Appleが新製品を発表するたび、世界中から注目が集まります。それは単なる「新しいガジェット」ではなく、「Appleが紡ぐ物語の新しい章」として受け止められるからです。
19年間WEBマーケティングに携わってきて感じるのは、長く愛されるブランドほど「完結しない物語」を持っているということ。一度作ったブランドストーリーをブランドブックに収めて満足する企業と、日々の発信やお客様の声を通じて物語を育て続ける企業。この違いが、5年後、10年後の差となって現れるんです。
実際、インタラクティブコンテンツ(顧客参加型コンテンツ)は、静的コンテンツに比べてエンゲージメント率が52.6%高いという報告もあります(参考:Switch|2024|インタラクティブコンテンツは静的コンテンツより52.6%高いエンゲージメント)。つまり、「企業が一方的に語る」だけではなく、「顧客と共に物語を作る」アプローチが、数字としても成果を生み出していることを示唆しています。
この「参加」の重要性は、社会心理学の理論からも説明できます。エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「自己決定理論」では、人間のやる気を引き出すには「自律性」「有能感」「関係性」の3つの心理的欲求が重要だとされています。優れたブランドナラティブへの参加は、顧客が「自らの意思でブランドに関わる(自律性)」体験であり、「自分の声が影響を与える(有能感)」感覚、そして「同じ価値観を持つ仲間と繋がる(関係性)」欲求を満たします。優れたブランドナラティブとは、顧客の根源的な心理的欲求を満たす「場」を設計することに他ならないのです。
けれど、いざ「ブランドナラティブ」というキーワードにたどり着いた方の多くは、こんなモヤモヤを抱えているのではないでしょうか。「ブランドストーリーと何が違うの?」「海外マーケティングの流行語?」「うちの規模でも関係ある話?」
当編集部では、世界的エンタメ企業で35年間にわたりキャラクタービジネスとブランドマネジメントの最前線で活躍してきた専門家の知見をもとに、ブランドナラティブの本質と実践方法を体系化しました。本記事では、ブランドナラティブの定義からブランドストーリーとの違い、ナラティブならではの5つの特徴、そして中小企業でも実践できる「ナラティブ構築5ステップ」まで、実務に落とし込める形でお届けします。
記事の後半では、世界的ブランドの事例分析と、既存のブランドストーリーとの”役割分担”まで解説。読み終える頃には、自社のブランドナラティブを一言で言語化し、チームに共有できる状態を目指せます。
まずは「ブランドナラティブとは何か」から見ていきましょう。基礎から体系的に学びたい方は「ブランドストーリーテリング完全ガイド」もご参照ください。
第1章:ブランドナラティブとは
1-1. ブランドナラティブの定義と概念
ブランドナラティブとは、企業と顧客が時間をかけて共に紡ぎ、更新し続ける”語りの連なり”です。ブランディングの理論では、ブランドの核となる価値や世界観を長期的に伝える枠組みとして位置づけられており、単発のストーリーではなく「継続的に意味づけを行う」という特徴を持ちます(参考:University of Western Australia|2023|ブランドナラティブがストーリーを通じて価値を伝える枠組みであること)。
少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、実務的には「ブランドが語り続ける物語」と捉えるとわかりやすいでしょう。
たとえば、地域のパン屋さんを思い浮かべてください。毎朝SNSで「今日の焼き上がり」を発信し、お客様が「このクロワザン最高でした!」と投稿し、季節ごとのイベントで常連さんと顔を合わせる。こうした一つひとつの出来事が積み重なって、「あの店は地域に愛されている」という物語が形成されていく—これがブランドナラティブの本質です。
「narrative(ナラティブ)」の語源と意味
「narrative」という言葉は、ラテン語の「narrare(語る)」を語源としています。マーケティング文脈では、「story(ストーリー)」と対比されることが多く、次のようなニュアンスの違いがあります:
- story: 完結した物語。beginning(始まり)、middle(中盤)、end(結末)を持つ、作品としてのストーリー
- narrative: 語りのプロセス。誰がどのように語るか、という視点を含む。完結せず、継続的に更新される
実務家向けの解説では、ナラティブは「複数のストーリーを繋ぐオーバーアーチング(包括的)なメッセージ」「ongoing(進行中)」「open-ended(開かれた結末)」といった言葉で説明されています(参考:Benjamin Ball Blog|2024|ストーリーは具体的事象、ナラティブは複数ストーリーを結ぶ長期的視点)。
ナラティブを捉えるフレーム
ブランドナラティブを理解するには、以下の3つの軸で捉えると整理しやすくなります:
- ①時間軸: 短期のキャンペーンから中長期のブランドの歩みまで
- ②語り手: 企業、従業員、顧客、パートナー—誰が語るか
- ③参加度: 企業だけが一方的に語るのか、顧客も共創者として語るのか
