「小さい会社だから無理」は嘘!中小企業が響くブランドストーリーを作る5ステップ【0円から】

「うちは小さい会社だから、ブランドストーリーなんて無理」——経営者の方から、そんな言葉を何度も聞いてきました。

WEBマーケティング会社を経営して19年になりますが、実はこれ、最大の機会損失だと私は考えています。なぜなら、中小企業だからこそ持てる「人間味」という武器は、大企業が何億円かけても真似できないものだからです。

実際、東京商工リサーチ(2024)のデータによると、中小企業の平均従業員数は21.9人。この規模感だからこそ、経営者の顔が見え、お客様との距離が近く、一人ひとりの想いが伝わりやすいんですね。(参考:東京商工リサーチ|2024|「2024年 中堅企業動向レポート」中小企業の平均従業員数21.9人)。当編集部では、ブランディングの専門家の知見をもとに、こうした中小企業ならではの強みを活かしたブランドストーリーの作り方を研究してきました。

「大企業の事例は参考にならない」「予算も人手もない」「何から始めればいいかわからない」——そんな悩みを抱える経営者の方に向けて、本記事では次の内容をお届けします:

【この記事で得られる価値】

  • 低予算で始める5ステップ:0円から実践可能な具体的手順
  • 中小企業にしかない5つの強み:大企業が真似できない独自性の活かし方
  • 今すぐ使える実践ツール:週次運用プランとテンプレート配布
  • 成功事例3選:実在の中小企業が実際に成果を出した方法

【記事の構成】
第1章:中小企業が強い5つの理由
第2章:作成5ステップ(質問リスト・ワークシート付き)
第3章:最適な3つのストーリー型
第4章:低予算でも効く5つの工夫
第5章:成功事例3選(実在企業・匿名配慮)
付録:自社ブランドストーリー強度診断&30日で始める運用プラン

まずは理論を学びたい方はブランドストーリーテリング完全ガイドを、具体的な作り方の詳細を知りたい方は「響かない」悩みを解決!ブランドストーリーの作り方【19年プロの5ステップとワークシート】をご参照ください。効果測定については、ブランドストーリー、効果不明のままでいい?予算承認率65%UP!35年のプロが教える数値化戦略や「ストーリーブランディングのROI(記事No.46)」で詳しく解説しています。
それでは、小さくても響く物語の作り方を、一緒に学んでいきましょう。

※本記事は公開情報と編集部分析に基づく一般論であり、特定企業の公式見解ではありません。中小企業事例は匿名化方針に準じます。

目次

第1章:中小企業のブランドストーリーが強力な5つの理由

大企業のブランドストーリーは、洗練されていて予算も潤沢。でも、中小企業には中小企業ならではの強みがあります。19年間、様々な規模の企業を支援してきた経験から言えるのは、「小さいからこそ強い」要素が確実に存在するということです。

iStock(VisualGPS調査、SDGs MAGAZINE掲載)によると、約65%の消費者が「企業を支持する傾向がある」、約58%が「自分の価値観と合うブランドを好む」と回答しており(参考:iStock|2025|2025中小企業マーケティングトレンドレポート)、消費者が価格だけでなく、企業との関係性や地域への貢献度を購入の判断基準にする傾向が強まっていると指摘されています。
このデータから専門家として言えるのは、ブランドストーリーは単なる「良い話」ではなく、現代の消費行動に合致した極めて合理的な「経営戦略」であるということです。特に、大資本が入り込みにくい「地域での信頼関係」という市場において、ストーリーは価格競争を回避し、持続的な利益を生み出すための最も強力な武器となり得ます。

ブランドストーリーを構造的に整理するために、「Aakerのブランド・アイデンティティ・モデル」という考え方を応用してみましょう。これは、ブランドの核を定義する手法ですが、中小企業のストーリー整理にも非常に有効です。

【Aakerのブランド・アイデンティティ・モデル応用】

  • 核となるアイデンティティ(Core Identity):経営者の創業の想いや譲れない価値観。ストーリー全体の「背骨」。拡張アイデンティティ(Extended Identity):顧客の声、地域との関わり、従業員の活躍など、日々の活動から生まれる具体的なエピソード群。核を証明し、豊かにする「枝葉」。

このフレームワークで自社の物語資源を棚卸しすることで、「何が幹で、何が枝葉か」が明確になり、一貫性のあるストーリー発信が可能になります。

1-1 理由1:経営者の顔が見える

中小企業の最大の武器は、経営者の人柄や想いが直接伝わることです。
夜間の緊急対応、即断即決、約束を守る姿勢——これらは数字では測れませんが、お客様の心に深く刻まれます。私自身、地元の工務店社長が夜中に駆けつけてくれた経験がありますが、その対応ひとつで生涯顧客になりました。

ブランディング理論では、顧客との感情的つながりが共感を生むとされています。大企業では経営者とお客様の距離が遠いため、この「顔が見える関係」は作りにくい。しかし中小企業なら、社長自らがSNSで発信したり、店頭に立ったりできます。

ActionLinkの調査によると、経営者が発信するEメールの平均開封率は22.4%、LINEでは32.8%と報告されています。(参考:ActionLink|2025|2025年メール開封率・クリック率最新データ)これは一般的な企業アカウントと比較しても高い数値です。「誰が」発信するかで、受け取られ方が変わるんですね。

詳しい企業ストーリーの展開方法は企業ストーリーの作り方で解説しています。

1-2 理由2:顧客との距離が近い

中小企業は、お客様一人ひとりとの対話機会が圧倒的に多い。この近さが、Before→Afterのストーリーを豊富に生む源泉になります。
「あのお客様、最初は〇〇で困ってたけど、△△で解決できた」——こうした小さな改善の積み重ねが、説得力のある事例になります。大企業のマス向けメッセージとは違い、「この人のために」という個別性が物語に深みを与えるんです。

ブランディング理論では、顧客の変容(Before→After)を示すことが物語の核とされています。中小企業はお客様の顔と名前が一致しているので、この変容プロセスを具体的に語れます。

実際の顧客変容の事例展開についてはブランドストーリー事例で詳しく紹介しています。

1-3 理由3:地域との結びつき

地域貢献、雇用創出、地元イベント参加——中小企業は地域社会の一員としての物語を自然に持っています。
私が支援した地方の製造業では、地元の高校生向け工場見学を毎年実施していました。その様子をブログやSNSで発信したところ、「地域を大切にする会社」として認知され、採用応募が前年比で増加しました。これはローカルSEO(地域名+業種での検索対策)とも相性が良いんです。

