感情マーケティング事例15選|世界的大手が実践する感情訴求と5つの成功法則

「機能では差別化できない」
「広告が刺さらない」
「SNSのエンゲージメントが伸びない」
—多くのマーケターがこうした課題に直面しています。

実は、これらの課題には共通の解決策があります。それが「感情マーケティング」です。

当編集部では、世界的エンタメ企業で35年間にわたりブランド戦略の最前線で活躍してきた専門家の知見をもとに、感情マーケティングの実践方法を体系的に分析してきました。その中で明らかになったのは、成功企業が必ず「狙う感情」を明確に定義し、それを一貫して訴求しているという事実です。

業界機関IPAの研究によれば、感情訴求は理性訴求よりも長期的なブランド効果に優れることが示されています(参考:IPA「The link between creativity and effectiveness」|2026|Binet & Fieldの研究として、感情訴求が長期的なブランド構築に強く寄与することを示唆)。しかし「どの感情を、どう設計すれば再現できるのか」が最大の難題でした。

本記事では、世界的ブランド5社、D2C・スタートアップ5社、日本企業5社の計15事例を「ターゲット感情/感情トリガー/展開方法/成果/転用ポイント」の5つの観点でテンプレ的に分解して解説します。最後に「成功の5つの共通法則」として抽象化することで、読者が自社に持ち帰れる形に整理しました。

この記事を読むことで、以下が得られます:

  • 15事例から学ぶ、感情設計の具体的なパターン
  • 自社に適用できる「感情ターゲット→アクション導線」の設計方法
  • 予算規模別に使える感情訴求の実践テクニック

それでは、世界的ブランドの事例から見ていきましょう。感情マーケティングの全体像をさらに深く理解したい方は、感情マーケティング完全ガイドをご覧ください。基礎から学びたい方は、感情マーケティングとは?基本から徹底解説もおすすめです。

目次

第1章:世界的ブランドの感情マーケティング5事例

この章で取り上げる世界的ブランド5社の戦略の要点を、まずはこちらの表でご確認ください。

企業名主なターゲット感情感情トリガーの要点転用ポイント
P&G感謝・愛情・誇り母親の献身的な日常シーン普遍感情 × イベント連動の資産化
Nike勇気・(不正義への)怒り信念を貫く自己犠牲の物語価値観が一致する層へのリスクテイク
Always共感・自己効力感「女の子らしさ」の再定義社会課題とブランド価値の整合
Google愛・懐旧(ノスタルジア)実話ベースの愛する人との思い出製品機能を「感情的価値」で訴求
Coca-Cola喜び・所属感自分の名前の発見と共有体験製品自体を感情体験の装置に設計
本記事の第1章の分析に基づき編集部作成。

それでは、各事例を詳しく見ていきましょう。

1-1 P&G「Thank You, Mom」:母への感謝で普遍的な絆を訴求

概要

P&Gは2012年ロンドン五輪の約100日前から「Thank You, Mom」キャンペーンをグローバルで展開しました。オリンピック選手の母親たちの献身的なサポートを描いたこのシリーズは、五輪を通じて継続的に実施され、世界中の親子の絆を称えるブランドメッセージとなりました(参考:LBB Online「Procter & Gamble Launches Global ‘Thank You Mom’ Campaign」|2026|2012年ロンドン五輪の約100日前にグローバルでキャンペーンを開始したと報道)。

感情戦略の分析

ターゲット感情:感謝・愛情・誇り
このキャンペーンが狙ったのは、親が子どもを支える日常の献身への感謝という普遍的な感情です。五輪という大舞台の裏には必ず家族の支えがあるという物語構造により、視聴者は自身の家族関係を重ね合わせて共感できる設計になっています。

感情トリガー:献身シーン・抱擁の瞬間
広告では、早朝の送迎、試合での応援、失敗後の慰め、そして成功の瞬間を分かち合う抱擁といった具体的なシーンが描かれました。これらは誰もが経験しうる「日常の小さな支え」を可視化することで、感情を喚起しています。

展開方法

テレビ、オンライン(YouTube等)、ソーシャルメディア、店頭、専用アプリなど多様なチャネルを横断して展開されました参考:LBB Online「Procter & Gamble Launches Global ‘Thank You Mom’ Campaign」|2026|オンライン、ソーシャルメディア、TV、プリント、店頭、専用アプリをチャネルとして展開)(参考:Wieden+Kennedy「P&G: Thank You, Mom」|2026|。タグライン「P&G, Proud sponsor of Moms」を一貫して使用し、ブランドメッセージの統一性を保ちました。

さらに、P&Gは青少年スポーツ支援のため約500万ドルをコミットするなど、メッセージを行動で裏付けました参考:LBB Online「Procter & Gamble Launches Global ‘Thank You Mom’ Campaign」|2026|P&Gによる$5Mの寄付コミットメント