この3軸で見ると、ブランドナラティブは「時間をかけて(①)、多様な語り手によって(②)、参加型で(③)進化し続ける物語」として定義できます。中小企業でも、この枠組みを意識することで、日々の発信が「バラバラの投稿」ではなく「一貫した物語の一部」として機能するようになります。

1-2. ブランドストーリーとの違い(比較表)
「ブランドナラティブ」と「ブランドストーリー」—この2つは似て非なるものです。混同されやすいですが、実務では明確に使い分ける必要があります。
混同されがちな両者の違いを、5つの軸で比較整理したのが以下の表です。時間軸や顧客の役割に注目してください。
| 項目 | ブランドストーリー | ブランドナラティブ |
|---|---|---|
| 時間軸 | 完結型(過去起点) | 継続型(現在進行形) |
| 語り手 | 企業中心(公式) | 企業 + 顧客(共創) |
| 変化 | 固定・不変 | 更新・進化 |
| 顧客の役割 | 聞き手・受け手 | 参加者・共創者 |
| 例 | 創業物語、開発秘話 | SNSキャンペーン、コミュニティの会話 |
わかりやすい比喩で言えば、ブランドストーリーは「建物の設計図」、ブランドナラティブは「その建物で日々営まれる暮らし」です。
ブランドブックに載るのがストーリー—「なぜこの会社を立ち上げたのか」「どんな想いで商品を作っているのか」といった核となる物語。これは基本的に固定され、ブランドの「公式の筋書き」として機能します。
一方、日々の発信や会話の積み重ねがナラティブ。SNSでの投稿、お客様の口コミ、イベントでの交流、従業員のエピソード—こうした「リアルな語り」が集まって、ブランドに血肉を与えていきます。
既存のブランドストーリーがあっても、「ナラティブ設計」が別途必要な理由がここにあります。ストーリーは核ですが、それだけでは「語り続ける状態」は生まれません。核(ストーリー)とその周りを回り続ける語り(ナラティブ)の両輪があって、初めてブランドが生き生きと動き出すのです(参考:Staffbase Blog|2025|ナラティブは戦略的資産でopen-ended/evolving/inclusiveな性質を持つ)。
1-3. なぜナラティブが重要なのか(SNS時代の背景)
なぜ今、ブランドナラティブが重要なのでしょうか。その背景には、SNS時代の顧客行動の変化があります。
SNS時代の顧客行動の変化
ひと昔前まで、ブランドの物語は企業が一方的に発信するものでした。テレビCM、新聞広告、ブランドブック—企業が作った「公式ストーリー」を、顧客は受け取る側として消費していました。
しかし今、顧客自身がブランドについて語り、写真を投稿し、レビューを書き、SNSでシェアする時代です。しかも、友人やインフルエンサーの語りの方が、企業の公式メッセージよりも影響力を持つことが珍しくありません。
19年の実務経験から実感するのは、「企業が作った美しいストーリー」よりも「実際に使った人の生の声」の方が、購買の最後の一押しになるケースが圧倒的に多いということです。だからこそ、顧客の語りを「バラバラな声」ではなく「一貫した物語の一部」として位置づけるナラティブ設計が必要になります。
UGC(User Generated Content)の重要性
UGC—つまり顧客が生成したコンテンツは、今やマーケティングの要です。顧客の投稿、レビュー、SNSでのシェア、こうしたものすべてが「第三者視点の物語」として機能します。
興味深いのは、UGCを活用するブランドは、そうでないブランドに比べて平均28%高いエンゲージメント率を得ているという報告があることです(参考:Keywordseverywhere|2024|UGC活用ブランドの28%高エンゲージメント率)。さらに、Instagram投稿においては、UGCを含む投稿が非含有投稿より70%多いエンゲージメントを得ているとの調査結果もあります(参考:Keywordseverywhere|2024|Instagram UGC投稿の70%高エンゲージメント)。
ナラティブを設計することで、こうしたUGCが「バラバラな投稿」ではなく「ブランドが紡ぐ大きな物語の一部」として統合されていきます。顧客一人ひとりの語りが、ブランドナラティブの「1ページ」になるイメージです。
ストーリーは作るもの、ナラティブは育てるもの
本章をまとめると、こう言えます。「ストーリーは作るもの、ナラティブは育てるもの」。
ブランドストーリーは、創業時や転機のタイミングで「作る」ものです。一方、ブランドナラティブは、日々の発信、顧客の声、社会との対話を通じて「育てる」もの。種を蒔き、水をやり、陽の光を当てながら、少しずつ成長させていく—そんなイメージです。
次の章では、ブランドナラティブならではの「5つの特徴」を深掘りしていきます。より体系的にストーリーブランディングを学びたい方は「ストーリーブランディングとは?」もあわせてご覧ください。
第2章:ブランドナラティブの5つの特徴
ブランドナラティブが単なるブランドストーリーと何が違うのか—それを具体的に理解するには、ナラティブならではの「5つの特徴」を押さえる必要があります。
この章では、世界的ブランドと中小企業の両方の例を交えながら、それぞれの特徴を実務に落とし込める形で解説します。
2-1. 特徴1:継続性(時間軸で進化し続ける物語)
ブランドナラティブの第一の特徴は「継続性」です。単発のキャンペーンで終わらず、シリーズもののように続いていく—これがナラティブの時間軸です。