Ranktracker(2025)の調査では、ローカルパック(Googleマップの上位3件)の1位は約23.6%のクリックシェアを獲得すると報告されています。また、「近くのショッピング」検索は前年比で2倍以上増加しているとのこと(参考:Ranktracker|2025|Local SEO Statistics 2025)。地域密着型のストーリーは、こうしたローカル検索でも効果を発揮します。

体験設計の観点から見ると、タッチポイント(接点)ごとに物語を展開することが重要です。地域イベント、店舗、採用、PRなど、様々な場面で一貫したメッセージを伝えることで、地域での存在感が高まります。

地域を舞台にしたストーリー設計についてはブランドヒストリーの作り方も参考になります。

1-4 理由4:柔軟性・スピード

大企業では稟議に時間がかかる施策も、中小企業なら即座に試して改善できる。この試行錯誤のプロセス自体が、ストーリーの素材になります。
「最初はこう考えてたけど、お客様の声を聞いて方向転換した」——こうしたピボット(方針変更)の物語は、誠実さと柔軟性を伝えます。失敗談も含めて語れるのは、組織が小さく意思決定が早いからこそです。

統合的なコミュニケーション(IMC)の考え方を小規模運用に適応させると、素早く打ち出し、一貫性を保つことが可能になります。大企業のように部門間調整に時間をかける必要がないため、スピード感のあるメッセージ発信ができます。

1-5 理由5:「応援したくなる」物語

人は頑張っている人を応援したくなる生き物です。中小企業の「小さいけど頑張ってる」姿は、いわゆる「アンダードッグ効果」を生みます。
shares-cf(2025)の業界レポートでは、2025年にクラウドファンディングの法人案件比率が約25%に達すると予想されています。購入型クラウドファンディングは「応援消費」の代表例で、共感型テーマが拡大傾向にあるとのこと(参考:shares-cf|2025|クラウドファンディング市場の全貌と国内動向)。

iStock(VisualGPS調査、SDGs MAGAZINE掲載)によると、約65%の消費者が「企業を支持する傾向がある」、約58%が「自分の価値観と合うブランドを好む」と回答しています。ただし、約79%が「SNSコンテンツを信頼していない」とも答えており、真正性(本物らしさ)が求められています(参考:iStock|2025|2025中小企業マーケティングトレンドレポート)。
ここで注意すべきは、誇張や被害者化は避けること。「困難を乗り越えた」という事実は伝えても、同情を誘うような演出は逆効果です。あくまで前向きな姿勢と、お客様への価値提供にフォーカスしましょう。

キャラクター性を持たせた中小企業のブランディングについては連携記事CM-06も参考になります。

【章末まとめ】中小企業のブランドストーリーが強い5つの理由:

  • 経営者の顔が見える(信頼の源泉)
  • 顧客との距離が近い(具体的なBefore→After)
  • 地域との結びつき(ローカルSEOとの相性)
  • 柔軟性・スピード(試行錯誤の物語)
  • 応援したくなる(アンダードッグ効果)

これらの強みを活かすための具体的な作成方法を、次章で見ていきます。
理論の全体像を深めたい方はブランドストーリーテリング完全ガイド、作り方の詳細は「響かない」悩みを解決!ブランドストーリーの作り方【19年プロの5ステップとワークシート】、事例研究はブランドストーリー事例をご覧ください。

第2章:中小企業のブランドストーリー作成5ステップ

さて、「強みはわかったけど、具体的にどう作ればいいの?」という疑問にお答えします。ここでは、予算ゼロから始められる5ステップを紹介します。

Step1 経営者の想いを言語化

ブランドストーリーの核心は、「なぜ」この事業を始めたのかという原点です。
ブランディング理論では、「WHYから始める」ことの重要性が強調されています。お客様が共感するのは、商品スペックではなく、その背後にある想いや信念だからです。

【経営者インタビュー10問】
以下の質問に、録音しながら答えてみてください。一人で考えるより、誰かに聞いてもらう方が深掘りしやすいです。

  • なぜこの事業を始めたのか?
  • 創業時、どんな課題を解決したかったのか?
  • 最も印象に残っているお客様とのエピソードは?
  • 事業を続ける中で、最も苦しかったことは?
  • その困難をどう乗り越えたのか?
  • 10年後、この事業をどうしたいか?
  • お客様に最も喜ばれた瞬間は?
  • 従業員に一番伝えたいことは?
  • 地域や社会に対して、どんな貢献をしたいか?
  • あなたの事業の「らしさ」を一言で表すと?

録音した内容を聞き返し、共通するテーマや感情を見つけてください。これが物語の軸になります。

【経営者ストーリーワークシート】
経営者の想いを言語化し、ブランドストーリーの核を見つけるためのワークシートです。上記の10問を埋めながら、ご自身の言葉で書き出してみましょう。

  • 1. 創業の動機:
    なぜこの事業を始めたのか、その原体験やきっかけは何でしたか?
  • 2. 解決したかった課題:
    創業当時、どんな社会課題や顧客の悩みを解決したいと思っていましたか?
  • 3. 忘れられないお客様エピソード:
    お客様との間で、最も心に残っている感動や感謝のエピソードを具体的に教えてください。
  • 4. 最大の困難:
    事業を続ける中で、最も苦しかった時期や出来事は何でしたか?
  • 5. 困難の乗り越え方:
    その困難をどのように乗り越えましたか?誰の助けがありましたか?
  • 6. 10年後のビジョン:
    10年後、この事業をどのように成長させ、社会にどのような影響を与えたいですか?
  • 7. お客様が最も喜んだ瞬間:
    お客様から言われて最も嬉しかった言葉や、喜ばれたと感じた具体的な瞬間は何ですか?
  • 8. 従業員へのメッセージ:
    従業員に対して、最も伝えたいこと、期待していることは何ですか?
  • 9. 地域・社会への貢献:
    地域社会や地球環境に対して、どのような貢献をしたいと考えていますか?
  • 10. 事業の「らしさ」:
    あなたの事業を一言で表現するとしたら、どんな言葉が最もふさわしいですか?

創業ストーリーの具体的な書き方は響く創業ストーリーの書き方|心を動かす5つの要素と30問の質問で「Why」を言語化で詳しく解説しています。

Step2 顧客の声を収集

次に、お客様の視点からの物語を集めます。Before→Afterの変化を数字と言葉で示すことが重要です。

【5問アンケート】
既存顧客に以下を聞いてみましょう(Googleフォーム等で無料実施可能):

  • 当社を知る前、どんな課題を抱えていましたか?
  • 当社を選んだ決め手は何でしたか?
  • 利用後、どのような変化がありましたか?(できれば数字で)
  • 他社と比較して、当社の特徴は何だと思いますか?
  • 友人・知人に当社を紹介するとしたら、何と言いますか?