成果

複数の出典によれば、キャンペーン期間中に以下の成果を記録しました:

  • 約5億ドル($500M)の追加売上
  • 約760億回(76 billion)のメディアインプレッション
  • 約7,400万回(74 million)以上のオンライン動画再生
  • 約3.7億回(370 million)以上のTwitterインタラクション

参考:Marketing Maverick「Thank You, Mom – A Marketing Campaign by P&G」|2026|約$500Mの追加売上、約74Mのオンライン動画再生を記録)(参考:Wieden+Kennedy「P&G: Thank You, Mom」|2026|約$500Mの追加売上、76Bメディアインプレッション、>74M動画再生、>370M Twitterインタラクション
これらの数値は代理店発表や業界記事によるものですが、キャンペーンの大規模な成功を示す指標として広く認識されています。

学べること

P&Gの事例から学べる転用ポイントは以下の通りです:普遍感情×イベント連動×継続の資産化
五輪という大型イベントに「母への感謝」という普遍的な感情テーマを連動させ、さらに複数年にわたり継続することで、一過性のキャンペーンではなく長期的なブランド資産として蓄積しました。中小企業でも、地域イベントや季節行事に自社のコアバリューを連動させることで、同様の効果を生み出せます。大切なのは「誰もが共感できる感情」を選び、それを継続的に訴求することです。

関連記事:感情訴求広告のクリエイティブ設計については、今後の記事「感情に訴える広告の作り方(記事No.54)」で詳しく解説予定です。

1-2 Nike「Dream Crazy」:勇気と正義感で価値観を明示

概要

2018年、NikeはNFL選手Colin Kaepernickを起用した「Dream Crazy」キャンペーンを展開しました。人種差別に対する抗議として国歌斉唱時に片膝をつく行為により物議を醸していた同選手を、Nikeは「正しいと信じることのために全てを犠牲にしろ(Believe in something. Even if it means sacrificing everything)」というメッセージとともに起用しました。

感情戦略の分析

ターゲット感情:勇気・怒り(不正義への)
Nikeが狙ったのは、社会的不正義に対して声を上げる勇気と、現状に対する建設的な怒りという感情です。このキャンペーンは単なる製品広告ではなく、ブランドの価値観そのものを表明する姿勢を示しました。

感情トリガー:自己犠牲のメッセージ
Kaepernickが自身のキャリアを犠牲にしてまで信念を貫いたストーリーが、視聴者に「自分も勇気を持って行動すべきか」という問いを投げかけました。この自己犠牲の物語構造が、強い感情的インパクトを生み出しています。

展開方法

テレビ、SNS(特にTwitter)、デジタル広告、プロダクトとの連動など、統合的なマーケティング施策として実施されました。SNS上では賛否両論の激しい議論が巻き起こり、ボイコット呼びかけなども見られました参考:Marketing Dive「Nike scores 31% sales spike following launch of Kaepernick campaign」|2026|SNS上の否定的反応やボイコット呼びかけなどの報道も含む

成果

  • Edison Trendsの分析を引用するMarketing Diveによれば、Labor Day週末(Sunday~Tuesday)におけるNikeの米国オンライン売上は31%増加しました。同期間は2017年比で17%増との注記もあります参考:Marketing Dive「Nike scores 31% sales spike following launch of Kaepernick campaign」|2026|Edison TrendsによるLabor Day週末の米国オンライン売上31%増を報告
  • さらに、Contagiousはケーススタディ映像を根拠として、同キャンペーンがearned media約163百万ドル、ブランド価値を約60億ドル上乗せし、売上を31%押し上げたと報じています参考:Contagious / Cannes Lions「Creative Effectiveness Winners 2021」|2026|キャンペーンがearned media約$163M、ブランド価値を約$6B上乗せし、売上を31%押し上げたことを明記。ただし、算出手法は記事中で詳細説明されていないため、厳密な再現には原資料の確認が必要です。

学べること

Nikeの事例から学べる最大の教訓は「リスクテイクは価値観一致が前提」という点です。
発表直後は株価下落やボイコット運動などの逆風に見舞われましたが、Nikeのコアターゲット層(若年層・都市部・進歩的価値観を持つ消費者)とブランドの価値観が一致していたため、短期的な反発を乗り越えて長期的なブランド強化につながりました。
中小企業が感情マーケティングで社会的メッセージを発信する際は、自社の顧客層の価値観を深く理解し、その層が共感できるテーマを選ぶことが重要です。万人受けを狙うのではなく、「誰に嫌われても構わないか」を明確にすることが、かえって強い支持を生み出します。