テレビドラマに例えるとわかりやすいでしょう。ブランドストーリーが「2時間の映画」だとすれば、ブランドナラティブは「連続ドラマ」です。毎週新しいエピソードが加わり、キャラクターが成長し、物語が少しずつ進んでいく。
実務的には、季節ごと、プロジェクトごとに物語が1話ずつ増えていくイメージで設計します。春には桜をテーマにした投稿、夏には地域のお祭りへの参加、秋には新商品の開発秘話—こうした「章立て」を意識することで、バラバラだった発信が「長期的な物語」として統合されていきます。
ブランディングの基本理論では、長期的に積み上がる物語が顧客との感情的なつながりを深めるとされています。これは、時間をかけて形成される信頼と共感が、短期的なプロモーションでは得られない「ブランドの資産」になるという考え方です。
19年の経験から言えるのは、継続性を保つには「無理のない頻度」と「テーマの一貫性」が鍵だということ。毎日投稿しようとして3日で息切れするよりも、週1回でも1年間続けた方が、ナラティブとしての厚みが出ます。
2-2. 特徴2:多声性(多様な語り手が存在する)
第二の特徴は「多声性」—つまり、企業公式だけでなく、多様な語り手が存在する状態です。
従来のブランドコミュニケーションでは、企業が「ブランドの声」を統制していました。しかし、ブランドナラティブでは、従業員の投稿、顧客のレビュー、パートナー企業の紹介—こうした「多様な声」がブランドの物語を豊かにしていきます。
実務的に重要なのは、多声性が「信頼と共感」にどう効くかです。企業が自分で「当社は信頼できます」と言うよりも、従業員が「この会社で働けて誇りに思います」と語り、顧客が「このブランドに救われました」と投稿する方が、はるかに説得力があります。
ただし、多声性には「ガイドライン」が必要です。完全に野放しにすると、ブランドの一貫性が失われるリスクがあります。実務では、「語ってほしいテーマ」「NGワード」「トーン&マナー」を簡潔に示したガイドを用意し、その範囲内で自由に語ってもらう形が効果的です。
2-3. 特徴3:文脈性(生活文脈・社会文脈との接続)
第三の特徴は「文脈性」—ブランドナラティブが、消費者の日常や社会課題と結びついていることです。
ブランドナラティブは、真空の中で語られるものではありません。消費者の日常生活、その時代の社会課題、地域のコミュニティ—こうした「文脈」と結びついて初めて、意味を持ちます。
たとえば、Patagoniaは環境保護という社会課題とブランドナラティブを深く接続しています。製品の長期使用を推奨し、リペアサービスを提供し、環境保護団体を支援する—こうした一連の活動が「地球を守るためのビジネス」という一貫したナラティブを形成しています(参考:Patagonia公式サイト|2025|環境保護をブランド中核に据えた企業活動)。
中小企業でも、この文脈性は活かせます。地域密着の企業なら「地域の祭りを支える」「地元食材を使う」といった文脈。IT企業なら「働き方改革を支援する」「デジタル格差を解消する」といった文脈。自社の事業が「誰の、どんな生活文脈に接続しているか」を明確にすることで、ナラティブに深みが生まれます。
2-4. 特徴4:多層性(企業・プロダクト・コミュニティの層がある)
第四の特徴は「多層性」—ブランドナラティブには複数の「層」があるということです。
ブランドナラティブは、単一の物語ではなく、以下のような層構造を持ちます:
- ①企業全体のナラティブ: 会社としての存在意義や価値観を語る物語
- ②プロダクトごとのナラティブ: 個別商品・サービスの物語
- ③コミュニティ単位のナラティブ: 顧客グループやファンコミュニティの物語

たとえば、Appleで言えば:
- 企業全体: 「創造性を解き放つ」
- iPhone: 「ポケットの中のコンピュータ」
- コミュニティ: 「Appleユーザーという仲間意識」
各層が独立しているわけではなく、核となる企業ナラティブに沿いながら、それぞれが固有の物語を持つ—この多層構造が、ブランドに豊かさをもたらします。
ブランド体験全体の設計では、タッチポイントごとに異なる物語を伝えながらも、全体として一貫性を保つことが重要とされています。この考え方をナラティブの層構造に応用することで、複雑なブランドでも統一感を失わずに多様な語りを展開できます。
2-5. 特徴5:参加性(顧客が物語の登場人物になる)
第五の特徴は「参加性」—顧客が受け身の「聞き手」ではなく、能動的な「登場人物」になることです。
参加性を実現する手段は様々です:
- UGC: お客様の投稿写真、レビュー、体験談
- イベント参加: ワークショップ、コミュニティミーティング
- 投票・意見募集: 新商品開発への投票、アイデア募集
- 二次創作: ファンアート、派生コンテンツの奨励
重要なのは「参加しやすいナラティブ」と「参加しづらいナラティブ」の違いを理解することです。
参加しやすいナラティブの条件
- 投稿のハードルが低い(「#タグをつけて投稿するだけ」など)
- 承認欲求が満たされる(「シェアされるかも」という期待)
- 仲間感がある(「同じ価値観を持つ人たちの輪」に入れる感覚)
実務では、「最初の一歩」をできるだけ小さく設計することがポイントです。いきなり「商品レビューを500字書いてください」は高いハードル。「商品の写真に#ハッシュタグをつけて投稿」から始め、徐々に深い参加を促す設計が効果的です。