特に有益な回答をくれた2〜3名には、30分程度の電話インタビューを依頼します。深掘りすることで、自分では気づかなかった価値が見えてきます。

【顧客アンケート5問テンプレート】
お客様の生の声を集めるためのアンケートテンプレートです。Googleフォームなどで簡単に作成し、配信できます。

  • Q1. 当社(貴社名)を知る前、どのような課題やお悩みをお持ちでしたか?
    (例:〇〇の作業に時間がかかっていた、品質に不安があった、他社サービスで満足できなかったなど、具体的に教えてください。)
  • Q2. 当社(貴社名)を選んだ「決め手」は何でしたか?
    (例:知人の紹介、Webサイトの内容、担当者の対応、価格、商品・サービスの特徴など。)
  • Q3. 当社(貴社名)の商品・サービスを利用後、どのような変化や効果がありましたか?
    (できるだけ具体的に、もし可能であれば「数字」でご記入ください。例:〇〇の時間が半分になった、コストが△△円削減できた、社員の満足度が上がったなど。)
  • Q4. 他社と比較して、当社(貴社名)の「特徴」や「強み」は何だと思いますか?
    (例:丁寧な対応、スピード、品質、柔軟性、特定の専門性など。)
  • Q5. もし、友人や知人に当社(貴社名)を紹介するとしたら、どのような言葉で紹介しますか?
    (当社の魅力を一言で表現してください。)

【インタビュー票(任意)】
アンケートで特に良い回答をくれたお客様には、さらに深い話を伺うために以下の質問でインタビューをしてみましょう。

  • 上記アンケートQ1〜Q5の内容について、さらに掘り下げて詳しくお聞かせください。
  • サービス利用中に、特に印象に残った出来事や当社の対応はありましたか?
  • 当社のサービスを使い続ける理由は何ですか?
  • 今後、当社に期待することや、改善してほしい点はありますか?

【数字化のポイント】 
・時間短縮:「作業時間が3時間から30分に」
・コスト削減:「月額費用が半分になった」
・満足度:「10点満点中9点以上」

こうした具体的な数字は、物語に説得力を与えます。

顧客変容の事例展開についてはブランドストーリー事例も参考になります。

Step3 地域との関わりを可視化

地域密着型の中小企業なら、地域社会への貢献も重要なストーリー要素です。

【可視化項目】

  • 雇用:地元から何人採用しているか
  • 取引:地元企業・農家等との取引実績
  • イベント:地域行事への参加・協賛
  • 声:地域住民からの感謝の言葉(写真・動画)

これらを写真や数字でまとめると、「地域に根ざした企業」というストーリーが見えてきます。
体験設計の考え方では、地域を舞台とした接点づくりが顧客体験の質を高めます。店舗、イベント、採用説明会など、あらゆる場面で地域との結びつきを語ることで、一貫したブランドイメージが形成されます。

地域を舞台にしたストーリー設計についてはブランドヒストリーの作り方も参考になります。

Step4 従業員のストーリーを集める

中小企業の強みは、チーム全員の顔が見えることです。社員3〜5名にインタビューし、次の質問をしてみましょう:

【社員インタビュー質問例】

  • この会社を選んだ理由は?
  • 働いていて、最も嬉しかった瞬間は?
  • お客様から言われて印象に残った言葉は?
  • この会社の「らしさ」を一言で表すと?
  • 10年後、この会社がどうなっていてほしいか?

従業員の言葉は、経営者とは違う角度からの物語を提供してくれます。また、社風や文化を具体的に示すことで、「ガイド(企業)」としての役割を体現できます。
ブランディング理論では、企業は顧客の「ガイド」であり、顧客を成功へ導く存在とされています。従業員のエピソードは、この「導く力」を証明する材料になります。

社内での物語共有については「日本最低5%」を変える!社内ストーリー共有で理念浸透とエンゲージメントを高める5施策で詳しく解説しています。

Step5 低予算で発信する

物語ができたら、0円〜低予算で発信します。

低予算で始める中小企業のブランドストーリー発信サイクル

統合的なコミュニケーション(IMC)の考え方を中小企業向けにアレンジすると、次のチャネルが有効です:

  • Webサイト:「私たちについて」ページを充実
  • Googleビジネスプロフィール(GBP):投稿機能で週1更新
  • SNS:Instagram/Facebook/X(旧Twitter)で日常を発信
  • PR:地域紙・業界誌への投稿(無料掲載枠あり)
  • 動画:スマホ撮影でYouTube/Instagram Reelsに投稿

Google公式ヘルプによれば、Googleビジネスプロフィールに完全かつ正確な情報を掲載することがローカル検索で表示されやすくなるとされています(Google公式ヘルプ|2025|Tips to improve your local ranking on Google)。営業時間の更新、レビュー返信、写真・動画の追加など、基本的な運用が重要です。
WordStream(2020)によると、写真があると経路リクエストが42%多く、ウェブサイトのクリックが35%多くなるという報告があります(WordStream|2020|13 Google My Business Optimizations to Rank Higher in Local Search)。視覚的な情報の充実が、アクション増加につながるんですね。

【30日スタート計画】

  • Week 1:経営者10問に回答→ブログ1記事作成
  • Week 2:顧客アンケート実施→回答を投稿で紹介
  • Week 3:社員インタビュー→動画撮影(3分程度)
  • Week 4:地域イベント参加→写真とレポート投稿

週3投稿(Web/SNS/GBP)を目標に、無理のないペースで続けましょう。
スマホでの物語発信についてはブランドストーリーはSNSでなぜ伸びない?5大プラットフォーム攻略と6つの秘策で詳しく解説しています。

【章末補足】
ストーリーを発信するだけでなく、効果測定も同時に設計することが大切です。どの投稿が反応を得たか、問い合わせ数は増えたか、来店数は変わったかなど、簡易的なKPIを設定しましょう。

詳しい効果測定の方法については、ブランドストーリー、効果不明のままでいい?予算承認率65%UP!35年のプロが教える数値化戦略で詳しく解説しています。

第3章:中小企業に最適な3つのストーリー型

すべての中小企業に同じストーリー型が合うわけではありません。ここでは、業種や状況に応じた3つの型を紹介します。

ストーリー型 向いている企業の特徴 物語の構造(テンプレート) 主な発信チャネル
経営者奮闘記型 創業ドラマがある、経営者の個性が強い、BtoCビジネス ①原点 → ②困難 → ③転機 → ④成長 → ⑤未来 Webサイト「代表挨拶」、SNS(個人の想い)、地域紙
顧客変容型 BtoBビジネス、課題解決型サービス、Before→Afterが明確 ①課題 → ②出会い → ③解決策 → ④結果 → ⑤声 Webサイト「導入事例」、LinkedIn、顧客インタビュー動画
地域貢献型 地域密着型ビジネス(飲食・小売等)、地域課題に取り組んでいる ①地域課題 → ②取り組み → ③協力 → ④成果 → ④ビジョン Googleビジネスプロフィール、地域イベント、Facebook
出典:ブランド塾編集部作成。各チャネルの有効性は Ranktracker (2025)、sogyotecho.jp (2025) の調査結果を参考に分類。

