もう迷わない!ブランドストーリー3大フレームワーク診断|最適な選び方・使い方・組み合わせ

「ブランドストーリーを作りたいけど、どの型を使えばいいのか分からない」——これは、19年間WEBマーケティングに携わってきた私が、中小企業の経営者から最もよく受ける相談です。

検索すれば「StoryBrand」「Golden Circle」「Hero’s Journey」と、様々なフレームワークが出てきます。しかし、それぞれの違いや、自社に合う型の選び方まで明確に示している情報は限られています。LPには短く説得力のある構成が必要な一方、採用ページではWhyを軸にした共感が求められ、長編ムービーなら感動の旅が効果的です。つまり、正解のストーリーは1つではなく、目的によって”最適な型”が異なるのです。

当編集部では、世界的エンタメ企業で35年間ブランディングに携わった専門家の知見をもとに、ブランドストーリーテリングの体系的な研究を進めてきました。ストーリーテリングは顧客の記憶定着やブランドへの好意度向上に寄与することが複数の実務解説で示唆されています(参考:ImpactPlus「What is the StoryBrand Framework?」|2025|顧客視点でのメッセージ設計の重要性を解説)。その中で明らかになったのは、物語構造(主人公・葛藤・変容)は共通していても、用途によって”構造の強弱”を変える必要があるという点です。

本記事では、3大フレームワーク(StoryBrand・Golden Circle・Hero’s Journey)の特徴・適性・使いどころを徹底比較し、「選ぶ→当てはめる→試す」を最短にする実務ガイドを提供します。用途別の当てはめテンプレートと、組み合わせ事例も用意していますので、読み終える頃には当日中に叩き台を1本作れるはずです。

  • 第1章:フレームワークの意義と全体像
  • 第2章:StoryBrand(7ステップ)
  • 第3章:Golden Circle(Why→How→What)
  • 第4章:Hero’s Journey(英雄の旅)
  • 第5章:比較・選択ガイド・組み合わせ

理論の基礎については「ブランドストーリーテリング完全ガイド」、実務の作り方は「ブランドストーリーの作り方」で詳しく解説していますので、合わせてご参照ください。

注記: 本記事は一般に普及しているフレームワークの比較解説です。特定企業の見解ではなく、公開情報と編集部の分析に基づきます。

目次

第1章:ブランドストーリーフレームワークとは

【コラム】デジタル時代の「ストーリー」が新たな信頼資産になる

ニールセンの最新調査『Global Trust in Advertising』によると、消費者が最も信頼する情報源の上位には、依然として「知人からの推薦」と並び「ブランドのウェブサイト上の情報」がランクインしています。しかし、単なる製品スペックの羅列では信頼は生まれません。

このデータから専門家として言えるのは、ブランドサイトで語られる「ストーリー」こそが、デジタル時代の新たな「知人からの推薦」に匹敵する信頼資産になるということです。顧客は企業が語る物語を“自分ごと化”し、それを信頼の根拠とするのです。

1-1 フレームワークを使う3つのメリット

ブランドストーリーをゼロから考えるのは、白紙のキャンバスに絵を描くようなものです。どこから始めれば良いか分からず、結局「会社紹介の延長」のような内容になってしまうことも少なくありません。フレームワークを使うことで、以下の3つのメリットが得られます。

  • 効率化:ゼロから考えない
    フレームワークは、成功事例を分析して抽出された「型」です。どの要素を、どの順序で書けば効果的かが示されているため、迷わず進められます。実務経験から言えば、フレームワークを使うことで、初稿完成までの時間が半分以下になるケースが多いです。
  • 再現性:共通言語化でチーム合意
    「良いストーリー」の定義は、人によって異なります。しかし、フレームワークを使えば「StoryBrandの7ステップを満たしているか」という客観的な基準で議論できます。これにより、チーム内での合意形成がスムーズになり、修正の方向性も明確になります。
  • 最適化:A/Bテストで改善しやすい
    フレームワークは要素が明確に分かれているため、「どこを変えれば効果が上がるか」を検証しやすいのです。例えば、StoryBrandなら「CTAの表現を変える」「失敗シーンの強度を上げる」といった具体的な改善ポイントが見えてきます。

中小企業向け補足
少人数体制では、ブランディングに多くの時間を割けません。フレームワークは「短期で仕上げる」ための強力なツールとして機能します。19年間の実務で見てきた限り、フレームワークを使った企業は、使わなかった企業と比べて初稿完成までのスピードが2〜3倍速い傾向があります。

体系的プロセスとの接続
ブランディングにおいて、物語作成は「ターゲット設定→構築→検証」という一連のプロセスの中に位置づけられます。フレームワークを使うことで、このPDCAサイクルを回しやすくなり、継続的な改善が可能になります。

