企業ストーリーを冊子にして、全社員に配布
  4. 周年イベントでの発表:創立記念日などのタイミングで、改めて企業ストーリーを語り直す

特に、「語り」形式(文章ではなく、誰かが直接話す)が最も効果的です。感情が伝わりやすく、記憶に残りやすいためです。

Q5:企業ストーリーを作成する際、外部のライターやコンサルタントに依頼すべきですか?

A:予算と社内リソースに応じて判断してください。

社内で作成するメリット:

  • コストを抑えられる
  • 社内の深い理解がある
  • 作成プロセス自体が、社内の一体感を高める

外部に依頼するメリット:

  • 客観的な視点が得られる
  • プロのライティング技術で、より読みやすい文章になる
  • 社内では気づかない「強み」を発見してもらえる

推奨するのは、「社内で骨格を作り、外部の専門家に文章を磨いてもらう」というハイブリッド型です。ヒアリングや資料収集は社内で行い、最終的な文章化を外部ライターに依頼することで、バランスの良い企業ストーリーが完成します。

Q6:企業ストーリーを英語化する必要はありますか?

A:海外展開や外国人採用を視野に入れている場合は、英語版の作成を推奨します。

ただし、単純な直訳では、ニュアンスが伝わらないことがあります。特に、日本特有の価値観(「おもてなし」「匠の技」など)は、英語圏の読者に分かりやすく説明する工夫が必要です。

英語化の際は、ネイティブチェックを必ず入れてください。機械翻訳だけでは、不自然な表現になりがちです。

第6章: 今日から始められるアクションとチェックリスト

企業ストーリーは、「いつか作ろう」と先延ばしにしがちです。しかし、今日から始められる小さなステップがあります:

今日のアクション:

  • 創業者・古参社員にヒアリングの打診をする(3名リストアップ)
  • 倉庫や社内サーバーから「昔の資料」を3種類探す
  • A4一枚でいいので、ざっくりとしたタイムラインを書く
  • 本記事のテンプレを使って、30秒版の企業ストーリーを1パターン書いてみる

セルフチェックリスト:

  • 主人公・課題・旅・転機・価値観の5要素が入っているか?
  • 読み手(採用候補者・顧客)が「自分ごと化」できる一文が入っているか?
  • ネガティブな出来事を隠しすぎていないか?

まずは完璧を目指さず、「バージョン0.1」を作ってみてください。社内の数人に見てもらい、フィードバックをもらいながら、少しずつブラッシュアップしていけばいいのです。

あなたの会社の物語を、世の中に届けましょう。

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この記事を書いた人

当編集部は、世界的エンタメブランドでの実績を持つブランディング専門家の知見をもとに、実践的なブランドマネジメント情報を発信しています。

編集方針:
セサミストリート、ディズニー、ウルトラマンなど、数々の世界的ブランドを手がけた35年の業界経験から導き出された理論と実践ノウハウを、検索ユーザーの課題解決に役立つ形で体系化。最新のブランディング手法を分かりやすく解説します。

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