この5つの特徴を意識するだけで、日々の発信が「その場限りの投稿」から「積み上がる物語」へと変わっていきます。
| 特徴 | 中小企業での実践アイデア例 |
|---|---|
| 継続性 | 週1回のテーマ投稿(例:「今週の舞台裏」)、月1回のコラム連載 |
| 多声性 | お客様の声コーナーの設置、従業員インタビューの公開 |
| 文脈性 | 地域の清掃活動への参加報告、業界の課題に対する考察を発信 |
| 多層性 | 企業理念(note)+ 商品ごとの開発秘話(ブログ)+ 顧客との座談会(イベント) |
| 参加性 | SNSでのハッシュタグキャンペーン(例:「#〇〇のある暮らし」)、新商品のネーミングアンケート |
次の章では、これらを実務に落とし込む「構築5ステップ」を解説します。
SNSでの具体的な展開方法は「ブランドストーリーはSNSでなぜ伸びない?5大プラットフォーム攻略と6つの秘策」で、より多くの事例は「なぜあの会社は売れる?ブランドストーリー事例15選【5要素フレームで成果に落とし込む4ステップ】」で解説しています。
第3章:ブランドナラティブの構築5ステップ
「結局、どうやってナラティブを設計すればいいのか?」—この疑問に答えるのが本章です。
【コラム】ヒーローズ・ジャーニーで読み解くブランドナラティブ
ナラティブを設計する上で強力な思考ツールとなるのが、物語論の古典的フレームワーク「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」です。神話学者のジョセフ・キャンベルが提唱した、物語の普遍的な構造で、「日常の世界」から「冒険への誘い」があり、「試練」を乗り越え、「宝」を手にして「帰還」するという12のステージで構成されます。これをブランドナラティブに応用すると、顧客が「ヒーロー(主人公)」となり、ブランドが「メンター(導き手)」の役割を果たします。日常の世界: 顧客が課題を抱えている状態冒険への誘い: ブランドとの出会い試練: 商品・サービスを通じて課題を克服するプロセス宝と帰還: 課題が解決され、理想の自分(新しい日常)に到達する
このフレームワークで自社のナラティブを設計することで、顧客が感情移入しやすい、より強力な物語を構築できます。
本章で解説する5つのステップは、一度きりの作業ではありません。以下の図のように、継続的に改善を繰り返すサイクルとして捉えることが成功の鍵です。

ここでは、ブランドナラティブを実務レベルまで落とし込む「5ステップ」を提示します。それぞれのステップで、中小企業でも使えるワークシート形式のツールも紹介しますので、読みながら手を動かしてみてください。
Step1:コアナラティブを定義する
まず最初に取り組むべきは、「コアナラティブ」の定義です。これは、ブランドナラティブの「核」となる語りです。
コアナラティブとは、「なぜこのブランドが存在し、どんな未来を目指しているか」という長期の語りです。これは、単なるミッションステートメントよりも物語性があり、かつ短期のキャンペーンよりも包括的なメッセージです。
ブランディングの理論では、企業の存在理由(Why)やビジョンを明確にすることが、長期的な顧客との感情的つながりを築く起点になるとされています。このWhyとビジョンをナラティブの核として設定することで、すべての発信や活動が「一本の線」で繋がります。
1〜2文で書けるコアナラティブのテンプレート
「◯◯という課題を抱える人が、△△できる世界をつくるために、私たちは□□を提供し続けている」
例:
「忙しくて健康管理ができない人が、手軽に栄養バランスを整えられる世界をつくるために、私たちは1日に必要な栄養素を詰め込んだスムージーを提供し続けている」
「子どもたちが創造性を失わない世界をつくるために、私たちは遊びを通じた学びの場を提供し続けている」
コアナラティブは、長々と書く必要はありません。むしろ、シンプルな1〜2文に凝縮することで、社内外に伝わりやすくなります。
既にミッションやビジョンがある企業は、そこからコアナラティブを抽出できます。
- 自社のミッション・ビジョン・タグラインを書き出す
- その中から「誰のために」「どんな未来を目指すか」「何を提供するか」の3要素を抜き出す
- 上記テンプレートに当てはめて1〜2文にまとめる
このワークを通じて、コアナラティブの第一稿ができあがります。完璧でなくても構いません。重要なのは「書き出すこと」です。
Step2:サブナラティブ(複数の物語の線)を洗い出す
コアナラティブが定まったら、次は「サブナラティブ」の洗い出しです。
ブランドには、コアナラティブを中心に、複数の「物語の線」があります:
- 企業全体の物語: 創業の経緯、成長の軌跡
- プロダクトの物語: 各商品の開発秘話、こだわり
- 採用の物語: どんな人と働きたいか、職場の雰囲気
- 地域貢献の物語: 地域とどう関わっているか
- 顧客との物語: 印象的なお客様エピソード
これらをまず棚卸しすることで、「今、どんな物語の線があるか」「どこが弱いか」が見えてきます。
洗い出したサブナラティブが、コアナラティブと矛盾していないかをチェックします。
チェックリスト:
- このサブナラティブは、コアナラティブと方向性が合っているか?
- 価値観が一致しているか?
- ブランドの「らしさ」が表れているか?