型1 経営者奮闘記型

【こんな企業に向いている】

  • 創業ストーリーにドラマがある
  • 経営者の個性が強い
  • BtoC(消費者向け)ビジネス

ブランディング理論では、創業・原体験から価値の約束へという流れが重視されています。「なぜ始めたか」→「どんな困難があったか」→「それをどう乗り越えたか」→「今、何を約束するか」という構造です。

【構造テンプレート】

  • 原点:なぜこの事業を始めたのか(原体験)
  • 困難:創業時・成長過程での壁
  • 転機:転換点となった出来事・出会い
  • 成長:困難を乗り越えて得たもの
  • 未来:これからお客様に提供する価値

【匿名化事例:町の電器店ケース】
ある地方都市の電器店(従業員5名)は、大型家電量販店の進出で売上が激減。しかし店主は「地域のお年寄りに寄り添う」という原点に立ち返り、「何でも相談できる電器店」へと方針転換しました。
夜間の緊急対応、機器の使い方教室、定期訪問サービスなど、大型店にはできない細やかな対応を続けた結果、高齢者層から絶大な支持を獲得。売上は回復し、地域メディアにも取り上げられました。
この事例では、「困難(大型店進出)→転機(原点回帰)→成長(独自サービス確立)」という流れが明確です。

【チャネル展開の例】

  • Webサイト「代表挨拶」ページで創業ストーリー
  • Instagramで日常の奮闘を投稿
  • Googleビジネスプロフィールで「今週のひとこと」
  • 地域紙への寄稿

創業ストーリーの書き方は響く創業ストーリーの書き方|心を動かす5つの要素と30問の質問で「Why」を言語化で詳しく解説しています。

型2 顧客変容型

【こんな企業に向いている】

  • BtoB(法人向け)ビジネス
  • 課題解決型のサービス
  • Before→Afterが明確

ブランディング理論では、顧客のBefore→Afterを示すことが物語の核とされています。主人公はお客様で、企業は「ガイド(導く者)」という役割です。

【構造テンプレート】

  • 課題:お客様が抱えていた問題
  • 出会い:当社を知ったきっかけ
  • 解決策:提供したソリューション
  • 結果:数字で示す変化(売上・時間・コスト等)
  • :お客様からの生の言葉

【匿名化事例:BtoB中小ITのDX成功ストーリー】
ある中小IT企業(従業員15名)は、製造業A社の「紙ベースの生産管理に限界」という課題に対し、小規模向けクラウドシステムを導入支援しました。
結果、A社の作業時間が月間60時間削減、不良品率が3%から0.8%に低下。A社社長の「現場が笑顔になった」という言葉が、何よりの証明です。
この事例をWebサイトとLinkedInで発信したところ、同じ課題を持つ製造業からの問い合わせが増加しました。

【成果を証明する第三者の声設計】

  • 顧客インタビュー動画(3分程度)
  • 数字のビフォーアフター比較表
  • 推薦文(実名・役職・企業名)

ブランドストーリーの具体的な作り方は「響かない」悩みを解決!ブランドストーリーの作り方【19年プロの5ステップとワークシート】で詳しく解説しています。

型3 地域貢献型

【こんな企業に向いている】

  • 地域密着型ビジネス
  • 飲食・小売・サービス業
  • 地域課題の解決に取り組んでいる

体験設計(ブランドエクスペリエンス)の考え方と物語を組み合わせると、地域を舞台にした物語が生まれます。店舗、イベント、採用、PRなど、様々な接点で一貫したメッセージを伝えることが重要です。

【構造テンプレート】

  • 地域課題:地域が抱える問題
  • 取り組み:当社の具体的アクション
  • 協力:地域住民・企業との連携
  • 成果:数字・声で示す変化
  • ビジョン:これから目指す地域の姿

【匿名化事例:地域パン屋の取り組み】
ある地方都市のパン屋(従業員8名)は、「高齢者の孤立」という地域課題に着目。毎週火曜日の「みまもりパン配達」を開始し、一人暮らしのお年寄り宅にパンを届けながら安否確認を実施しました。
さらに子ども食堂への無償提供、地域イベントでのワークショップ開催など、「パンを通じた地域コミュニティづくり」を展開。地元テレビ局に取り上げられ、クラウドファンディングで新店舗資金の調達にも成功しました。

【メディア露出・クラファン連動のコツ】

  • 地域紙への定期的な情報提供
  • 記者との関係づくり(年賀状・季節の挨拶)
  • クラウドファンディングのストーリーページに地域貢献を明記
  • 支援者へのリターンに地域商品を組み込む

地域企業の理念とストーリーの結びつきは誰も読まない企業理念を「腹落ち」させる5ステップ|プロが教えるストーリー化で社内浸透で詳しく解説しています。

ブランドストーリー3つの型と発信チャネルの関連図

3つの型は排他的ではありません。複数を組み合わせることで、より立体的な物語になります。
詳しい作り方は「響かない」悩みを解決!ブランドストーリーの作り方【19年プロの5ステップとワークシート】をご覧ください。

第4章:低予算で実現する5つの工夫

「予算がない」——これは中小企業の共通課題です。しかし、工夫次第で0円から始められる方法があります。

工夫 具体的なアクション例 推奨ツール(無料版) 実践の目安
スマホ1台で始める 動画・写真の撮影、編集、投稿 CapCut (動画編集), Canva (デザイン) 週に1〜2時間
社長が自ら発信 週1回のブログ更新、月1回の動画メッセージ WordPress, YouTube 週に1時間程度
顧客を巻き込む(UGC) 独自ハッシュタグの作成、レビュー投稿の促進 Instagram, Googleビジネスプロフィール 常に意識
地域メディア活用 地域紙へのプレスリリース送付(月1回) PR TIMES (無料プランあり), 各メディアの投稿フォーム 月に1〜2時間
口コミを仕組み化 紹介カードの作成、全レビューへの24時間以内返信 Canva (カード作成), 各レビュープラットフォーム 常に意識
出典:ブランド塾編集部作成。SNS利用者の動向は ICT総研 (2020)、レビュー返信の効果は FORCE‑R調査 (2025) を参照。