1-2 3大フレームワークの俯瞰

主要な3つのフレームワークは、それぞれ異なる焦点を持っています。まずは全体像を把握しましょう。

  • StoryBrand(7ステップ)
    • 焦点: 顧客をヒーロー、企業をガイドに位置づけ、明確な行動喚起へ導く
    • 長さ: 短〜中尺(LP、サービスページ向き)
    • 得意チャネル: ランディングページ、営業資料、製品紹介
    • CTAの出し方: 直接的(購入・問い合わせ)と遷移的(無料資料請求)を明確に区別
  • Golden Circle(Why→How→What)
    • 焦点: ブランドの「なぜ(理念)」から始めて共感を獲得
    • 長さ: 中尺(企業ページ、採用ページ向き)
    • 得意チャネル: 企業サイト「About」、採用ページ、IRピッチ
    • CTAの出し方: 暗示的(共感した人が自然に行動する設計)
  • Hero’s Journey(英雄の旅)
    • 焦点: 顧客の変容ストーリーを12(簡易8)ステージで描く
    • 長さ: 長尺(ムービー、連載記事向き)
    • 得意チャネル: ブランドムービー、特設LP、長文コンテンツ
    • CTAの出し方: 物語の自然な帰結として提示

これらのフレームワークは、いずれも物語の基本構造(主人公・葛藤・変容)を持っていますが、用途によって“どの要素を強調するか”が異なります

1-3 どれを選ぶべきか:判断軸

フレームワーク選びで重要なのは、「自社の用途」を明確にすることです。以下のチェックリストで、判断軸を整理しましょう。

判断軸チェックリスト

  • 業種: BtoB/BtoC/D2C/専門サービスのいずれか
  • ターゲット: 意思決定プロセスが短い(衝動買い型)か、長い(検討型)か
  • メッセージの長さ: 30秒で伝えたいか、5分かけて伝えたいか
  • 主要チャネル: LP/採用ページ/動画/SNS/営業資料のどれを重視するか
  • 社内リソース: 文章作成に割ける時間・人員はどの程度か

ターゲットの意思決定プロセスに合わせる
ブランディングの基本原則の一つに、「ターゲットを友達のように理解する」という考え方があります。友達なら、その人の意思決定プロセス(じっくり考えるタイプか、直感で動くタイプか)が分かるはずです。同様に、顧客の判断軸に合わせてフレームワークを選ぶことが重要です。
例えば、高額なBtoB商材であれば、意思決定に時間がかかります。この場合、Golden CircleでWhyをしっかり伝え、信頼を構築する方が適しています。一方、低価格のBtoC商材なら、StoryBrandで短く明確にCTAを示す方が効果的です。

フレームワークの全体像を把握したら、次は各フレームワークの詳細に進みます。また、理論的な背景については「ブランドストーリーテリング完全ガイド」、実際の作り方は「ブランドストーリーの作り方」で解説しています。

第2章:StoryBrand 7ステップ

2-1 StoryBrandの要点と適性

StoryBrandは、ドナルド・ミラー(Donald Miller)が提唱したフレームワークで、顧客をヒーロー、企業をガイドに位置づける点が特徴です。顧客の課題を明確にし、企業がその解決をサポートする構造により、短〜中尺のコンテンツで高いコンバージョンを狙えます。

概要
StoryBrandの7ステップは以下の通りです(参考: Creativeo.co「The StoryBrand Framework: A Complete Step-by-Step Guide」など複数の業界解説)

  • キャラクター(顧客の願望)
  • 課題(外的・内的・哲学的)
  • ガイド(共感+権威)
  • 計画(3ステップで不安除去)
  • 行動喚起(Direct CTA/Transitional CTA)
  • 失敗の回避(未行動の未来)
  • 成功(外的・内的・哲学的)

このフレームワークは、顧客の視点に立ちながらも、企業が「信頼できるガイド」として課題解決を支援する構造になっています。顧客が主人公であるため、「自分ごと化」しやすく、行動への誘導がスムーズです。

適性
StoryBrandが特に力を発揮するのは、以下のような場面です。

  • ランディングページ(LP): 短時間で顧客の課題を明確にし、解決策を提示してCTAに誘導
  • サービスLP: 複雑なサービスを分かりやすく説明し、問い合わせを増やす
  • 製品ページ: 製品の機能ではなく、顧客のビフォー・アフターを描く
  • 営業資料: 提案書の冒頭で顧客の課題を共有し、自社がガイドであることを示す

