投資家の前で3分間の創業ストーリーを語る。数字は同じでも、響く起業家と響かない起業家がいます。この差はどこから生まれるのでしょうか?
当編集部で19年にわたり中小企業のマーケティング支援を行ってきた経験から言えるのは、多くの起業家が「何を解決するか(What)」は明確に語れても、「なぜ自分がそれをやるのか(Why)」を言語化できていないという現実です。事業計画書は完璧なのに、創業の理由を聞かれると「市場調査の結果です」で終わってしまう。採用面接でも「良い会社だと思います」としか言えない。これでは、誰の心も動かせません。
興味深いことに、Y Combinatorの共同創業者Paul Graham氏は、投資家が創業者に求める最も重要な資質は「決意(Determination)」であり、次いで「柔軟性(Flexibility)」と「想像力(Imagination)」だと述べています(参考:Paul Graham Blog|創業者に求められる資質の定義)。なぜなら、市場調査だけで始めた事業は、困難にぶつかった時に踏ん張れないからです。原体験に基づく使命感こそが、長期的な成功への原動力になります。
ブランドストーリーテリングの実践方法を研究してきた知見を踏まえると、創業ストーリーには明確な構造があります。「原体験→課題→WHY→困難→転機」という5つの要素で設計することで、投資家にも採用候補者にも、そして初期顧客にも響く物語が完成します。
本記事では、この5つの要素を深掘りし、30問の質問リストで原体験を抽出する方法から、30秒版・3分版・5分版・詳細版という4つのバージョンを作る手順まで、今日から実践できる具体的なステップをお伝えします。投資家ピッチ、採用活動、PR、顧客獲得という4つの場面での活用法も解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
- 第1章:創業ストーリーの重要性
- 第2章:5つの要素(原体験/課題/WHY/困難/転機)
- 第3章:書き方5ステップ(ワーク付き)
- 第4章:場面別活用(投資家/採用/PR/顧客)
- 第5章:落とし穴と真実性
- まとめ:今日からの実行手順
ブランドストーリーの理論全体については「ブランドストーリーテリング完全ガイド」で、作成の基本手順については「ブランドストーリーの作り方」で詳しく解説しています。本記事は創業者に特化した実践マニュアルとして位置づけられます。
第1章:創業ストーリーの重要性
1-1 なぜ創業ストーリーが必要なのか
創業ストーリーは、単なる「お涙頂戴」の話ではありません。特に、市場環境が厳しさを増す現代においては、事業の生存を左右する戦略的資産となります。STARTUP DBジャーナルの調査によると、2025年上半期の国内スタートアップ資金調達額は速報値で3,810億円と、前年同期比で26.2%減少しました(参考:STARTUP DBジャーナル|2025|2025年上半期国内スタートアップ投資動向レポート)。
このデータから専門家として言えるのは、投資家がより厳選した投資を行うようになった今、事業計画書の数字だけでは不十分であり、「なぜこのチームがやり遂げられるのか」という問いに対する説得力、すなわち魂のこもったストーリーの重要性がかつてなく高まっているということです。
創業ストーリーは、4つの重要な場面であなたのビジネスを支えます。
投資家へのピッチでは、「Why you, why now」が問われます。なぜ数ある起業家の中であなたがこの事業をやるべきなのか。なぜ今なのか。この問いに答えられるのは、スペックではなくストーリーです。
実務の現場では、投資家は「この創業者は困難に直面しても諦めないか」を見極めようとします。市場調査だけで始めた事業と、自分の痛みから始まった事業では、執念の質が違う。その差を測るのが創業ストーリーです。
初期顧客の獲得においても、ストーリーは決定的な役割を果たします。製品がまだ未完成の段階では、顧客は「何ができるか」ではなく「なぜ作っているか」で判断します。あなたの想いに共感した顧客こそが、最初のアーリーアダプターとなり、フィードバックをくれる貴重な存在になります。
採用活動では、ミッション共感型の採用が効果を発揮します。給与や福利厚生だけでは、スタートアップの不確実性を受け入れる人材は集まりません。「この想いに共感する」という動機で入社した人材は、エンゲージメントが高く、困難な時期も一緒に乗り越えてくれます。実際に、従業員のリテンション(定着)要因として「意味のある仕事(Meaningful Work)」が上位に挙げられるという報告もあります(参考:Second Talent|2025|従業員定着に関する統計調査)。
メディア露出においても、創業ストーリーは重要です。記者が記事にしたいのは、製品スペックではなく、人間ドラマです。「なぜこの事業を始めたのか」「どんな困難を乗り越えたのか」といったストーリーがあれば、メディアは関心を示します。
ブランドストーリーの理論的な背景については、「ブランドストーリーテリング完全ガイド」で詳しく解説しています。そこでは、ストーリーが「買う理由」を提供し、感情的なつながりを生むメカニズムを説明しています。創業ストーリーは、この理論を創業者の文脈に特化させたものと言えるでしょう。
1-2 創業ストーリー vs 事業計画書
事業計画書と創業ストーリーは、役割が異なります。