工夫1 スマホ1台で始める

今やスマホのカメラ性能は、数年前のプロ機材に匹敵します。撮影・編集・投稿まで、すべて無料アプリで完結できます。

【無料アプリ一覧】

  • 撮影・編集
    • iOS:iMovie(動画)、Snapseed(写真)
    • Android:CapCut(動画)、Google フォト(写真)
  • 投稿・管理
    • Meta Business Suite(Instagram/Facebook統合管理)
    • Googleビジネスプロフィール公式アプリ
  • デザイン
    • Canva(無料版で十分)

ICT総研(2020)の調査によると、2020年末時点で日本のSNS利用者は約7,975万人と推定され、LINEの利用率は約77.4%でした(参考:ICT総研|2025|2025年 有料動画配信サービス利用動向に関する調査)。SNS利用時間も増加傾向にあり、YouTubeやInstagramの利用者の過半数が「利用時間が増えた」と回答しています。

【撮影のコツ】
自然光を活用(窓際で撮影)
横長(16:9)で撮影(YouTube/Instagram Reels対応)
1シーン3〜5秒で構成(視聴者が飽きない長さ)
字幕を入れる(音声なしでも伝わる)

スマホでの物語発信についてはブランドストーリーはSNSでなぜ伸びない?5大プラットフォーム攻略と6つの秘策で詳しく解説しています。

工夫2 社長が自ら発信

「社長が出ると信頼感が違う」——これは19年の経験から断言できます。週1ブログ/月1動画から始めましょう。

ブランディング理論では、語り手の一貫性が重要とされています。大企業のように担当者が頻繁に変わると、ブランドの「声」がブレてしまいます。中小企業なら、社長が一貫して発信することで、信頼と親しみを両立できます。

【週1ブログの台割例】

  • 月曜:今週の目標・想い
  • 金曜:今週の振り返り・感謝

【月1動画の台割例】

  • 冒頭30秒:今月のトピック
  • 本編2分:経験談・学び
  • 締め30秒:お客様へのメッセージ

SHIFT株式会社(2025)の公開報告では、SNSを活用した採用チャネルの拡充により月間応募者数が4,000人超、年間で数千名規模の採用を達成したとされています。ただし、社長発信が直接の原因であるとする定量的検証は示されていないため、あくまで参考事例として捉えてください(参考:SHIFT株式会社|2025|経営トップメッセージ強化による採用効果報告)。

【時間配分の目安】
ブログ執筆:30分(週1回)
動画撮影・編集:1時間(月1回)
SNS投稿:10分(週3回)

合計で週1時間程度から始められます。
書き方の詳細は読者の心を掴む!ブランドストーリーの書き方|19年経営のプロが教える7つの感情ライティング術をご覧ください。

工夫3 顧客を巻き込む

UGC(ユーザー生成コンテンツ)は、最強の信頼の証です。お客様に物語の一部になってもらいましょう。

STONEWEB(2025)の記事では、「消費者の約50%が購入前にUGCを確認する」という参考値が示されています。また、オルビスのLP CVRが最大1.21倍になったという事例値も紹介されています(ただし出典未提示のため注意)(参考:STONEWEB|2025|日本の中小企業におけるLinkedIn採用活用の現状)。

【UGC設計】

  • ハッシュタグ:独自タグを作成(例:#〇〇屋のある暮らし)
  • 紹介キャンペーン:紹介者・被紹介者の双方に特典
  • レビュー促進:購入後1週間でメール送信
  • 投稿リポスト:お客様の投稿を公式アカウントで紹介(許可取得)

【レビュー返信の重要性】
FORCE‑R調査(2025)によると、「ショップからの返信があるレビューは購買意欲に影響する」と回答した割合は78%、「レビューコメントがある店舗を選ぶ」と回答した割合は75%でした(参考:FORCE‑R調査|2025|ショップからの返信でレビュー効果アップ)。
ecnomikata.com(2025)では、ネガティブなレビューへの返信が全世代で70%以上に購買意欲の影響を与えると報告されています(参考:ecnomikata.com|2025|ネガティブレビューへの返信の購買意欲影響調査 FORCE‑R調査引用)。

工夫4 地域メディアを活用

地域紙・情報誌・コミュニティFM・ケーブルTVは、無料掲載枠が意外とあります。

ちいき新聞(2025)の媒体資料によると、合計発行部数は1,739,462部(2025年4月現在)、40エリア(千葉県・茨城県)で展開されています。地域特化の無料新聞として、地元企業の情報を積極的に掲載しています(参考:地域新聞|2025|ちいき新聞媒体資料)。
toraeru.co.jp(2025)の記事では、OURSサービス合算で月間約100万PV、約20万人のSNSフォロワー、個別事例のナゴレコで月間約70万PVと報告されています(いずれも媒体側の自己申告)(参考:toraeru|2025|地域ポータルサイト運営会社事例紹介)。

【PRのネタ作り】

  • 新商品・新サービス発表
  • 地域イベント参加・協賛
  • 従業員の挑戦(資格取得・受賞等)
  • 記念日(創業〇周年、来店〇万人達成等)
  • 地域課題への取り組み

【無料配信先リスト】

  • 地域紙の「読者投稿欄」
  • 商工会議所の会報
  • 自治体の広報誌
  • 地域ポータルサイトの事業者情報

【記者との関係づくり】

  • 年賀状・季節の挨拶
  • プレスリリースは定期的に送る(月1回目安)
  • 取材協力は積極的に(次の機会につながる)

SNS活用とあわせて展開する方法はブランドストーリーはSNSでなぜ伸びない?5大プラットフォーム攻略と6つの秘策をご覧ください。

工夫5 口コミを仕組み化

口コミは偶然ではなく、設計できるものです。

Ruler Analytics(2025)の業界集計では、紹介(referral)チャネルの平均コンバージョン率は約2.9%と報告されています(全14業種平均)。チャネル別ではDirectやPaidがやや高く、Socialは低めという傾向が見られます(参考:Ruler Analytics|2025|Average Conversion Rate by Industry and Marketing Source 2025)。

【仕組み化の4要素】

  • 紹介カード:名刺サイズで「ご紹介特典」を明記
  • 二者特典:紹介者・被紹介者の双方にメリット
  • レビュー導線:購入後のフォローメールに記載
  • 返信設計:全レビューに24時間以内に返信

【レビュー返信テンプレート】

  • ポジティブ:感謝→共感→再来店誘導
  • ネガティブ:謝罪→改善策→誠意

assist-centering.jp(2025)では、ポジティブ/ネガティブ各ケース別に具体的な返信テンプレートが多数提示されており、感謝・共感・行動宣言を含む三段構成が推奨されています(参考:assist-centering.jp|2025|Googleレビュー返信テンプレート集)。