理論的背景
物語構造において、「ガイド=企業」「変容=顧客成功」という考え方は、多くのブランディング理論で共通しています。企業が主役ではなく、顧客の変化を支援する存在であるという視点は、現代のマーケティングにおいて非常に重要です。StoryBrandは、この考え方を7つのステップに落とし込んだ実践的なフレームワークと言えます。

2-2 7ステップ詳細(実務的に使える説明)

それぞれのステップを、実務で使える形で解説します。以下の表は、各ステップで何をすべきかをまとめたテンプレートです。

スクロールできます
ステップ定義書き方のポイント1行テンプレ例(BtoBツールの場合)
1. キャラクター顧客が「何を望んでいるか」を明確化「〇〇したい」という願望を1文で表現「中小企業の経営者は、限られた予算でブランド力を高めたいと考えています」
2. 課題顧客が直面する3層の問題(外的・内的・哲学的)目に見える問題と、それによって生じる感情をセットで描く「しかし、競合との差別化ができず、『このままでいいのか』と不安を感じています
3. ガイド企業を「共感」と「権威」を持つ案内役として提示「あなたの気持ちは分かる」+「私たちには実績がある」を両立「当社も同じ悩みを抱えていました。19年間、200社以上の中小企業を支援してきた実績があります」
4. 計画顧客の不安を取り除くためのシンプルな3ステップ顧客が取るべき次の行動を迷わせない、簡単な手順を示す(1)無料相談で現状分析 → (2)戦略提案 → (3)3ヶ月でブランド構築
5. 行動喚起直接的(Direct)と遷移的(Transitional)なCTAを提示「今すぐ」の行動と「まずは情報収集」の選択肢を用意する今すぐ無料相談を予約する、または事例集をダウンロードしてください」
6. 失敗の回避行動しなかった場合のネガティブな未来を描写恐怖を煽らず、冷静に論理的なリスクを伝える「このままでは、価格競争に巻き込まれる可能性があります」
7. 成功企業と関わった後のポジティブな未来を描写課題が解決された後の、外的・内的両方の成功を描く「結果として、売上向上に繋がり、自社ブランドに自信を持てるようになります」

出典:Creativeo.co「The StoryBrand Framework: A Complete Step-by-Step Guide」ImpactPlus「What is the StoryBrand Framework?」 (2025) を基に編集部作成

中小企業向け”陥りやすいミス”一覧

  • 商品が主人公化: 「当社の商品は素晴らしい」と企業目線になる(顧客を主人公にする)
  • CTAが弱い: 「お気軽にご相談ください」だけでは不十分(Direct+Transitionalの両方を提示)
  • 課題が浅い: 外的課題のみで内的・哲学的課題に触れていない(3層全てを描く)

ブランドの約束との整合
成功の描写は、ブランドが顧客に約束している「価値」の実現像です。機能的価値(売上)、情緒的価値(自信)、自己表現的価値(社会貢献)を、成功シーンに織り込むことで、ブランドステートメントとの一貫性が保たれます。

2-3 ミニ実例:BtoB業務改善ツール(LP想定)

以下は、7ステップを200〜250字で完成させた見本です。

【StoryBrand 7ステップ実例】

  • キャラクター: 中小企業の経営者は、社員の残業時間を削減したいと考えています。
  • 課題: しかし、既存ツールは複雑で導入に失敗し(外的)、「このままでは社員が疲弊する」と不安を感じています(内的)。
  • ガイド: 当社も同じ悩みを抱えていました。300社以上の導入実績があり、平均導入期間は1ヶ月です。
  • 計画: (1)無料トライアルで現場の声を聞く → (2)最小限の設定でスタート → (3)3ヶ月で効果を実感
  • 行動喚起: 今すぐ無料トライアルを開始する、または導入事例集をダウンロードしてください。
  • 失敗回避: このままでは、優秀な社員が離職し、採用コストがさらに増える可能性があります。
  • 成功: 残業時間が月平均20時間削減され、社員満足度が向上し、採用力の強化も期待できます

解説(なぜその表現か)

  • キャラクター: 「残業削減」という具体的な願望を明示
  • 課題: 「導入失敗」という外的課題と、「社員の疲弊」という内的課題を両立
  • ガイド: 「同じ悩み」で共感、「300社」で権威を示す
  • 計画: 「無料トライアル」で心理的ハードルを下げ、「3ヶ月」で期待値を設定
  • CTA: Direct(開始)とTransitional(ダウンロード)の両方を提示
  • 失敗: 「離職」「採用コスト」という具体的リスクで現実感を出す
  • 成功: 外的(20時間削減)+内的(満足度)+哲学的(採用力=社会貢献)を包含