1-3 Always「#LikeAGirl」:エンパワーメントによる自己効力感の喚起

概要

生理用品ブランドAlwaysは2014年、「#LikeAGirl」キャンペーンを開始しました。「女の子みたいに(Like a girl)」という表現がネガティブな意味で使われていることに着目し、その認識を変えることを目指した社会運動的キャンペーンです。

感情戦略の分析

ターゲット感情:共感・自己効力感
思春期の少女たちが直面するステレオタイプと自信喪失という社会課題に対し、「女の子らしさは弱さではない」という強いメッセージで自己効力感を喚起しました。

感情トリガー:大人と少女の対比
キャンペーン動画では、大人に「女の子みたいに走って」と指示すると誇張された弱々しい動きをする一方、思春期前の少女たちは全力で走る姿が映し出されます。この対比が、社会的刷り込みの問題を視覚的に提示し、気づきを促しました。

展開方法

動画コンテンツを中心に、SNSでの拡散、教育プログラムの実施など、多面的に展開されました。特に#LikeAGirlというハッシュタグを通じてユーザー参加型の運動として広がりました。

成果

  • 業界記事では、キャンペーン開始以降の合計視聴数を85百万超と報告しています。ContagiousはP&Gの調査によって16-24歳の約76%が動画により認識を変えたと報告していますが、一次調査の母数・実施時期の確認が取れれば、より確度の高い提示が可能です参考:Contagious 「Insight & Strategy: #LikeAGirl」|2026|キャンペーン開始以降の合計視聴数が85M超と記載、P&G調査の引用として、16-24歳の女性の76%が動画で認識が変わったと報告)。
  • MarTechは、Alwaysのスポット「#LikeAGirl – Unstoppable」が2015年7月に約30.4百万再生を記録し、同月のYouTube広告ランキングで1位になったと報告しています(参考:MarTech 「Top 10 YouTube Video Ads In July: Always #LikeAGirl Ranks No. 1」|2026|Always「#LikeAGirl – Unstoppable」が2015年7月に約30.4M再生を記録し、YouTubeの月間広告ランキングで1位になったと報告)。

学べること

Alwaysの事例が示すのは「社会課題×ブランド価値の整合」の重要性です。
生理用品という製品カテゴリーと、思春期の少女のエンパワーメントという社会課題は自然に結びつきます。この整合性があるからこそ、「売るための社会貢献」という冷笑的な見方を避け、真摯なブランド姿勢として受け入れられました。
中小企業が社会課題に取り組む際は、自社の製品・サービスと課題が自然に結びつくテーマを選ぶことが重要です。無理に流行の社会課題に便乗するのではなく、自社のコアバリューと真に関連する課題を見つけることで、真正性のあるメッセージを発信できます。

1-4 Google「Loretta」:静かな感動で技術を人間化

概要

2020年のスーパーボウルで放映されたGoogle「Loretta」は、高齢男性が亡き妻Lorettaの思い出をGoogle Assistantに保存してもらう90秒のCMです。実話をベースにした穏やかなナレーションと写真が、静かな感動を生み出しました。

感情戦略の分析

ターゲット感情:愛・懐旧(ノスタルジア)
失われつつある記憶を技術が支えるという設定により、「愛する人を忘れたくない」という普遍的な感情に訴えかけました。

感情トリガー:穏やかなナレーションと実写真
広告の制作背景として、Google Creative Labのチームによるもので、クリエイティブディレクターJesse Jurigaらが関与しました。着想はチーム内のデザイナーが祖父の声を録音したことに遡り、その録音が最終的にナレーションに使用されました参考:Michigan State University Alumni News「Alumnus brings millions to tears as creative director of Google’s Loretta ad」|2026|制作の発端はGoogleデザイナーが祖父の声を録音したこと)(参考:Adweek「Google Returns to the Super Bowl With Another Love Story」|2026|インハウス制作、デザイナーの祖父の話に一部由来、祖父がナレーションを務めた
この実話ベースという背景が、広告に真正性と温かみを与えています。

展開方法

スーパーボウルというマス媒体での放映と、YouTube、SNSでの拡散を組み合わせました。報道によれば、YouTubeでは放映当日の夜までに約10.4百万回再生、2020年9月時点で約62百万回再生に達したとされます参考:TEGNA「How Google Won the 2020 Super Bowl with its Loretta Ad」|2026|YouTube再生数放映当日夜10.4M、2020年9月時点62M)。

成果

  • 一部報道は「スーパーボウル視聴者の49%が感情的反応を示した」と伝えていますが、当該統計の原出典・方法論は示されておらず、参考情報として注記が必要です参考:TEGNA「How Google Won the 2020 Super Bowl with its Loretta Ad」|2026|スーパーボウル視聴者の49%が感情的反応を示したと記載するが、原出典・調査手法は未明示
  • 広告は多くのメディアで高い感情的反響を呼んだと報じられていますが、ブランドリフトや購買意図への定量的影響を示す独立調査データは公開・検証可能な形では確認できていません。