【簡易KPI】
レビュー件数(月次)
紹介率(新規顧客のうち紹介経由の割合)
来店比率(レビュー投稿者の再来店率)

netshop-soken(2025)の記事では、「ポジティブなレビューが多い商品は、売上が約18%〜30%増加することもあります」との記載がありますが、算出根拠は明示されていません(業界参考値)(参考:netshop-soken|2025|楽天市場のレビューと売上影響事例)。

深掘りコラム:ブランドストーリーの『燃料切れ』を防ぐ3つの習慣
ブランドストーリーの最大の敵、それは「ネタ切れ」と「語り疲れ」です。素晴らしい物語を作っても、発信が続かなければ意味がありません。そうならないために、日々の業務に「物語の自動生成装置」を組み込みましょう。

  • 週次ミーティングで「今週のありがとう」を共有する:
    お客様からの感謝の言葉や、社員同士の助け合いエピソードを収集する場を作ります。これが最高のストーリーの種になります。
  • お客様を「共同制作者」にする:
    新商品のモニターや改善フィードバックをお願いし、その過程をドキュメンタリーとして発信するのです。お客様は単なる受け手から、物語の登場人物へと変わります。
  • 「失敗ノート」をつける:
    成功談より、実は失敗から学んだことの方が人の心を打ちます。「こんな失敗もしたけど、こう乗り越えた」という正直な物語こそ、人間味という最強の武器になるのです。

【章末まとめ】低予算で実現する5つの工夫:

  • スマホ1台で撮影・編集・投稿
  • 社長が自ら週1ブログ/月1動画
  • UGC・レビューでお客様を巻き込む
  • 地域メディアの無料枠を活用
  • 口コミを仕組み化(紹介カード・レビュー返信)

これらを組み合わせることで、予算ゼロでも物語を広げられます。
数値化の最初の一歩については、ブランドストーリー、効果不明のままでいい?予算承認率65%UP!35年のプロが教える数値化戦略で詳しく解説しています。

第5章:中小企業の成功事例3選

理論と方法論だけでは、イメージが湧きにくいもの。ここでは実在の中小企業3社の事例を紹介します。
(※本章で紹介する事例は、一般に公開されている情報に基づいた分析であり、特定の企業との提携関係を示すものではありません。)

事例1:石鹸百貨(EC/合成洗剤に頼らない暮らし)

【企業概要】

石鹸百貨は、「合成洗剤を使わない暮らし」を提案するオンラインショップです。

【物語の核】

  • 創業原体験:創業者が化学物質過敏症を経験し、「肌と環境に優しい石鹸」の価値を実感
  • 価値の約束:「安心して使える石鹸製品」と「使い方の知識」をセットで提供
  • 顧客教育:ブログ・動画で石鹸の使い方を丁寧に解説
  • コミュニティ運営:顧客同士が情報交換できる掲示板を設置

【実務視点での分析】
ブランディング理論では、価値の約束×顧客教育が重要とされています。石鹸百貨は商品を売るだけでなく、「石鹸生活の始め方」という教育コンテンツを充実させることで、顧客の不安を解消し、リピーターを増やしています。

これは実務的に見ても、FAQ・使い方ガイド・トラブルシューティングといった情報提供が、顧客満足度とLTV(顧客生涯価値)を高める好例です。

詳しい事例研究はブランドストーリー事例、作り方の基本は「響かない」悩みを解決!ブランドストーリーの作り方【19年プロの5ステップとワークシート】をご覧ください。

事例2:坂ノ途中(有機野菜EC)

【企業概要】

坂ノ途中は、「100年先もつづく農業」をミッションに掲げる有機野菜の宅配サービスです。

【物語の核】

  • ミッション:「100年先もつづく農業」という長期ビジョン
  • 生産者ストーリー:新規就農者を支援し、生産者の顔と想いを紹介
  • 透明性:野菜の産地・生産者・栽培方法を詳細に公開
  • コミュニティ:会員向けイベント・農園訪問ツアーを開催

【実務視点での分析】
体験設計(ブランドエクスペリエンス)と物語を組み合わせた好例です。接点ごとに一貫した物語を展開しています:

  • Webサイト:生産者インタビュー
  • 商品パッケージ:生産者の名前・メッセージ
  • 会員向けメール:農園の様子・季節の野菜情報
  • イベント:生産者との直接交流

これは実務的に見ても、オンライン(Web/SNS/メール)とオフライン(イベント/商品)を統合した優れたIMC(統合コミュニケーション)事例です。
坂ノ途中は、ミッションに基づいた事業展開で成長を続けています。

事例3:藤野電力(地域エネルギー)

【企業概要】

藤野電力は、神奈川県相模原市藤野地区で、市民参加型の太陽光発電を推進する団体です。

【物語の核】

  • 参加型:ミニ太陽光発電システムの組立ワークショップを開催
  • 楽しさ:「エネルギーを自分で作る楽しさ」を体験してもらう
  • 地域密着:地域住民が主体となって運営
  • 可視化:市民発電所の発電量をWebで公開

【実務視点での分析】
藤野電力のウェブサイトでは、太陽光発電の組立ワークショップの開催案内が複数確認できます。サイト上には「市民発電所」に関するコンテンツや、移動型発電システムの開発に関するページも掲載されています(参考:藤野電力|2025|藤野電力公式サイト)。
この事例は、参加型体験×物語の好例です。ワークショップという「体験の場」が、物語を生み出す源泉になっています。参加者は「自分で発電システムを作った」という達成感と、「地域エネルギーの一員」という所属感を得られます。

実務的に見ると、体験型イベント→SNS投稿→口コミ拡散という流れが設計されており、低予算でも効果的なマーケティングサイクルを回しています。

【倫理配慮】
各事例とも、公開情報を基に分析しています。個人特定を避けるため、詳細な売上・会員数等の未検証数値は記載していません。写真・動画を使用する際は、必ず企業の許可を取得してください。

【章末まとめ】3つの事例に共通するポイント:

  • 明確なミッション:「なぜやるのか」が明確
  • 顧客教育:商品だけでなく知識も提供
  • 透明性:プロセス・背景を隠さない
  • コミュニティ:顧客同士のつながりを作る
  • 体験設計:接点ごとに一貫した物語

これらは予算規模に関わらず、設計次第で実現可能です。
企業理念と物語の結びつきは誰も読まない企業理念を「腹落ち」させる5ステップ|プロが教えるストーリー化で社内浸透
作り方の基本は「響かない」悩みを解決!ブランドストーリーの作り方【19年プロの5ステップとワークシート】をご覧ください。