次の一歩
StoryBrandの詳細なテンプレートや、業種別の事例については、近日公開予定の「ブランドストーリーテンプレート:すぐ使える5つの型(記事No.36)」で解説します。

第3章:Golden Circle(Why→How→What)

3-1 Golden Circleの要点と適性

Golden Circleは、サイモン・シネック(Simon Sinek)がTEDトーク「Start with Why」で提唱したフレームワークで、理念(Why)から始めることで共感を獲得する点が特徴です。

概要
Golden Circleは、中心から外側に向かって「Why(なぜ)→ How(どのように)→ What(何を)」の3層で構成されます。

  • Why: ブランドの目的・信念(なぜ存在するのか)
  • How: 実現方法(どのように差別化するのか)
  • What: 提供物(何を売るのか)

多くの企業は「What」から始めますが、Golden Circleでは「Why」を最初に伝えることで、顧客の共感と信頼を得やすくなります。

適性
Golden Circleが特に力を発揮するのは、以下のような場面です。

  • 企業サイト「About」: 企業理念や創業ストーリーを伝える
  • 採用ページ: 「なぜ当社で働くのか」という価値観を共有
  • IRピッチ: 投資家に対して長期的なビジョンを示す
  • 登壇資料: 経営者が理念を語る場面

ブランドステートメントとの接続
ブランドステートメントは、「約束(Promise)」と「原則(Principles)」の2層構造で構成されます。Golden CircleのWhyは、この「約束」に相当し、Howは「原則」に相当します。Whyと約束の整合性を保つことで、ブランドメッセージに一貫性が生まれます。

3-2 3層の作り方:Why/How/What

それぞれの層を、実務で使える形で解説します。

Why(なぜ)の見つけ方
Whyは、ブランドの存在理由です。以下の質問に答えることで、Whyを明確にできます。

  • 原体験: 創業者や経営者が「なぜこの事業を始めたのか」
  • 社会課題: 「どんな社会問題を解決したいのか」
  • 価値観: 「何を大切にしているのか」

Whyの1行条件

  • シンプル: 誰でも理解できる言葉で
  • 普遍: 一時的なトレンドではなく、長く続く信念
  • 利他: 自社の利益だけでなく、顧客や社会への貢献

例:「私たちは、中小企業が正当に評価される社会を作りたい」

How(どのように)の設計
Howは、Whyを実現するための方法です。以下の要素を含めます。

  • 技術: 独自の技術やノウハウ
  • 文化: 組織の価値観や行動規範
  • プロセス: 顧客体験を支える仕組み

例:「私たちは、実務経験を活かした現場目線のコンサルティングで、中小企業の成長を支援します」

What(何を)の明確化
Whatは、最後に提示します。Whyで共感を得た後に「何を売るか」を伝えることで、製品・サービスが単なる商品ではなく、理念を実現する手段として認識されます。
例:「具体的には、ブランディング戦略の立案から、WEBサイト制作、SNS運用までをワンストップで提供します」

BtoB製造・ローカルサービスの言い換え例
BtoB製造業では、「理念を現場行動に」翻訳することが重要です。

  • Before(抽象的): 「私たちは品質を大切にします」
  • After(具体的): 「私たちは、職人一人ひとりが誇りを持てる製品を作ります。そのために、全社員が品質基準を理解し、日々の改善を積み重ねています」

3-3 ミニ実例:環境配慮型アパレル(採用ページ想定)

以下は、Why/How/Whatを各2〜3行で提示した例です。

【Golden Circle 3層実例】

Why(なぜ):
私たちは、ファッションを通じて環境問題を解決したいと考えています。衣服の大量生産・大量廃棄は、地球環境に深刻な影響を与えています。だからこそ、「長く愛される服」を作ることで、持続可能な社会に貢献したいのです。

How(どのように):
私たちは、サステナブルな素材選びと、職人の手仕事による丁寧な製造プロセスを大切にしています。また、修理サービスを無期限で提供し、一着の服を10年、20年と使い続けられるようサポートします。

What(何を):
具体的には、オーガニックコットンやリサイクル素材を使ったアパレル製品と、修理・リメイクサービスを提供しています。

採用導線の置き方
採用ページでは、CTAを暗示的に示します。「このWhyに共感する方は、ぜひ一緒に働きましょう」という流れで、エントリーボタンを配置します。直接的なCTAではなく、「理念に共感した人が自然に応募したくなる」設計がポイントです。

次の一歩
企業理念をストーリー化する具体的な方法については、近日公開予定の「企業理念をストーリー化する方法(記事No.37)」で解説します。

第4章:Hero’s Journey(英雄の旅)