事業計画書は「What(何をするか)」「How(どうやるか)」を説明する論理的な文書です。市場規模、競合分析、収益モデル、実行計画。これらはすべて必要ですが、「Why(なぜあなたがやるのか)」「Who(あなたは誰か)」には答えていません。
創業ストーリーは、この欠けているピースを埋めます。
実務的には、投資家ピッチの冒頭1-3分で創業ストーリーを語り、その後に事業計画書の内容を展開するという構成が効果的です。最初にストーリーで共感を得ておくと、その後の数字の説明も「この想いを実現するための計画なんだ」という文脈で受け取られ、説得力が増します。
1-3 成功する創業ストーリーの共通点
19年の実務経験から見えてきたのは、響く創業ストーリーには5つの要素(原体験/課題/WHY/困難/転機)が含まれているという共通点です。
海外の成功例を見てみましょう。
Airbnbのブライアン・チェスキーは、2007年にサンフランシスコの家賃が払えず、デザイン系会議の参加者向けに自宅のエアマットレスを貸し出したのが始まりでした(参考:Business Insider|2016|Airbnbの創業から310億ドル企業になるまでの歴史)。この「自分の困りごと」が原体験となり、「旅行者と地元の人をつなぐ」という大きなビジョンに発展しました。
Dropboxのドリュー・ヒューストンは、2007年頃に長距離バスでUSBメモリを忘れて仕事ができなかった体験から、クラウドストレージの必要性を痛感しました(参考:YouTube|2025|Drew Houston本人へのインタビュー)。この個人的な不便さが、数億人が使うサービスへと成長しました。
国内の成功例も豊富です。
メルカリの山田進太郎氏は、世界一周の旅で芽生えた問題意識と、帰国後のスマートフォン普及を機に「限りある資源を循環させ、より豊かな社会をつくりたい」という想いを抱きました(参考:メルカリキャリア|2025|CEO山田進太郎インタビュー)。社会課題(大量廃棄)と個人の利益(不用品の現金化)を結びつけたストーリーが、急成長を支えました。
SmartHRの宮田昇始氏は、株式会社KUFU(現SmartHR)を2013年に創業し、複数回の事業転換を経て、人事労務手続きの非効率さ(ペーパーレス化の課題)を解決する現在の事業にたどり着きました(参考:Nstock|2025|宮田昇始氏インタビュー)。この実体験に基づく課題設定が、HR Techのリーダー企業への成長につながりました。
これらの事例に共通するのは、「市場が大きいから」「儲かりそうだから」ではなく、「自分が困った」「誰かの困りごとを放っておけなかった」という原体験から始まっている点です。
ブランドストーリーの作成方法については「ブランドストーリーの作り方」で、企業全体のストーリーを作る方法は近日公開予定の「企業ストーリーの作り方(記事No.33)」で解説します。本記事は創業者個人に焦点を当てた実践ガイドです。
第2章:創業ストーリーの5つの要素
響く創業ストーリーには、5つの要素が含まれています。それぞれを深掘りしていきましょう。
要素1:原体験(Origin Story)
原体験とは、「あなたがこの事業を始めるきっかけとなった個人的な経験」です。
市場調査や競合分析ではなく、五感で感じた具体的なシーンが重要です。「そのとき、何を見て、何を感じたか」を語れるかどうかが、ストーリーの真実性を左右します。
3つの類型があります:
- ①自分の困りごと型
自分自身が直面した不便、苦痛、不満がきっかけ。Dropbox(USBメモリ忘れ)が典型例です。 - ②身近な人の困りごと型
家族、友人、同僚など、身近な人の苦労を目の当たりにした経験。介護、育児、病気など、深刻な問題ほど強い動機になります。 - ③仕事での気づき型
前職や業界経験の中で「これは変えるべきだ」と感じた瞬間。SmartHRの事例がこれにあたります。
NG表現とOK表現の対比:
❌NG:「市場調査の結果、この分野に成長性があると判断しました」
→ 機械的で、あなたである必然性が伝わらない
✅OK:「取引先の社長が、毎月3日間も労務手続きに追われている姿を見て、これは絶対におかしいと思いました。その瞬間、何とかしなければと使命感が湧いてきたんです」
→ 具体的なシーン、感情、使命感が伝わる
原体験の描き方については、「読者の心を掴む!ブランドストーリーの書き方|19年経営のプロが教える7つの感情ライティング術」でも詳しく扱っています。
要素2:解決したい課題(Problem)
原体験から見えてきた課題を、3つのレベルで整理します。
- ①個人的レベル
「私(や身近な人)が困っている」という個人の問題。これだけでは事業にならないかもしれませんが、ストーリーの起点としては重要です。 - ②社会的レベル
同じ困りごとを抱えている人が、どれだけいるか。市場規模の話になります。「私だけじゃない。◯万人が同じ問題を抱えている」というデータで補強します。 - ③哲学的レベル
「この問題が放置されると、社会はどうなるか」という大きな視点。環境問題、格差、人権など、普遍的な価値との接続を試みます。
“放っておけない理由”のテンプレート:
「◯◯(個人的課題)を経験して、これは単なる不便ではなく、△△(社会的課題)の一部だと気づきました。このまま放置すれば、□□(哲学的な未来)になってしまう。だから、今、動かなければならないと思ったんです」
Airbnbの事例を見てみましょう。
- 個人的:家賃が払えない(自分の困りごと)
- 社会的:都市部で宿泊費が高騰、空き部屋は余っている(需給ミスマッチ)