もし矛盾している物語があれば、修正するか、優先度を下げる判断をします。ナラティブの一貫性は、長期的な信頼構築の要です。
Step3:顧客参加の仕組みを設計する
ナラティブの「参加性」を実現するため、顧客が関わる仕組みを設計します。
顧客参加の施策例:
- SNSハッシュタグキャンペーン: 「#〇〇のある暮らし」など、投稿を促すタグ
- 投稿コンテスト: フォトコンテスト、エピソード募集
- コミュニティイベント: ワークショップ、オフ会、工場見学
- レビュー促進: 購入後フォローメールでレビュー投稿を促す
- アンケート・投票: 新商品の色やネーミングをファン投票で決める
重要なのは、一度に全部やろうとしないこと。まずは1つ、最もハードルの低い施策から始めます。
参加のハードルを下げるには、以下の3軸で設計します:
- ①投稿しやすさ:
- 写真1枚+ハッシュタグだけでOK
- 長文レビューは求めない
- ②承認欲求:
- 公式アカウントがリポストする
- 「今月のベスト投稿」として紹介
- ③仲間感:
- 「同じ価値観を持つ仲間」というコミュニティ感
- 他の投稿者とのつながりが見える設計
この3軸が揃うと、顧客は「参加したい」と自然に思うようになります。
【思考ツール】UGCナラティブ化シート
顧客から寄せられた投稿やレビュー(UGC)を、ブランドナラティブの一部として再編集するためのシートです。以下の4つの視点で整理してみましょう。
Before(利用前の課題): このお客様は、どんな課題や悩みを抱えていましたか?[UGCから引用・要約]
Encounter(ブランドとの出会い): どのようにして、私たちの商品/サービスに出会いましたか?[UGCから引用・要約]
Turning Point(変化の瞬間): 何がきっかけで、状況が好転しましたか?(商品のどの機能、サービスのどの体験が効いたか)[UGCから引用・要約]
After(理想の未来): 利用後、お客様の日常や気持ちはどう変わりましたか?[UGCから引用・要約]
* ナラティブ化: 上記1〜4を繋ぎ合わせ、「〇〇に悩んでいたお客様が、当店と出会い、△△を体験したことで、□□な毎日を送れるようになりました」というミニストーリーを作成します。
Step4:タッチポイントとメディアでナラティブを展開する
ナラティブは、複数のタッチポイント(接点)で一貫して語られることで、初めて効果を発揮します。
ブランド体験全体の設計では、顧客が接するすべてのタッチポイントで一貫した物語を伝えることが、ブランドの信頼性を高めるとされています。
| タッチポイント | 語るべきナラティブ要素 |
|---|---|
| Webサイト(企業サイト/ブログ) | コアナラティブ、創業物語、ブランドの約束 |
| SNS(Instagram, Xなど) | 日常の一コマ、顧客の声の紹介(UGC)、中の人の声 |
| リアル店舗/イベント | ブランドの世界観体験、従業員との対話、コミュニティの物語 |
| メールマガジン/LINE | 舞台裏、開発秘話、会員限定の深い情報 |
| 商品パッケージ/同梱物 | 作り手のこだわり、ブランドからのメッセージ |
それぞれのタッチポイントで「全く同じ話」をする必要はありません。むしろ、そのタッチポイントの特性に合った「ナラティブの側面」を語ることで、多層的な理解が深まります。
Step5:運用・更新プロセスを設計する
ナラティブは「作って終わり」ではありません。継続的に運用し、更新し続けることで、初めて生きた物語になります。
実務では、定期的な「ナラティブ振り返りミーティング」を設定することを推奨します。
振り返りの観点:
- どんなUGCが生まれたか?
- どんな物語の線が強くなっているか/弱くなっているか?
- コアナラティブとの整合性は保たれているか?
- 新たに語るべきテーマはないか?
頻度は、小規模チームなら月1回、大規模チームなら四半期ごとが目安です。
ナラティブの効果を測る指標例:
- エンゲージメント率: SNS投稿へのいいね、コメント、シェア
- UGC数: 顧客による投稿数、ハッシュタグの使用回数
- コミュニティ参加者数: イベント参加、会員数
- NPS(Net Promoter Score): ブランド推奨度
これらの詳細な測定方法については、「ストーリーブランディングROI:投資対効果を最大化する方法(記事No.46)」で解説しています。
【ダウンロード:ナラティブ設計ワークシート】
本章で紹介した5ステップを実践するための「ナラティブ設計ワークシート」をご用意しました。コアナラティブの定義から、サブナラティブの洗い出し、顧客参加の設計まで、順を追って記入できる形式になっています。ぜひダウンロードしてご活用ください。
次の章では、世界的ブランドと中小企業の事例を通じて、ナラティブがどのように機能するかを具体的に見ていきます。
詳しい作り方を学びたい方は「ブランドストーリーの作り方」を、具体的な書き方のテクニックは読者の心を掴む!ブランドストーリーの書き方|19年経営のプロが教える7つの感情ライティング術で解説しています。
第4章:ブランドナラティブの活用事例
「ナラティブの概念はわかった。でも、実際にどう動いているの?」—そんな疑問に答えるのが本章です。
ここでは、世界的ブランドから中小企業風の事例まで、ナラティブがどのように機能しているかを具体的に見ていきます。「こういう形なら実装できそう」と思えるヒントを見つけてください。
(※本章で紹介する事例は、一般に公開されている情報に基づいた分析であり、特定の企業との提携関係を示すものではありません。)
4-1. Airbnb「Belong Anywhere」:多声性と参加性のナラティブ
Airbnbのブランドナラティブは、「Belong Anywhere(どこにいても”居場所”を感じられる)」というコアメッセージを中心に展開されています(参考:HNK Media|2025|Airbnb「Belong Anywhere」ナラティブの構造)。
コアナラティブと多声的な展開
Airbnbの物語は、企業が一方的に語るものではありません:
- ホストの物語: 「なぜ自宅を貸し出すのか」「ゲストとの交流で得たもの」
- ゲストの物語: 「現地の暮らしを体験できた」「まるで友人宅に泊まるよう」
- 都市ごとの文化紹介: 各地域の魅力を、現地目線で伝える
これらが集まって、「どこでも居場所になる」という一貫したナラティブを形成しています。
中小企業で真似できるポイント
Airbnbの手法から学べるのは、「顧客の体験ストーリーを集めて公開する」という シンプルな仕組みです。
- お客様の声特集ページ: 月1回、印象的なレビューや体験談を紹介
- SNS投稿の奨励: 「#〇〇での体験」タグで投稿を促す
- ストーリー動画: 実際の利用者に短いインタビュー動画を撮影
特別な技術やコストをかけなくても、「顧客に語ってもらう場」を作ることで、多声性と参加性は実現できます。
4-2. Patagonia:社会文脈と結びついたナラティブ
Patagoniaのコアナラティブは、「私たちは母なる地球を救うためにビジネスを営む(We’re in business to save our home planet)」です。
一貫した環境保護のメッセージ
Patagoniaの特徴は、ナラティブが単なるマーケティングメッセージではなく、企業活動そのものに組み込まれている点です:
- 製品の長期使用推奨: 「新品を買わないで」キャンペーン
- リペアサービス: 修理して長く使えるサポート
- 環境保護団体への寄付: 売上の1%を環境保護に
- 透明性の高い情報公開: サプライチェーンの環境負荷を開示
これらすべてが「地球を守る」という一本の線で繋がっており、強固なナラティブを形成しています。
中小企業への応用
Patagoniaのような規模でなくても、社会・地域貢献テーマを軸にナラティブを構築することは可能です。
- 地域素材の使用: 地元の食材、材料を使い、その背景を語る
- フェアトレード: 公正な取引をアピール
- 環境配慮パッケージ: プラスチック削減の取り組みを可視化
- 地域イベントへの参加: 地元のお祭り、清掃活動への参加を報告
重要なのは、「言っていることと、やっていることが一致している」こと。この一貫性こそが、ナラティブの信頼性を生みます。
4-3. LEGO Ideas:共創型コミュニティナラティブ
LEGO Ideasは、ファンが新製品のアイデアを投稿し、投票で一定数の支持を得たものが実際に商品化される仕組みです(参考:Marcom.com|2023|LEGO Ideasはファン参加型の共創プラットフォーム)。
企業とファンが一緒に物語を作る
LEGO Ideasの面白さは、「次のLEGOセットの物語」を、企業だけでなくファンも一緒に作っている点です:
- ファンがアイデアを投稿
- コミュニティが投票
- LEGOが商品化を検討
- 商品化されたら、デザイナーとしてファンの名前がパッケージに
この一連のプロセス自体が、「LEGOとファンが共創する物語」になっています。
小規模コミュニティでの応用
LEGO Ideasのような大規模プラットフォームでなくても、共創の考え方は応用できます。
- 新商品アイデア募集: SNSで「次にこんな商品があったら嬉しい」を募集
- ネーミング投票: 新商品の名前を複数候補の中から投票で決定
- パッケージデザイン: ファンのイラストを採用
- 限定商品の共同開発: 常連客とのワークショップで新メニューを開発
「顧客の声を聞く」だけでなく、「一緒に作る」体験を提供することで、深い参加性が生まれます。
4-4. 日本の中小企業イメージ事例
最後に、中小企業がナラティブ的な取り組みをしているパターンを、匿名化した一般例として紹介します。
飲食店の事例パターン
ある地域のカフェは、以下のようなナラティブを展開しています:
- コアナラティブ: 「地域の人が安心してつながれる場所」
- 日々の投稿: 常連さんの何気ない会話、季節の食材の入荷
- イベント: 月1回の「絵本読み聞かせ会」、地域アーティストの展示
- UGC奨励: 「#〇〇カフェのある日常」タグで投稿を促進
特別なことをしているわけではありません。ただ、すべての活動が「地域のつながり」という一本の線で繋がっている—これがナラティブです。
D2Cブランドの事例パターン
オンラインで商品を販売するD2Cブランドの例:
- コアナラティブ: 「忙しい毎日に、丁寧な時間を」
- 商品開発の舞台裏: 素材選び、試作の様子をSNSで公開
- お客様の声: 「この商品で朝の時間が変わった」というストーリーをシェア
- 会員限定イベント: オンライン座談会、新商品の先行体験会
D2Cは顧客との距離が近いからこそ、ナラティブを育てやすいビジネスモデルです。
事例から学べるのは、「規模は関係ない」ということ。大切なのは、コアナラティブの明確さと、それを日々の活動で体現し続けることです。
| ブランド | コアナラティブ(中核の語り) | 主な参加の仕組み |
|---|---|---|
| Airbnb | どこにいても”居場所”を感じられる | ホスト・ゲストの体験談投稿 |
| Patagonia | 地球を救うためにビジネスを営む | 製品リペア、環境活動への参加呼びかけ |
| LEGO Ideas | ファンと共に創造する楽しさ | 新製品アイデアの投稿・投票 |
| (中小飲食店 例) | 地域の人が安心してつながれる場所 | 常連客参加のイベント、#タグ投稿 |
| (D2Cブランド 例) | 忙しい毎日に、丁寧な時間を | 開発の舞台裏公開、オンライン座談会 |
より多くの事例を知りたい方は「なぜあの会社は売れる?ブランドストーリー事例15選【5要素フレームで成果に落とし込む4ステップ】」を、ROI視点での分析は「ストーリーブランディングのROI(記事No.46)」でそれぞれ深掘りしています。
第5章:ストーリーとナラティブの使い分けと実務への落とし込み
ここまでブランドナラティブの概念、特徴、構築方法、事例を見てきました。最後に、「現場でどう使い分けるか」「まず何をやればいいか」を整理します。
【深掘りコラム】なぜ「完璧すぎる」ブランドストーリーは、ナラティブを殺すのか?