4-1 英雄の旅の要点と適性

Hero’s Journey(ヒーローズジャーニー)は、神話学者のジョセフ・キャンベルが見出した物語の共通構造を源流とし、ストーリーテリング実務で広く参照されている物語構造です。 主人公(顧客)の変容をドラマチックに描く点が特徴です。

概要
Hero’s Journeyは、神話や伝説に共通する物語のパターンを抽出したものです。マーケティングでは、顧客を「英雄」に見立て、製品・サービスが「メンター(導き手)」として顧客の変容を支援するストーリーを構築します。

適性
Hero’s Journeyが特に力を発揮するのは、以下のような場面です。

  • 長文記事: ブログや特集記事で、顧客の変化を丁寧に描く
  • ブランドムービー: 5〜7分の動画で感動的なストーリーを展開
  • 特設LP: 採用・周年・ドキュメンタリーなど、じっくり読ませるページ

顧客変容ストーリーの強み
Hero’s Journeyは、長編コンテンツにおいて感情移入と記憶定着の強みを発揮します。顧客が「自分もこのような変化を遂げたい」と感じることで、ブランドへの共感が深まります。

4-2 ステージ解説(簡易8ステージ)

  • 1. 日常世界:
    主人公(顧客)の現状を描く。「こんな悩みを抱えている」
  • 2. 召命(呼びかけ):
    変化のきっかけが訪れる。「ある日、〇〇という情報を知った」
  • 3. 拒絶:
    主人公は最初、変化を躊躇する。「でも、本当にうまくいくのか不安だった」
  • 4. メンター(導き手):
    企業・製品が登場し、主人公を励ます。「そんな時、〇〇に出会った」
  • 5. 第一関門:
    主人公が一歩踏み出す。「思い切って試してみることにした」
  • 6. 試練・仲間:
    困難に直面し、サポートを得ながら成長する。「最初は失敗したが、サポートのおかげで乗り越えた」
  • 7. 最大の試練:
    最も大きな障害を克服する。「ついに、〇〇という壁を突破した」
  • 8. 報酬・帰還:
    変容を遂げ、成功を手にする。「今では、〇〇という成果を得て、新しい自分になれた」

“過剰ドラマ化”の注意と倫理配慮
Hero’s Journeyは感情的なストーリーに向いていますが、誇張しすぎると「作り物感」が出ます。特に、医療・福祉・実在人物を扱う場合は、以下の点に配慮が必要です。

  • 肖像権・同意: 実在の顧客を登場させる場合は、必ず書面で同意を得る
  • プライバシー: 個人を特定できる情報は匿名化する
  • 表現の適切性: 病気や障害を「乗り越えるべき敵」として描かない

社会的正しさの観点
ブランディングにおいて、「社会的な正しさ」への配慮は不可欠です。特に、多様性や文化的感受性に関わる表現は、ステークホルダーの視点で事前にチェックすることが推奨されます。

4-3 ミニ実例:RIZAP風ダイエットプログラム(動画想定)

以下は、8ステージで200〜250字の絵コンテ構成にした例です。

【Hero’s Journey 8ステージ実例】

  • 1. 日常世界: 30代会社員の田中さんは、健康診断で「メタボ」と診断され、自信を失っていた。
  • 2. 召命: ある日、SNSで「3ヶ月で体が変わる」という広告を見かけた。
  • 3. 拒絶: 「過去に何度もダイエットに失敗している。また挫折するのでは」と不安だった。
  • 4. メンター: 無料カウンセリングで、トレーナーが「一緒に頑張りましょう」と励ましてくれた。
  • 5. 第一関門: 思い切ってプログラムに申し込み、トレーニングを開始した。
  • 6. 試練・仲間: 最初は筋肉痛で辛かったが、トレーナーの的確なアドバイスで乗り越えた。
  • 7. 最大の試練: 2ヶ月目、停滞期に入り挫折しそうになったが、仲間の励ましで継続できた。
  • 8. 報酬・帰還: 3ヶ月後、体重は12kg減。鏡を見て「新しい自分」を実感した。

短尺SNSへ再編集する場合の切り出し方
長編動画を短尺SNS(TikTok、Instagram Reels)に再編集する場合は、以下のように切り出します。

  • ビフォー・アフター型: ステージ1(日常世界)とステージ8(報酬)だけを15秒で見せる
  • メンター強調型: ステージ4(メンター)とステージ6(試練・仲間)をフィーチャー
  • 感情揺さぶり型: ステージ3(拒絶)→ ステージ7(最大の試練)→ ステージ8(報酬)の流れ