- 哲学的:人と人のつながりが希薄化する現代社会で、旅を通じた交流の場を作りたい
この3層構造が、単なる「格安宿泊サービス」を超えた、大きなビジョンを提示しています。
要素3:WHYの発見(Purpose)
課題が明確になったら、次は「なぜ私がやるのか」を言語化します。
ここで重要なのは、個人的使命と社会的使命のバランスです。
- 個人的使命:「私はこれを実現したい」という内発的動機例:「自分と同じ苦労を、他の人にはしてほしくない」
- 社会的使命:「世界をこう変えたい」という外向きの目的例:「すべての人が、自分の時間を大切にできる社会を作りたい」
フレーズ例:
- 「私は◯◯(体験)を通じて、△△(価値観)が何より大切だと学びました。だから、この事業で□□(実現したいこと)を目指します」
- 「◯◯な世界を作りたい。それが、私がこの事業に人生を懸ける理由です」
メルカリの事例:山田進太郎氏は「限りある資源を循環させることで、より豊かな社会を作りたい」という社会的使命と、「一人ひとりが不用品を簡単に売れる仕組み」という個人的な利便性を結びつけました。
SmartHRの事例:宮田昇始氏は「労務担当者の無駄な時間をゼロにしたい」という個人的使命と、「日本の労働生産性を高める」という社会的使命を両立させています(参考:Nstockインタビュー記事|2025|宮田昇始氏CEO退任後の活動)。
WHYを深掘りするための質問リストは、第3章で詳しく紹介します。
要素4:困難と挑戦(Struggle)
どんな事業にも困難があります。その困難をどう乗り越えたか(あるいは乗り越えようとしているか)を語ることで、ストーリーに深みが生まれます。
困難には3つのパターンがあります:
①市場の無理解
「そんなサービス、誰が使うの?」と言われた経験。Airbnbは初期、「他人の家に泊まるなんて」と否定的な反応ばかりでした。
②資金不足・人材不足
スタートアップの典型的な困難。この制約の中で、どう工夫したかがストーリーになります。
③自己懐疑
「本当にこれで良いのか?」と迷った瞬間。完璧な起業家はいません。むしろ、迷いながらも前に進んだプロセスが共感を生みます。
Uberの事例を見てみましょう。
Uberは創業初期、労働法上のドライバー分類問題、自治体や国の規制、伝統的なタクシー業界からの反発と法的抵抗など、多くの困難に直面しました(参考:Robins School of Business|2025|Uber Case Study)。同社は2025年第3四半期に$479百万の一時チャージを計上したと報じられており、これは「未開示の法的・規制問題」に起因するとされています(参考:Fortune誌|2025|Uber says ‘unpredictable’ issues involving ‘legal proceedings’ hit earnings)。しかし、「移動の未来を変える」という信念を持ち続け、一つひとつクリアしていきました。
ここで重要なのは、困難を美化しすぎないことです。「すべて計画通りでした」という話は嘘くさい。「正直、何度も諦めようと思いました。でも、◯◯(支えてくれた人/信じてくれた顧客)のおかげで、続けることができました」という素直な語りが、信頼を生みます。
困難な状況を乗り越えるストーリーテリングの具体的な失敗例については、ストーリーテリング失敗例5選|19年・35年のプロが教える炎上回避策【診断シート付】で詳しく解説しています。
要素5:転機と現在地(Transformation)
最後の要素は「転機」です。困難を乗り越えた瞬間、風向きが変わった出来事、あるいは現在進行形の挑戦を語ります。
転機の3類型:
①外部からの評価
著名投資家からの出資、大手企業との提携、メディア掲載など。「認められた瞬間」がストーリーに説得力を与えます。
②顧客の声
「あなたのサービスに救われた」というフィードバック。これほど強い転機はありません。
③ピボット・方向転換
当初の計画を変更し、新しい方向に舵を切った決断。失敗ではなく、学習と適応のストーリーとして語ります。
Instagramのピボット事例も有名です。元々は位置情報SNS「Burbn」でしたが、ユーザーが写真共有機能しか使っていないことを発見し、写真に特化してリブランディングしました(参考:Product Monk|2025|How Instagram Pivoted from Burbn)。
Twitterの事例も同様です。元々はポッドキャスト配信プラットフォーム「Odeo」でしたが、iTunesの登場で方向転換を迫られ、社内プロジェクトだった短文投稿サービスをスピンアウトさせました(参考:Zamzarブログ|2019|Twitter pivot from Odeo)。
転機は「ハッピーエンド」である必要はありません。「まだ道半ばだが、確かな手応えを感じている」という現在進行形のストーリーでも構いません。むしろ、完成していないストーリーの方が、「一緒に未来を作ろう」という共創の余地を残し、採用や顧客獲得においては効果的です。
第3章:書き方5ステップ(ワーク付き)
理論を理解したら、次は実際に書いてみましょう。5つのステップで進めます。
Step 1:原体験を掘り下げる【30問の質問リスト】
多くの起業家が「原体験がない」と言いますが、実際には言語化できていないだけです。以下の30問に答えることで、必ず何かが見つかります。
【深掘りコラム】「特別な原体験がない」は本当か?