多くの企業が、一点の曇りもない完璧なブランドストーリーを作り上げようとします。しかし、それがかえって顧客の参加を妨げ、生きたナラティブの成長を阻害する「盲点」となりがちです。物語には「余白」が必要です。すでに完成された物語には、顧客が自分の物語を重ね合わせる隙間がありません。むしろ、ブランドのちょっとした失敗談、開発中の試行錯誤、未完成な部分を正直に共有すること。そうした「不完全さ」こそが、顧客に「応援したい」「一緒に育てたい」という参加意欲を掻き立てるのです。ナラティブとは、企業が作る「作品」ではなく、顧客と共に育てる「庭」のようなもの。完璧な彫刻を飾るのではなく、誰もが気軽に種を植えられる土壌を用意すること。その発想の転換が、ナラティブ成功の鍵となります。
この章を読み終える頃には、明日からの「最初の一歩」が明確になっているはずです。
5-1. 「ストーリー=設計図」「ナラティブ=運用」の役割分担
ブランドストーリーとブランドナラティブは、対立するものではなく、補完し合う関係です。
ブランドストーリーは、企業の創業理念や価値観を伝える「骨格」であり、ブランドブックやWebサイトの「About」ページに載る内容です。基本的には固定され、大きくは変わりません。これは建物の「設計図」のようなもの。しっかりした設計図がなければ、建物は建ちません。
一方、ブランドナラティブは、設計図をもとに実際に建物が建っていく過程です。日々のSNS投稿、顧客の声、イベント、社会との対話であり、柔軟に進化し、状況に応じて更新されます。設計図を描いただけでは建物は建ちません。現場で、少しずつ積み上げていく—それがナラティブです。
「設計図を描いたあとに、現場で建物が徐々に建っていく」—この比喩がしっくりくるなら、ストーリーとナラティブの関係を掴めています。
ストーリーは「Why(なぜ)」と「What(何を)」を定義し、ナラティブは「How(どのように)」を日々実践していく。両輪があって、初めてブランドが生き生きと動き出します。
5-2. ブランドナラティブ・マップの作り方(簡易版)
ナラティブを可視化し、チームで共有するツールとして「ブランドナラティブ・マップ」が有効です。
ブランドナラティブ・マップは、以下の要素を1枚の図に整理したものです:
- 中心: コアナラティブ
- 周辺: 3〜4本のサブナラティブ
- 外側: 顧客参加のパターン(UGC、イベント、投票など)
本記事でご案内した「ナラティブ設計ワークシート」には、このマップを書き込める欄も用意しています。チームで一緒にホワイトボードに書きながら、「うちのナラティブはこんな形だね」と確認する—そのプロセス自体が、認識を揃える効果があります。
5-3. 明日から始める!ブランドナラティブ構築の第一歩(3アクション)
「理論はわかった。で、何から始めればいい?」—その答えがこの3アクションです。
アクション1:コアナラティブを1〜2文で書き出す
まずは紙とペンを用意して、自社のコアナラティブを書いてみてください。完璧でなくて構いません。「たたき台」を作ることが第一歩です。
再掲:テンプレート
「◯◯という課題を抱える人が、△△できる世界をつくるために、私たちは□□を提供し続けている」
所要時間:30分
誰とやるか:経営者+マーケ担当者
アクション2:既存の顧客の声・レビュー・投稿を集めて眺める
自社のブランドについて、顧客がどんな語りをしているかを確認します。
やり方:
- Google/SNSで自社名を検索
- レビューサイトの口コミを読む
- 過去のメール・アンケート回答を見返す
これが「現状のナラティブの棚卸し」です。どんな物語が既に生まれているかを知ることで、次の一手が見えてきます。
所要時間:1時間
誰とやるか:1人でもOK
アクション3:1つだけ「顧客参加の窓口」を決めて始める
最後に、顧客が語れる「窓口」を1つ作ります。
選択肢:
- SNSハッシュタグ: 「#〇〇のある暮らし」で投稿を促す
- お客様の声募集: Webサイトやメールで体験談を募集
- アンケート: 簡単な質問で意見を集める
いきなり全部やろうとせず、まずは1つ。それを3ヶ月続けてみてください。
所要時間:設定30分+運用は週1回10分
誰とやるか:SNS担当者(いなければ自分)
この3アクションを実行するだけで、「ナラティブを育てる土台」ができあがります。19年の経験から言えるのは、完璧を目指して動けなくなるより、60点でもいいから始めた方が圧倒的に成果が出るということです。
効果測定の詳細は「ブランドストーリー、効果不明のままでいい?予算承認率65%UP!35年のプロが教える数値化戦略」で、失敗を避けたい方はストーリーテリング失敗例5選|19年・35年のプロが教える炎上回避策【診断シート付】で解説しています。
まとめ
ブランドナラティブとは、「企業と顧客が共に進化させる継続的な物語」です。
本記事では、以下の内容を解説しました:
ブランドナラティブの本質:
- ブランドストーリーが「完結した物語」であるのに対し、ナラティブは「継続的に語られ、更新される物語」
- 企業だけでなく、顧客、従業員、パートナーが共に語ることで、豊かな物語が育つ
5つの特徴:
- 継続性—時間をかけて積み上がる
- 多声性—多様な語り手が存在する
- 文脈性—生活や社会と繋がる