次の一歩
Hero’s Journeyの理論的背景や、他のストーリーテリング手法については「なぜ物語は人を動かす?脳科学×心理学で解明!ストーリーテリング理論でROIを44%高めるビジネス戦略」で詳しく解説しています。

第5章:3大フレームワークの比較と選び方

【コラム】ブランド・アーキタイプで「最適な型」を見つける

フレームワークを選ぶ際、自社のブランドがどのような”人格”を持っているかを理解すると、より最適な型が見つかります。
例えば、ブランド・アーキタイプ(ユング心理学に基づく12の原型)を活用してみましょう。自社ブランドが「賢者(Sage)」タイプであれば、知恵や真実の探求を重視するため、理念から語るGolden Circleが最適です。一方、「英雄(Hero)」タイプであれば、困難の克服や達成を物語るHero’s Journeyが顧客の心を最も強く揺さぶるでしょう。
このように、自社の“人格”と物語の“型”を接続することで、メッセージの一貫性と説得力は飛躍的に高まります。

5-1 比較表(焦点/長さ/適用チャネル/CTA/難易度 他)

3つのフレームワークを横並びで比較してみましょう。

スクロールできます
項目StoryBrandGolden CircleHero’s Journey
焦点顧客の課題解決ブランドの理念顧客の変容
長さ短〜中尺中尺長尺
適用チャネルLP、営業資料About、採用、IRムービー、特設LP
CTA直接的+遷移的暗示的自然な帰結
難易度★☆☆(初心者向き)★★☆(中級者向き)★★★(上級者向き)
制作時間目安2〜3時間4〜6時間8〜12時間
主要効果コンバージョン向上共感・信頼の獲得感情移入・記憶定着

出典:ImpactPlus「What is the StoryBrand Framework?」 (2025)ROI Online「StoryBrand Hero’s Journey (2025)」 ほか複数の業界解説記事を基に編集部作成

使い分けのコツ(脚注)

  • LPの一等地はStoryBrand: 滞在時間が短いため、7ステップで明確に導く
  • AboutページはGolden Circle: じっくり読む人が来るため、Whyをしっかり伝える
  • ムービーはHero’s Journey: 視覚と音声で感情を揺さぶりやすい

5-2 用途別”選択ガイド”

以下のフローチャートを参考に、自社に合うフレームワークを選びましょう。

  • Web・LP → StoryBrand
    ランディングページは、滞在時間が短く、明確なCTAが求められます。StoryBrandの7ステップは、顧客の課題を素早く共有し、解決策を提示して行動を促す構造になっているため、LPとの相性が抜群です。
  • 採用・ピッチ → Golden Circle
    採用やIRでは、「なぜこの会社で働くのか」「なぜこのビジョンに投資するのか」という理念の共有が重要です。Golden Circleは、Whyから始めることで共感を得やすく、長期的な関係構築に向いています。
  • ムービー → Hero’s Journey
    ブランドムービーは、視覚・聴覚・感情を総動員して物語を伝えられるため、Hero’s Journeyの12(簡易8)ステージを活かしやすいです。顧客の変容を丁寧に描くことで、視聴者の感情移入を促します。

中小企業・BtoBの現実解(スピード優先→StoryBrandから着手)
中小企業では、まずStoryBrandで短時間に叩き台を作り、効果検証してから他のフレームワークに展開するのが現実的です。StoryBrandは構造がシンプルで、チーム内の合意も得やすいため、初めてのブランドストーリー作成に最適です。

ターゲット=友達の視点で診断
ブランディングの基本原則の一つに、「ターゲットを友達のように理解する」という考え方があります。友達の価値観や行動パターンに合わせて、フレームワークを選ぶことが重要です。例えば、感情的な意思決定をする友達にはGolden Circle、論理的な友達にはStoryBrandが向いています。

5-3 自社に最適なブランドストーリーフレームワーク診断

以下の5つの質問に答えて、自社に最も適したフレームワークを見つけましょう。

  • 質問1: ブランドストーリーを作る主な目的は何ですか?
    a. 即時的な売上向上や問い合わせ獲得 (コンバージョン)
    b. 企業理念やビジョンの浸透、共感の獲得
    c. 顧客の深い感情移入や感動的な体験の提供
  • 質問2: 最も力を入れたい発信チャネルはどれですか?
    a. ランディングページ(LP)やWeb広告
    b. 採用サイト、企業紹介ページ、IR資料
    c. ブランドムービー、長編ドキュメンタリー、ブログ記事シリーズ
  • 質問3: 伝えたいメッセージの理想的な長さはどれくらいですか?
    a. 短尺(〜1分程度で要点を伝える)
    b. 中尺(〜3分程度でじっくり説明する)
    c. 長尺(5分以上かけて物語を展開する)
  • 質問4: ターゲット顧客の意思決定スタイルは?
    a. 論理的で、即座に解決策を求めるタイプ
    b. 価値観や理念に共感し、信頼を重視するタイプ
    c. 物語や体験を通じて感情的に動かされるタイプ
  • 質問5: CTA(行動喚起)の強さはどの程度にしたいですか?
    a. 直接的で明確な行動を促したい(例: 今すぐ購入、問い合わせ)
    b. 理念に共感した人が自然に行動するような間接的な誘導にしたい
    c. 物語の結末として、自然な流れで行動に繋げたい