30の質問を前に「自分にはDropboxのような劇的な原体験はない」と悩む方もいるかもしれません。しかし、優れた創業ストーリーは必ずしも派手な事件から生まれるわけではありません。むしろ、多くの人が見過ごす「日常の小さな不満」や「当たり前とされている非効率」にこそ、共感を呼ぶ物語の種は眠っています。
例えば、「なぜこの書類はいつも手書きなんだろう?」「この業界の会議は、なぜいつも長いんだろう?」といった、日々の業務で感じた小さな”違和感”。それこそが、あなただけのユニークな視点であり、原体験の出発点です。特別な経験を探すのではなく、あなたの「当たり前」を疑うことから、物語は始まります。
【原体験発見ワークシート:30の質問】
A. 過去の不満・困りごと(10問)
- 人生で「これはおかしい」と強く感じた瞬間は?
- 自分や身近な人が、理不尽な思いをした経験は?
- 「もっと良い方法があるはずだ」と思ったサービスや製品は?
- 時間やお金を無駄にしたと後悔した経験は?
- 前職や学生時代に「なぜこんなやり方なんだ?」と疑問に思った慣習は?
- 身近な人が苦労している姿を見て、心が痛んだ経験は?
- 社会のニュースで「何とかできないのか」と憤りを感じたことは?
- 自分の能力や時間が活かされていないと感じた瞬間は?
- 「こんなサービスがあったら良いのに」と思ったことは?
- 既存のサービスに失望した経験は?
B. 原体験の深掘り(10問)
- その時、あなたは何歳で、どこにいましたか?(具体的なシーン)
- そこで何を見て、何を聞き、何を感じましたか?(五感)
- その瞬間、心の中でどんな言葉が浮かびましたか?
- なぜ、それがそこまで強く心に残ったのですか?
- その経験の前と後で、あなたの価値観は何か変わりましたか?
- もしその問題を解決できたら、誰が一番喜びますか?
- その問題が10年後も解決されていないとしたら、世界はどうなりますか?
- あなた以外に、同じ問題を感じている人はどれくらいいると思いますか?
- その問題を放置している理由(既存企業がやらない理由)は何だと思いますか?
- あなたが解決に取り組む「固有の理由」は何ですか?
C. WHYの発見(10問)
- あなたが人生で最も大切にしている価値観は何ですか?
- 「自分はこういう人間だ」という自己定義は?
- 10年後、どんな自分でありたいですか?
- 周りの人から「あなたらしいね」と言われることは?
- 過去の成功体験や達成感を感じた瞬間の共通点は?
- 「これだけは譲れない」というこだわりは?
- 社会に対して「こうあるべきだ」と思う信念は?
- あなたが尊敬する人(歴史上の人物、著名人、身近な人)は誰ですか?その理由は?
- もし無限の時間とお金があったら、何をしたいですか?
- 墓碑銘に何と刻まれたいですか?(人生の終わりに何を成し遂げたいか)
これらの質問に、ノートやスマホのメモに思いつくまま書き出してください。最初から完璧な文章である必要はありません。箇条書きで構いません。
実務のコツ:一人で考えるのが難しければ、信頼できる友人や共同創業者に質問してもらいましょう。対話の中で、自分でも気づかなかった想いが言語化されることがよくあります。
Step 2:5要素で骨格を作る
30問のワークシートから、5つの要素を抽出します。
要素1:原体験
いつ・どこで・何があった?
[あなたの答え]
要素2:解決したい課題
個人的/社会的/哲学的の3層で整理
[あなたの答え]
要素3:WHY(なぜ私がやるのか)
個人的使命 + 社会的使命
[あなたの答え]
要素4:困難と挑戦
何が一番大変だった?(現在進行形でもOK)
[あなたの答え]
要素5:転機と現在地
風向きが変わった瞬間は?