付録:自社ブランドストーリー強度診断&30日で始める運用プラン

物語を発信したら、次は効果を測ることが大切です。ここでは、中小企業でも実践できる簡易KPIと30日運用プラン、そして自社のストーリー強度を測るチェックリストを紹介します。

自社ブランドストーリー強度診断チェックリスト

以下の項目について、自社の現状をチェックしてみましょう。各項目が当てはまる度合いで点数をつけ、合計点で自社のブランドストーリーの強みと弱みを可視化できます。

【診断項目】

  • 経営者の顔
    • □ 創業者の顔と名前を公開し、定期的に発信している (1点)
    • □ 経営者の人柄や創業の想いを語るコンテンツがある (1点)
    • □ お客様が経営者に直接メッセージを送れる機会がある (1点)
  • 顧客との距離
    • □ お客様の「利用前後の変化」を3つ以上、具体的に語れる (1点)
    • □ お客様の声を定期的に収集し、事業改善に活かしている (1点)
    • □ お客様との個別エピソードを社内で共有している (1点)
  • 地域との結びつき
    • □ 過去1年間に、地域イベントへの参加や貢献活動を行った (1点)
    • □ 地元企業や地域住民との取引・連携がある (1点)
    • □ 地域名と業種名を組み合わせた検索(ローカルSEO)を意識している (1点)
  • 柔軟性・スピード
    • □ 失敗談や方針転換のエピソードを社内で共有している (1点)
    • □ お客様の声を受けて、サービスや商品を迅速に改善した経験がある (1点)
    • □ 大規模な稟議なしに、新しい施策を試せる体制がある (1点)
  • 応援したくなる物語
    • □ 「応援したい」という理由で購入してくれた顧客がいる (1点)
    • □ クラウドファンディングなど、共感を呼ぶ資金調達の経験がある (1点)
    • □ 困難を乗り越えた「挑戦の物語」を語ることができる (1点)
  • 発信体制
    • □ スマホ1台で、動画や写真の撮影・編集・投稿ができる (1点)
    • □ 社長が週に1回以上、SNSやブログで個人的な発信をしている (1点)
    • □ お客様にUGC(ユーザー生成コンテンツ)を促す仕組みがある (1点)
    • □ 地域メディアへの情報提供や関係構築を定期的に行っている (1点)
    • □ 口コミを仕組み化する(紹介カード、レビュー返信など)取り組みがある (1点)

【診断結果】合計スコアに応じて、自社のブランドストーリーの特性が見えてきます。

  • 15点以上: あなたの会社はすでに強力なブランドストーリーの基盤を持っています!特に点数の高い項目をさらに強化し、積極的に発信していきましょう。
  • 10〜14点: 良い基盤ができています。点数の低い項目に注力することで、さらにストーリーの魅力を高められます。
  • 5〜9点: まだまだ伸びしろがあります!まずは点数の高い項目から物語を掘り下げ、発信を始めてみましょう。
  • 4点以下: 心配ありません。本記事の5ステップと3つのストーリー型を参考に、まずは一つずつ強みを見つけることから始めましょう。

【次へのアクション例】
経営者の顔が強い場合:
「経営者奮闘記型」のストーリーを強化し、Webサイトの「代表挨拶」ページやSNSで積極的に発信しましょう。
顧客との距離が強い場合:
「顧客変容型」のストーリーを構築し、お客様のBefore→Afterを具体的な数字と声で伝えましょう。
地域との結びつきが強い場合:
「地域貢献型」のストーリーを軸に、地域イベントへの参加や地域メディア活用を強化しましょう。

中小企業向け簡易KPIセット

中小企業向け簡易KPIと30日スタート運用プランのマップ

ブランディング理論では、成果を見える指標(数値化可能)と見えない指標(質的評価)経済的成果(売上等)と消費者行動(認知・好意等)の2軸4象限で整理することが推奨されています。
これを中小企業向けに簡略化すると、次の5つのKPIが有効です:

KPI項目 目標例 測定方法 改善策
レビュー件数 月3件以上 Googleビジネスプロフィール, ECサイト レビュー依頼メールの送付、店頭でのQRコード案内
紹介数 新規顧客の10% 初回アンケート, ヒアリング 紹介カードの配布、紹介者・被紹介者への特典
投稿反応率 「いいね」5件以上 各SNSのインサイト機能 投稿時間の最適化、質問やクイズ形式の投稿
問い合わせ数 月5件以上 Webフォーム, 電話記録, SNSのDM CTAボタンの改善、フォーム入力項目の削減
再来店率 30%以上 POSデータ, 顧客台帳, 会員カード 来店促進クーポンの発行、サンクスメールの送付
出典:ブランド塾編集部作成。紹介チャネルの平均的な効果については Ruler Analytics (2025) のデータを参照。

30日スタート運用プラン

【Week 1:基盤づくり】

  • Day 1-2:経営者10問に回答(録音)
  • Day 3-4:顧客アンケート作成・送信
  • Day 5-7:Webサイト「私たちについて」ページ更新

【Week 2:発信開始】

  • Day 8-9:ブログ記事1本執筆(創業ストーリー)
  • Day 10-11:SNS投稿3本(日常・商品・想い)
  • Day 12-14:Googleビジネスプロフィール投稿2本

【Week 3:巻き込み】

  • Day 15-16:顧客アンケート回答整理
  • Day 17-18:社員インタビュー実施(3名)
  • Day 19-21:UGC促進ハッシュタグ設定・投稿

【Week 4:効果測定】

  • Day 22-23:動画撮影・編集(3分程度)
  • Day 24-25:地域イベント参加・レポート投稿
  • Day 26-28:KPI測定・振り返り
  • Day 29-30:来月の計画策定

KPI測定の実践例

【測定タイミング】

  • 毎週:投稿反応率
  • 毎月:レビュー件数、問い合わせ数、来店数
  • 四半期:紹介率、再来店率

【記録方法】

  • Excelまたはスプレッドシートで簡易管理
  • テンプレート:日付|KPI項目|実績|目標|達成率|メモ

【改善サイクル】

  • 測定:数値を記録
  • 分析:何が効いたか/効かなかったか
  • 仮説:なぜそうなったか
  • 実行:次の施策を試す

注意事項

【無理のないペースで】

  • 最初から完璧を目指さない
  • 週3投稿が難しければ週1からスタート
  • 継続が最優先

【数値に一喜一憂しない】

  • 短期的な変動は自然なこと
  • 3ヶ月〜半年の長期トレンドで評価
  • 質(内容の深さ)も重視

【章末まとめ】簡易KPI×運用プランのポイント:

  • 5つのKPI(レビュー・紹介・反応・問い合わせ・来店)で測る
  • 30日計画で無理なくスタート
  • 週次・月次・四半期で振り返る
  • 継続と改善のサイクルを回す

詳しい効果測定の方法は、ブランドストーリー、効果不明のままでいい?予算承認率65%UP!35年のプロが教える数値化戦略で、ROI(投資対効果)については「ストーリーブランディングのROI(記事No.46)」でそれぞれ解説しています。

まとめ

ここまで、中小企業のブランドストーリーの作り方を見てきました。最後に、要点を整理しましょう。

【中小企業が強い5つの理由】

  • 経営者の顔が見える(信頼の源泉)
  • 顧客との距離が近い(具体的なBefore→After)
  • 地域との結びつき(ローカルSEOとの相性)
  • 柔軟性・スピード(試行錯誤の物語)
  • 応援したくなる(アンダードッグ効果)

【作成5ステップ】

  • 経営者の想いを言語化(10問インタビュー)
  • 顧客の声を収集(アンケート・深掘り)
  • 地域との関わりを可視化(雇用・取引・イベント)
  • 従業員のストーリーを集める(3〜5名インタビュー)
  • 低予算で発信する(Web/GBP/SNS/PR/動画)

【最適な3つのストーリー型】

  • 経営者奮闘記型(創業ドラマを語る)
  • 顧客変容型(Before→Afterで証明)
  • 地域貢献型(地域課題の解決を物語に)

【低予算で効く5つの工夫】

  • スマホ1台で始める(無料アプリ活用)
  • 社長が自ら発信(週1ブログ/月1動画)
  • UGC・レビューでお客様を巻き込む
  • 地域メディアを活用(無料枠の活用)
  • 口コミを仕組み化(紹介カード・返信設計)

【30日運用プラン】

  • Week 1:基盤づくり(10問回答・アンケート)
  • Week 2:発信開始(ブログ・SNS・GBP)
  • Week 3:巻き込み(社員インタビュー・UGC)
  • Week 4:効果測定(KPI確認・振り返り)

【今日から始める3つのアクション】

  • 今日:経営者10問に答える(録音しながら30分)
  • 今週:3分動画を撮る(スマホでOK)
  • 今月:SNS/GBPに初投稿(写真1枚+想い100字)

【次に読むべき記事】

【最後に】
「小さいから無理」ではなく、「小さいからこそできる」ことがあります。
大企業には真似できない、あなたの会社だけの物語。それは、経営者の想い、お客様との対話、地域とのつながり、従業員の笑顔の中に、すでに存在しています。
今日から、その物語を言葉にして、世界に届けていきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. 大企業の事例しか見つからず、参考にできません。中小企業向けの事例はどこで見つかりますか?

A. 確かに、書籍やWebで紹介される事例は大企業が多いですね。でも、中小企業の事例は意外と身近にあります。

【見つけ方】

  • 地域紙・地域ポータルサイト:地元企業の取り組みが紹介されている
  • 商工会議所の会報:会員企業の成功事例が掲載されることが多い
  • SNS検索:「#地域名 #業種名」で検索すると、同業者の発信が見つかる
  • 業界団体のWebサイト:中小企業の事例集を公開している団体もある
  • クラウドファンディングサイト:CAMPFIRE、Makuake等で中小企業のストーリーが多数

【代替アプローチ】
大企業事例を「中小企業版に翻訳」する方法もあります。
例えば
・大企業の「全国キャンペーン」→ 中小企業の「地域限定イベント」
・大企業の「テレビCM」→ 中小企業の「SNS動画」
・大企業の「専門部署」→ 中小企業の「社長自ら」

エッセンス(本質)は同じなので、規模と手段を変えれば応用できます。

Q2. ストーリーを作ったけど、数字で成果が出ません。Before→Afterをどう示せばいいですか?

A. 数字が全てではありませんが、説得力を高めるために工夫できることがあります。

【数字化のヒント】

  • 時間:「作業時間が〇時間から〇分に短縮」
  • コスト:「月額費用が〇万円から〇千円に」
  • 満足度:「アンケートで10点満点中平均〇点」
  • 頻度:「月〇回だった利用が週〇回に増加」
  • 継続率:「〇%のお客様が1年以上継続」

【定性的な変化も大切】
数字にできない変化も、言葉で具体的に描写しましょう。
「表情が明るくなった」
「家族との時間が増えた」
「不安が解消された」

お客様の生の声(証言)を引用することで、数字以上の説得力が生まれます。
【数字が出るまでの時間軸】ブランドストーリーの効果は、短期的には見えにくいものです。最低3ヶ月〜半年は継続して、トレンドを見ましょう。焦らず、小さな変化を積み重ねることが大切です。
効果測定の詳細は、ブランドストーリー、効果不明のままでいい?予算承認率65%UP!35年のプロが教える数値化戦略で詳しく解説しています。

Q3. 写真や動画の権利関係が心配です。お客様の顔を出しても大丈夫ですか?

A. 権利関係は慎重に扱うべき重要な問題です。基本ルールを守れば安心です。

【基本ルール】

  • 事前許可は必須:口頭ではなく、書面(メール可)で許可を取る
  • 用途を明示:「Webサイト・SNS・広告等で使用」と具体的に伝える
  • 確認の機会:可能なら、公開前に本人に見せて確認してもらう
  • 削除対応:「後で削除してほしい」と言われたら速やかに対応

【許可取得の文面例】

〇〇様

いつもありがとうございます。
本日撮影させていただいた写真・動画を、
当社のWebサイト・SNS・広告等で使用させていただいてもよろしいでしょうか。

ご許可いただける場合は、
このメールに「許可します」とご返信いただけると幸いです。

何卒よろしくお願いいたします。

【顔を出さない工夫】
・後ろ姿・手元のクローズアップ
・モザイク・ぼかし処理
・イラスト化
・音声のみ(ラジオ形式)

【特に注意が必要なケース】

  • 未成年者:保護者の許可が必須
  • 公人(政治家・芸能人等):パブリシティ権に注意
  • 他社商品が写り込む:ブランドロゴ等にモザイク

権利関係は「知らなかった」では済まされません。不安な場合は、弁護士や専門家に相談しましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

当編集部は、世界的エンタメブランドでの実績を持つブランディング専門家の知見をもとに、実践的なブランドマネジメント情報を発信しています。

編集方針:
セサミストリート、ディズニー、ウルトラマンなど、数々の世界的ブランドを手がけた35年の業界経験から導き出された理論と実践ノウハウを、検索ユーザーの課題解決に役立つ形で体系化。最新のブランディング手法を分かりやすく解説します。

目次