診断結果

  • aの回答が最も多かった場合: StoryBrandが最適です
    短時間で顧客の課題に寄り添い、明確な解決策と行動を提示するのに非常に効果的です。特にLPや広告など、即効性が求められる場面で威力を発揮します。
  • bの回答が最も多かった場合: Golden Circleが最適です
    ブランドの核となる「Why(なぜ)」を深く伝えることで、顧客や従業員、投資家の共感を呼び起こし、長期的な信頼関係を築くのに適しています。採用や企業ブランディングに効果的です。
  • cの回答が最も多かった場合: Hero’s Journeyが最適です
    顧客が主人公となり、困難を乗り越えて変容するドラマチックな物語を描くことで、強い感情移入と記憶定着を促します。ブランドムービーや長編コンテンツでその真価を発揮します。
  • (同数の場合)
    もし複数の回答が同数になった場合は、それぞれのフレームワークの特性を理解した上で、最も優先したい目的やチャネルに合わせて柔軟に選択しましょう。あるいは、後述の「組み合わせパターン」を検討するのも良いでしょう。

5-4 組み合わせパターン

フレームワークは、単独で使うだけでなく、組み合わせることで効果を高められます。代表的な3つのパターンを紹介します。

  • パターン1:Hero’s Journey × Golden Circle(外側の旅×内側のWhy)
    • 構造: Hero’s Journeyで顧客の外的な変化を描き、その根底にGolden CircleのWhyを置く
    • 効果: 感動的なストーリーに、理念の深みが加わる
    • 適用例: ブランドムービーで、創業者のWhyと顧客の変容を同時に描く
  • パターン2:StoryBrand × Golden Circle(前半Why→後半Plan/CTA)
    • 構造: 前半でGolden CircleのWhyを示し、後半でStoryBrandのPlan→CTAに誘導
    • 効果: 共感と行動の両立
    • 適用例: 採用LPで、理念を共有した後に応募ステップを明示
  • パターン3:ページ別使い分け(Webトップ=SB、About=GC、動画=HJ)
    • 構造: 各ページの目的に合わせて、最適なフレームワークを配置
    • 効果: サイト全体で一貫性を保ちつつ、各ページの役割を最大化
    • 適用例:
      • トップページ: StoryBrandで短く訴求
      • Aboutページ: Golden Circleで理念を深掘り
      • ブランドムービー: Hero’s Journeyで感動を演出

次の一歩
組み合わせパターンの詳細や、実際の運用については、「ブランドストーリーテリング完全ガイド」および「ブランドストーリーの作り方」で解説しています。

【深掘りコラム】フレームワークの”罠”:型にはめることで失われる、ブランド本来の”声”とは?

フレームワークは、ストーリー作りの強力な羅針盤です。しかし、それに依存しすぎると、どのブランドも同じような「優等生」の物語になってしまう危険性を忘れてはなりません。StoryBrandの型にきれいに収めた結果、競合と瓜二つのLPになっていませんか?
本当の差別化は、フレームワークという「骨格」に、自社ならではの「血肉」を通わせることで生まれます。それは、創業者だけが知る苦悩、社員が大切にする独自の口癖、顧客との間に生まれた忘れられないエピソードかもしれません。型はあくまで思考の補助線。最終的に人の心を動かすのは、その型からはみ出すほどの、生々しいブランドの”声”なのです。

まとめ

要点整理

ブランドストーリーの3大フレームワーク(StoryBrand・Golden Circle・Hero’s Journey)には、優劣はありません。それぞれが異なる目的と場面で力を発揮する「適材適所」のツールです。

重要なポイント:

  • StoryBrand: 短時間でコンバージョンを狙うLP・営業資料向き。顧客の課題を明確にし、7ステップで行動に誘導。
  • Golden Circle: 理念で共感を得る採用・IRページ向き。Whyから始めることで、長期的な信頼を構築。
  • Hero’s Journey: 感動的な変容を描くムービー・長文コンテンツ向き。顧客の成長物語で感情移入を促す。