[あなたの答え]
この骨格シートを埋めることで、あなたの創業ストーリーの「素材」が揃います。
Step 3:3幕構成でストーリー化する
Step2で整理した5つの要素を、物語の普遍的な型である『3幕構成』に落とし込んでいきます。次の図のように、各要素は物語の進行と深く結びついています。

5つの要素を、3幕構成に配置します。これは映画やドラマでも使われる普遍的な物語の型です。
【コラム】あなたの物語を「英雄の旅」にする
実は、ここで解説した3幕構成は、神話学者のジョセフ・キャンベルが提唱した「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」という普遍的な物語の型に基づいています。
- 第1幕(日常と発見)は、英雄が「日常の世界」から「冒険への誘い」を受ける段階です。あなたの原体験こそが、この冒険の始まりです。
- 第2幕(決意と困難)は、英雄が「試練」に立ち向かい、「最も暗い洞窟」で最大の敵と対峙する段階。資金難や市場の無理解といった困難は、物語に深みを与える試練なのです。
- 第3幕(転機と未来)は、英雄が「宝」を手に入れ、「帰還」する段階。転機となる出来事は、あなたの成長の証であり、未来の顧客や仲間と分かち合うべき宝です。
このフレームワークを意識することで、あなたの個人的な体験が、誰もが共感できる普遍的な英雄譚へと昇華されます。
【3幕構成の配置】
- 第1幕:日常と発見(原体験+課題)
- あなたの日常(または前職)
- 原体験との出会い
- 「これは問題だ」という発見
- 第2幕:決意と困難(WHY+困難)
- 「何とかしなければ」という決意
- 起業・プロダクト開発の開始
- 直面した困難(資金/人材/市場の無理解)
- 諦めそうになった瞬間
- 第3幕:転機と未来(転機+現在地)
- 風向きが変わった出来事
- 現在の到達点
- これから目指す未来
この構成により、「なぜ始めたか」→「何が大変だったか」→「今どこに向かっているか」という時間軸のあるストーリーが完成します。
ストーリーテリングの理論的な背景や感情を動かす要素については「ストーリーテリング理論」で、文章表現のテクニックについては「読者の心を掴む!ブランドストーリーの書き方|19年経営のプロが教える7つの感情ライティング術」で詳しく解説しています。
Step 4:4バージョンを作る(30秒/3分/5分/詳細版)
素材が揃ったら、次は用途に応じて長さを調整した4つのバージョンを作成します。それぞれの目的と構成ポイントは以下の表の通りです。
| バージョン | 想定時間 | 主な利用シーン | 構成のポイント |
|---|---|---|---|
| 30秒版 | 30秒 | エレベーターピッチ、名刺交換後の雑談 | 「原体験→課題→WHY→事業内容」を凝縮。結論ファーストで興味を引く。 |
| 3分版 | 3分 | ピッチイベント、面接の冒頭 | 3幕構成(発見→困難→未来)を意識し、感情の起伏とビジョンを伝える。 |
| 5分版 | 5分 | 投資家との個別面談、メディア取材 | 困難を乗り越えた具体エピソードを複数盛り込み、人間性と実行力を示す。 |
| 詳細版 | 1,500字〜 | 採用ページ、About Us、プレスリリース | 5要素を網羅し、写真なども交えながらブランドの世界観を深く伝える。 |
用途に応じて、長さの異なるバージョンを用意します。
30秒版(エレベーターピッチ)
[テンプレート]
私は[原体験]を経験して、[課題]に気づきました。
だから、[WHY:実現したいこと]を目指して、
[事業内容]を始めました。
例:「私は前職で、労務担当者が毎月3日間も紙の手続きに追われている姿を見て、これは絶対に変えるべきだと思いました。だから、すべての労務手続きをクラウドで完結できる仕組みを作りたいと考え、SmartHRを創業しました」(約70字)
3分版(ピッチイベント)
- 第1幕:1分(原体験+課題の深掘り)
- 第2幕:1分(WHY+困難1-2個)
- 第3幕:1分(転機+現在地+ビジョン)
5分版(投資家個別面談)
- 第1幕:1.5分(原体験を五感で描写)
- 第2幕:2分(WHY深掘り+困難3-4個+どう乗り越えたか)
- 第3幕:1.5分(転機の詳細+市場機会+今後の計画)
詳細版(採用ページ/メディア取材)
- 各要素を段落単位で展開
- 具体的なエピソードを複数挿入
- 写真や動画も併用
- 1,500-2,000字程度
創業ストーリー作成に役立つテンプレートやフレームワークは、「白紙の恐怖」解消!ブランドストーリーの型(テンプレート)5選|30分で書けるプロのワークシートで提供しています。
Step 5:フィードバックを得て磨く
ストーリーを書いたら、必ず他者に聞いてもらいましょう。
- 「なぜあなたがやるのか」が伝わったか?
- 感情的に共感できたか?
- 記憶に残るシーンがあったか?
- 「応援したい」と思ったか?
創業ストーリーは、一度作ったら完成ではありません。事業の成長とともに、新しいエピソードが加わります。定期的にアップデートし、より説得力のあるストーリーに育てていきましょう。
【創業ストーリー強度診断チェックリスト】
自身の創業ストーリーがどれだけ響くかを自己診断してみましょう。以下の25項目に対し、「全く語れていない(0点)」〜「具体的に、感情を込めて語れている(4点)」の5段階で自己評価し、合計点でストーリーの強度(改善点)を可視化します。
要素1:原体験(Origin Story)
- その時の「情景」が目に浮かぶか?(五感)
- その瞬間の「感情」が伝わるか?(喜怒哀楽)
- なぜそれが「あなたにとって」重要だったのかが分かるか?(個人的な意味)
- 第三者が聞いても「なるほど」と納得できるか?(客観性)
- その経験が、後の「決意」にどう繋がったか明確か?(因果関係)
要素2:解決したい課題(Problem)
- 個人的な不満だけでなく、より大きな「社会的課題」と結びついているか?