- 多層性—企業/プロダクト/コミュニティの層がある
- 参加性—顧客が物語の登場人物になる
実務への落とし込み(5ステップ):
- コアナラティブを定義する
- サブナラティブを洗い出す
- 顧客参加の仕組みを設計する
- タッチポイントで展開する
- 運用・更新プロセスを設計する
そして、明日からできる「最初の3アクション」:
- コアナラティブを1〜2文で書き出す
- 既存の顧客の声を集めて眺める
- 1つだけ「顧客参加の窓口」を決めて始める
ナラティブは、小さく始めて、運用で磨いていくものです。完璧な設計図を描くことよりも、まず一歩を踏み出すこと。その積み重ねが、5年後、10年後の「愛されるブランド」を作っていきます。
次に読むべき記事
さらに学びを深めたい方は、以下の記事もご活用ください:
- 基礎から体系的に学ぶ: 「ブランドストーリーテリング完全ガイド」
- ストーリーの違いを理解する: 「ストーリーブランディングとは?」
- 実例を通じて学ぶ: なぜあの会社は売れる?ブランドストーリー事例15選【5要素フレームで成果に落とし込む4ステップ】
- 効果測定を知る: ブランドストーリー、効果不明のままでいい?予算承認率65%UP!35年のプロが教える数値化戦略
- ROI視点で考える: ストーリーブランディングROI(記事No.46)【近日公開】
自社のブランドナラティブを育てる第一歩を、今日から踏み出しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. ブランドストーリーとブランドナラティブ、どちらを先に作るべきですか?
A. まずはブランドストーリーから作ることをお勧めします。
ブランドストーリーは「Why(なぜ)」と「What(何を)」を定義する骨格です。これがないと、ナラティブが何を軸に展開すべきかが不明確になります。
ただし、既にミッションやビジョンがあるなら、それをコアナラティブの起点として活用できます。つまり、厳密な順序にこだわるより、「持っているものから始める」柔軟さが大切です。
Q2. 中小企業で人手が足りません。ナラティブを育てるのは現実的ですか?
A. むしろ中小企業こそ、ナラティブを育てやすいと考えています。
大企業のように予算や人員は多くなくても、中小企業には「顧客との距離の近さ」という強みがあります。社長自身がSNSで発信したり、常連さんと直接会話したり—こうした「顔の見える関係」こそが、ナラティブの土壌です。
始め方は、まず「週1回、顧客の声を1つシェアする」だけでOK。完璧を目指さず、小さく続けることが成功の鍵です。
Q3. ナラティブの効果が出るまで、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 短期的な効果(エンゲージメント増)は3ヶ月、長期的な効果(ブランドロイヤルティ)は1〜2年が目安です。
ナラティブは「積み上げ型」の資産です。SNS投稿を始めてすぐにフォロワーが増えたり、コメントが増えたりといった初期効果は比較的早く見えますが、「このブランドが好き」という深い愛着が形成されるには、少なくとも1年以上の継続が必要です。
焦らず、まずは3ヶ月続けてみる—そこで小さな成果を確認しながら、長期視点で取り組むことをお勧めします。
Q4. 顧客参加型のナラティブで、ネガティブな投稿が出た場合はどうすればいいですか?
A. 誠実に対応し、それも物語の一部とするのが基本姿勢です。
ネガティブな声を恐れて顧客の発信を抑制すると、ナラティブの「多声性」が失われます。重要なのは、批判を「クレーム」としてではなく「改善の機会」として受け止め、真摯に対応する姿勢を見せることです。
実際、問題に対して誠実に対応する様子を公開することで、かえって「このブランドは信頼できる」という評価を得ているケースも多くあります。ネガティブな投稿も含めて、リアルな物語の一部と捉えましょう。
Q5. ナラティブを更新するタイミングの判断基準はありますか?
A. 以下のような変化のシグナルが出たときが更新のタイミングです:
- 社会のトレンドや価値観が大きく変わった(例:コロナ禍)
- 事業の方向性が変わった(新規事業、M&A)
- 顧客の声が「以前と違う」テーマに集中し始めた
- 従業員から「今のメッセージは実感と合わない」という声が出た
ただし、コアナラティブは頻繁に変えるべきではありません。変えるのは「サブナラティブ」や「語り方」の部分。核は保ちながら、表現や文脈を柔軟に更新していく—このバランスが大切です。
Q6. ナラティブ設計に、外部の専門家は必要ですか?
A. 初期段階では社内だけで十分です。ただし、壁打ち相手としての専門家は有効です。
ナラティブは、自社の価値観や顧客との関係性から生まれるもの。外部の専門家がゼロから作れるものではありません。まずは社内で「たたき台」を作り、それを専門家に見てもらって「客観的な視点」や「表現のブラッシュアップ」を得る—この順序がベストです。
予算が限られるなら、まずは本記事のワークシートを使って社内でトライし、ある程度形ができてから専門家の意見を聞くのが現実的です。
※本記事は、世界的エンタメ企業での実務経験に基づくブランドマネジメントの知見と、最新のマーケティング研究を統合し、当編集部が体系化したものです。