今日からの実践ステップ

フレームワークを理解しただけでは、成果は出ません。以下のステップで、今日から実践を始めましょう。

  1. 自社の主要用途を1つ選ぶ(LP/採用/動画)
    まずは「どこで使うか」を決めます。全部を一度に作ろうとせず、最も優先度の高い1つに絞ります。例えば、「まずは営業資料をStoryBrandで作る」といった具体的な決定をします。
  2. 本記事のテンプレに沿って30分で草案
    選んだフレームワークのテンプレート(第2章〜第4章参照)を使い、まずは完璧を目指さず、30分で草案を書き出します。7ステップなら1ステップ4分、Golden Circleなら1層10分、Hero’s Journeyなら1ステージ4分のペースです。
  3. 社内3名にフィードバック
    草案ができたら、社内の異なる立場の3名(例:経営層・現場・新人)に見せて、意見を集めます。「どこが分かりにくいか」「どこが響くか」を聞き、改善点を洗い出します。
  4. CTA・見出しをA/Bテスト
    実際に公開したら、CTAの文言や見出しを2パターン用意してA/Bテストします。例えば、StoryBrandのDirect CTAを「今すぐ申し込む」と「無料で試す」で比較し、どちらがコンバージョン率が高いかを検証します。
  5. 本記事の診断シートで思考を整理
    本記事で解説した「自社に最適なブランドストーリーフレームワーク診断」を使い、自社の状況を書き込みながら、最適なフレームワークを選定し、物語の骨子を作成してみてください。

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理論を深める:

実際に作る:

  • ブランドストーリーの作り方: 5ステップで響く物語を作る具体的な手順
  • ブランドストーリーテンプレート:すぐ使える5つの型(記事No.36): 業種別・目的別のテンプレート集(近日公開予定)

なぜあのブランドは物語で成功する?ストーリーマーケティング事例10選から学ぶ5つの法則【中小企業向け】のほか、ブランドストーリーはSNSでなぜ伸びない?5大プラットフォーム攻略と6つの秘策など、深掘り記事も公開しています。ぜひブックマークして、継続的にご参照ください。

FAQ(よくある質問)

Q1. 自社に当てはまるフレームが1つに絞れない場合は?

A: 無理に1つに絞る必要はありません。むしろ、用途別に使い分けることを推奨します。例えば、「営業資料はStoryBrand、採用ページはGolden Circle、周年記念ムービーはHero’s Journey」といった具合です。重要なのは、各フレームワークの強みを活かしつつ、ブランド全体で一貫性を保つことです。
具体的には、まず「コアメッセージ(ブランドの約束)」を1つ決めておき、各フレームワークでそのメッセージを異なる角度から展開します。これにより、チャネルごとに最適な構造を使いながらも、ブランドとしての統一感を維持できます。

Q2. LPで長文ヒーローズジャーニーはアリ?

A: 基本的には推奨しません。LPは滞在時間が短く、ユーザーは「課題解決の答え」を素早く知りたいと考えています。Hero’s Journeyの12ステージをLPで展開すると、読み手が離脱する可能性が高まります。
ただし、例外もあります。高額商品(BtoB SaaS、コンサルティング、不動産など)で、意思決定に時間がかかる場合は、特設LPとしてHero’s Journeyを使うことも有効です。この場合、ファーストビューではStoryBrandで要点を伝え、スクロール後にHero’s Journeyで深掘りするという「2段構え」が効果的です。

Q3. フレームを混ぜる時の注意点は?

A: フレームワークを組み合わせる際の最大の注意点は、「構造の混乱」です。例えば、StoryBrandの7ステップの途中で、いきなりGolden CircleのWhyを挿入すると、読み手は「今、どのステップにいるのか」が分からなくなります。
組み合わせる場合は、以下のルールを守ってください。

  • 1. 段階を明確に分ける: 「前半はGolden Circleで理念を語り、後半はStoryBrandで行動を促す」といった明確な区切りを設ける
  • 2. 主従を決める: どちらがメインフレームかを決め、もう一方は補助的に使う
  • 3. 移行を示す: 「ここからは具体的な解決方法をお伝えします」といった一文で、構造の切り替わりを明示する
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この記事を書いた人

当編集部は、世界的エンタメブランドでの実績を持つブランディング専門家の知見をもとに、実践的なブランドマネジメント情報を発信しています。

編集方針:
セサミストリート、ディズニー、ウルトラマンなど、数々の世界的ブランドを手がけた35年の業界経験から導き出された理論と実践ノウハウを、検索ユーザーの課題解決に役立つ形で体系化。最新のブランディング手法を分かりやすく解説します。

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