- その課題を放置した場合の「哲学的・長期的な影響」まで語れているか?
- 課題の「規模」や「広がり」を裏付けるデータや示唆があるか?
- 課題解決への「強い使命感」が伝わるか?
- 誰が、なぜ、その課題を「放っておけない」のかが明確か?
要素3:WHYの発見(Purpose)
- あなたの「個人的な使命」が明確に言語化されているか?
- あなたの「社会的使命」が明確に言語化されているか?
- この事業を通じて「どんな世界を実現したいか」が具体的に描かれているか?
- 「なぜ私がやるのか」という「あなた固有の理由」が伝わるか?
- あなたの価値観や信念が、WHYと一貫しているか?
要素4:困難と挑戦(Struggle)
- 事業初期に直面した「具体的な困難」が語られているか?
- その困難に対して「どのように挑戦し、乗り越えようとしたか」が明確か?
- 困難を通じて「何を学び、どう成長したか」が示されているか?
- 弱さや迷いも含め、「人間らしさ」が感じられるか?
- 困難を「美化せず」、正直な姿勢が伝わるか?
要素5:転機と現在地(Transformation)
- 事業の「転機となった出来事」が具体的に語られているか?
- 転機が「どのように事業やあなた自身を変えたか」が明確か?
- 現在の「到達点や成果」が具体的に示されているか?
- これから目指す「未来のビジョン」が明確に描かれているか?
- 「まだ道半ばだが、確かな手応え」といった「進行形」のストーリーになっているか?
ブランドストーリーの効果測定については、「ブランドストーリー、効果不明のままでいい?予算承認率65%UP!35年のプロが教える数値化戦略」で、KPI設計と改善サイクルを解説しています。
第4章:場面別活用法
作成した創業ストーリーは、目的と相手に応じて使い分けることが重要です。まずは全体像として、どの場面でどのバージョンが有効か、以下のマップで確認しましょう。

創業ストーリーは、4つの主要な場面で力を発揮します。それぞれの場面での活用法を見ていきましょう。
4-1 投資家ピッチでの活用
投資家は「Why you, why now」を見極めようとしています。
- ピッチの最初の1-3分で創業ストーリーを語る
- その後、市場分析・事業モデル・財務計画へと展開
- 最後に「だからこそ、私たちが成功する」と創業ストーリーに回帰
では、投資家は具体的に創業者のどこを見ているのでしょうか。ある調査によれば、以下の5つの資質が特に重要視されています。あなたのストーリーがこれらの要素を伝えられているか、確認してみてください。
| 評価項目 | 重視するVCの割合(%) | 創業ストーリーでの訴求ポイント |
|---|---|---|
| 実行能力 (Ability) | 67% | 困難を乗り越えた具体的なエピソードで、問題解決能力と行動力を示す。 |
| 業界経験 (Industry Experience) | 60% | 原体験が業界の深い課題認識に基づいていることを語り、専門性を裏付ける。 |
| 情熱 (Passion) | 54% | 「なぜ自分がやるのか(WHY)」を力強く語り、事業への揺るぎないコミットメントを伝える。 |
| チームワーク (Teamwork) | 50% | 困難な時期にチームや支援者とどう乗り越えたかを語り、求心力や協調性を示す。 |
| 起業家経験 (Entrepreneurial Exp.) | 50% | 過去の挑戦や失敗から何を学んだかをストーリーに含め、成長性や再現性を示す。 |
つまり、「この創業者だからこそ、この事業を成功させられる」という確信を持たせることが重要です。
3分ピッチの構成例
- [0:00-1:00] 原体験+課題
「3年前、私は◯◯で働いていました。そこで△△という問題に直面し…」 - [1:00-2:00] WHY+市場機会
「この問題は、実は□□万人が抱えている社会課題です。
私はこれを解決することで、◇◇な世界を作りたいと決意しました」 - [2:00-3:00] ソリューション+転機
「そこで開発したのが、このプロダクトです。
すでに◎◎社が導入し、▽▽という成果が出ています」
注意点:
- データは必ず一次情報で裏付ける
- 市場規模の数字は控えめに(過大評価は逆効果)
- 「困難をどう乗り越えたか」で実行力を示す
ブランドストーリーの成功事例については「ブランドストーリー事例」で業界別に確認できます。
4-2 採用活動での活用
ミッション共感型の採用では、創業ストーリーが最強の武器になります。
採用ページでの展開
- トップページまたは「代表メッセージ」に詳細版(1,500-2,000字)を掲載
- 創業者の写真や動画を併用
- 「こんな人と働きたい」という求める人物像を明記
Axis株式会社の学生調査では、採用サイトの情報更新や企業ストーリーの有無が志望度に「やや影響する」と50.0%、「とても影響する」と38.05%の学生が回答しており、合計で約9割の学生が志望度に影響を受けると報告されています(参考:Axis株式会社|2025|就職活動における採用サイト利用動向調査 2025年版)。
面接での語り方
- 5分版を基本に、相手の反応を見ながら深掘り
- 「なぜうちに?」と聞かれたら、相手の経験と創業ストーリーを結びつける
- 「一緒にこの未来を作りませんか?」という共創の提案
内定者フォローでの活用
- 内定承諾の迷いを解消するために、改めてストーリーを語る
- 「あなたが加わることで、このストーリーがどう進むか」を一緒に想像する
社内でのストーリー共有については、「「日本最低5%」を変える!社内ストーリー共有で理念浸透とエンゲージメントを高める5施策」で詳しく解説しています。
4-3 PR・メディア露出での活用
メディアが求めているのは、製品情報ではなく人間ドラマです。
プレスリリースでの工夫
- 資金調達や新製品発表のプレスリリースに、創業ストーリーの要約(200-300字)を必ず入れる
- 「なぜこのサービスを作ったのか」というコメントを代表者名義で掲載
Forbesの事例紹介では、ピッチで重要なのは「なぜ今か(Timeliness)」を明確にすること、記者の判断を容易にするアセット(インタビューリンク・画像・プレスキット等)を添えること、記者に合わせた短いパーソナライズが有効であると報告されています(参考:Forbes|2025|How to Pitch a Founder Story That National Business Media Want)。
取材対応での展開
- 記者から「なぜこの事業を?」と聞かれたら、3分版を語る
- 困難のエピソードは具体的に(記者は「苦労話」が大好き)
- 転機の瞬間は、感情を込めて語る(記事の見出しになりやすい)
SNSでの発信
- 創業記念日に、創業ストーリーを投稿
- 節目(資金調達/契約数1万社突破など)のタイミングで、ストーリーを振り返る
- 「#創業ストーリー」「#起業の理由」などのハッシュタグで拡散
4-4 顧客獲得(営業・マーケティング)での活用
BtoBでもBtoCでも、「なぜこの会社から買うのか」という理由を提供します。
Webサイトでの展開
- 「About Us」ページに創業ストーリーを掲載
- トップページに「創業者からのメッセージ」動画を設置
- 事例ページで「お客様のストーリー」と「創業ストーリー」を結びつける
営業資料での活用
- 提案書の冒頭1-2ページに、創業ストーリーの要約を入れる
- 「私たちがこのソリューションを作った理由」というページを設ける
- 創業者の顔写真とコメントを掲載
統合コミュニケーション(IMC)の考え方では、すべての接点で一貫したストーリーを語ることが重要とされています。創業ストーリーは、そのコアメッセージとして機能します。Web、営業資料、展示会、SNS、すべてで同じストーリーを一貫して語ることで、ブランドの記憶が強化されます。
展示会・イベントでの活用
- ブースに創業ストーリーのパネルを展示
- 名刺交換後の雑談で、30秒版を自然に語る
- プレゼンの最後に「なぜ私たちがこれをやっているか」を締めとして語る
SNSでのブランドストーリー活用については、「ブランドストーリーはSNSでなぜ伸びない?5大プラットフォーム攻略と6つの秘策」で具体的な戦略を解説しています。
第5章:創業ストーリーの注意点
創業ストーリーを作る際、陥りやすい落とし穴があります。それを避ける方法を解説します。
5-1 よくある5つの失敗パターン
- 失敗1:美化しすぎる・嘘や誇張
「すべて計画通りでした」「一度も迷いませんでした」という完璧なストーリーは、嘘くさく聞こえます。失敗、迷い、後悔も含めて語ることで、かえって信頼性が高まります。「業界初」「世界一」といった断定的な表現も、裏付けがない限り使わないようにしましょう。 - 失敗2:市場調査から入る
「市場規模が◯兆円だったので起業しました」という話は、原体験がなく共感を生みません。データは補強材料として使い、起点は必ず個人的な経験にしましょう。 - 失敗3:専門用語だらけ
業界の専門用語を多用すると、一般の人には伝わりません。中学生でも理解できる平易な言葉で語りましょう。 - 失敗4:長すぎる
詳細版でも2,000字以内に収めるのが理想です。それ以上になると、聞き手が疲れます。相手の集中力を考慮し、場面に応じた長さに調整することが重要です。 - 失敗5:他人のストーリーを真似る
スティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような劇的なストーリーである必要はありません。あなた自身の、等身大のストーリーが最も説得力があります。
5-2 真実性を保つための原則
- 誇張しない
事実に基づいて語る。数字は正確に。曖昧な記憶は「確か◯◯だったと思います」と正直に伝える。 - 進行形を恐れない
「まだ道半ばです」「これから挑戦します」という現在進行形のストーリーでも構いません。むしろ、完成していないストーリーの方が、「一緒に未来を作ろう」という共創の余地があります。 - 失敗も語る
失敗談は、あなたの人間性を伝える最良の素材です。「この失敗から学んだこと」をセットで語れば、成長の物語になります。 - 定期的にアップデート
事業が成長するにつれて、新しいエピソードが加わります。半年に一度は創業ストーリーを見直し、最新の状況を反映させましょう。 - 他者の視点を取り入れる・倫理的配慮を忘れない
自分だけで作ったストーリーは、独りよがりになりがちです。共同創業者、メンター、顧客など、他者の視点を取り入れることで、より客観的で説得力のあるストーリーになります。また、原体験で他者が登場する場合、その人の許可を得るか、匿名化・抽象化して語りましょう。競合を批判するストーリーは避け、「既存のサービスではできなかった◯◯を実現したい」という前向きな表現にとどめることも大切です。特定の人種、性別、職業を揶揄するような表現は厳禁で、多様性を尊重したストーリーを心がけましょう。
まとめ
創業ストーリーは、投資家、顧客、社員、メディアに「なぜあなたがこの事業をやるのか」を伝える最も強力なツールです。
本記事で解説した5つの要素(原体験/課題/WHY/困難/転機)を使い、30問の質問リストで自分の原体験を掘り下げ、3幕構成で物語を組み立てることで、誰でも響く創業ストーリーを作ることができます。
今日からできる3つのアクション:
- 30問の質問リストに答える(所要時間:30分)
- 完璧な文章である必要はありません
- 箇条書きでメモを取るだけでOK
- 一人で難しければ、友人に質問してもらいましょう
- 5要素骨格シートを埋める(所要時間:30分)
- 質問リストの答えから、5つの要素を抽出
- まずは素材を並べるだけ
- 30秒版を作って、誰かに話してみる(所要時間:1時間)
- 信頼できる友人や共同創業者に聞いてもらう
- フィードバックをもらって改善
- これを繰り返すことで、どんどん磨かれていきます
創業ストーリーは、一度作ったら終わりではありません。事業の成長とともに進化し続ける、生きたドキュメントです。半年ごとに見直し、新しいエピソードを加えていきましょう。
ブランドストーリー全体の理論については「ブランドストーリーテリング完全ガイド」、作成の基本手順は「ブランドストーリーの作り方」、企業全体のストーリー作成は近日公開予定の「企業ストーリーの作り方(記事No.33)」で詳しく解説しています。
また、文章表現のテクニックは「読者の心を掴む!ブランドストーリーの書き方|19年経営のプロが教える7つの感情ライティング術」で、テンプレートやフレームワークは「白紙の恐怖」解消!ブランドストーリーの型(テンプレート)5選|30分で書けるプロのワークシートで提供しています。
効果測定については「ブランドストーリー、効果不明のままでいい?予算承認率65%UP!35年のプロが教える数値化戦略」で、KPI設計と改善サイクルを解説しています。
あなたの創業ストーリーが、誰かの心を動かし、共感の輪を広げていくことを願っています。
FAQ(よくある質問)
Q1:投資家向けと採用向けで、創業ストーリーの内容は変えるべきですか?
A:基本的な骨格(5要素)は同じで構いませんが、強調するポイントは変えましょう。投資家向けでは「市場機会」「実行力(困難をどう乗り越えたか)」を厚めに、採用向けでは「WHY(なぜやるのか)」「一緒に作る未来」を強調します。ただし、矛盾するストーリーを語ると信頼を失うので、あくまで「同じストーリーの異なる側面」を見せるイメージです。
投資家は「このチームが成功するか」を判断し、採用候補者は「この会社で働きたいか」を判断します。前者にはビジネス的な実現可能性を、後者には価値観の共有を重視して語りましょう。
Q2:失敗談はどこまで正直に話すべきですか?
A:「失敗から何を学んだか」をセットで語れるなら、正直に話して問題ありません。むしろ、失敗を隠さず語ることで信頼が高まります。ただし、「今も解決していない致命的な問題」や「共同創業者との深刻な対立」など、現在進行形のトラブルは慎重に扱いましょう。
投資家に対しては「過去の失敗とその対策」は好印象ですが、「現在のリスク」は別の場で誠実に説明する必要があります。採用候補者には「失敗も含めて一緒に乗り越えていこう」というメッセージが効果的です。
Q3:原体験が「ビジネスチャンスを見つけた」だけの場合はどうすればいいですか?
A:その場合は、「なぜそのチャンスに気づけたのか」を掘り下げましょう。業界経験、個人的な興味、偶然の出会いなど、必ず背景があるはずです。また、「ビジネスチャンスを追求する中で、どんな社会課題に気づいたか」を後付けで整理することも有効です。
正直に「最初は純粋にビジネスとして面白いと思いました。でも、やっていくうちに◯◯という社会的意義に気づき、それが今の原動力になっています」と語る方が、嘘くさくなくて良いこともあります。