学べること

Googleの事例が教えるのは「テックも静かな感動で勝てる」という事実です。
テクノロジー企業の広告は機能説明に偏りがちですが、Lorettaは製品機能をほとんど説明せず、「愛する人との思い出を守る」という情緒的価値だけを訴求しました。この静かで控えめなアプローチが、かえって深い印象を残しています。
BtoBテック企業や機能重視の製品を扱う中小企業も、製品が「人の人生にどう寄り添うか」という視点で感情訴求を設計できます。スペックの羅列ではなく、製品がもたらす心理的・感情的価値に焦点を当てることで、差別化された訴求が可能になります。

1-5 Coca-Cola「Share a Coke」:喜びの体験化で製品自体を感情トリガーに

概要

Coca-Colaは2011年にオーストラリアで開始した「Share a Coke」キャンペーンで、人気の名前をボトルに印字する施策を展開しました参考:Coca-Cola Australia公式「History of Coca-Cola in Australia」|2026|2011年にオーストラリアで「Share a Coke」を開始したこと、80か国以上への展開)(参考:Wikipedia「Share a Coke」|2026|2011年開始、デブランド手法、80か国以上への展開等の概説。この施策は80か国以上に展開され、製品パッケージそのものを感情体験の装置に変えました。

感情戦略の分析

ターゲット感情:喜び・所属感
自分の名前や大切な人の名前が印刷されたボトルを見つけたときの喜び、そしてそれを誰かと共有(Share)することで生まれるつながりの感覚を狙いました。

感情トリガー:自分の名前発見・贈与
「自分の名前」という個人的な要素が、大量生産品であるコーラを「自分だけの特別なもの」に変えます。さらに、名前入りボトルを誰かに贈るという行為自体が、感情的な体験となりました。

展開方法

製品パッケージの変更に加え、スーパーマーケットやイベント等でパーソナライゼーション・ポップアップ・キオスクが導入され、2025年版では約100拠点が稼働予定と報じられています参考:Campaign Brief「Coca-Cola relaunches famous Share a Coke campaign for a new generation」|2026|2025年版で約100のパーソナライズポップアップステーションが稼働予定。SNSでは#ShareaCokeのハッシュタグで大量のUGC(ユーザー生成コンテンツ)が投稿されました。

成果

  • 一部報告では米国で売上が約2%増加したとする記述がありますが、出典により計測方法や帰属が明確でないため、限定的に扱うべきです(参考:Nucleus Vision「Case Study: Share A Coke」|2026|米国売上 +2%と列挙するが、数値の出典・計測方法が明示されていない)(参考:Wikipedia「Share a Coke」|2026|「米国で売上がmore than 2%増」と記述するが、Wikipedia自体は二次情報源の総覧)。
  • Ogilvyの推定によると、オーストラリアではカテゴリ・シェアが約4%上昇し、若年層の消費が約7%増加したと報告されていますが(参考:Wikipedia「Share a Coke」|2026|Ogilvyの推定として、オーストラリアでカテゴリ・シェア約+4%、若年層消費約+7%と記載するが、一次資料の裏取りを推奨)、一次資料での裏取りが推奨されます。

学べること

Coca-Colaの事例は「製品自体を感情体験に設計」する可能性を示しています。
広告やSNSでいくら感情訴求しても、製品体験が無機質であれば効果は限定的です。Share a Cokeは製品そのものを「見つける喜び」「贈る喜び」「共有する楽しさ」という感情体験に変えることで、購買と感情訴求を一体化させました。
中小企業でも、パッケージやサービス体験そのものに感情的要素を組み込むことができます。例えば、顧客の名前を入れたサンクスカード、購入者限定のコミュニティ招待、季節ごとに変わるパッケージデザインなど、「製品を手にした瞬間」から感情体験が始まる設計を心がけましょう。

関連記事:製品体験とブランド感情の統合については、今後の記事「感情マーケティング戦略ガイド(記事No.55)」で詳しく解説予定です。

第2章:D2C・スタートアップの感情マーケティング5事例

この章で取り上げるD2C・スタートアップ5社の戦略の要点をまとめたのが、こちらの表です。

企業名主なターゲット感情感情トリガーの要点転用ポイント
Airbnb帰属・冒険ホストとゲストの実話コミュニティによる感情資産の蓄積
Dollar Shave Club笑い・解放創業者の「本音」トーク動画低予算でも「感情 × 拡散」は設計可能
Patagonia罪悪感 → 責任感「買うな」という逆説的メッセージ価値観の一貫性で深い共感を創出
Warby Parker喜び・善行「1本購入で1本寄付」の仕組み社会貢献を購買体験に統合・可視化
Glossier受容・連帯顧客の声を製品開発に反映参加型で「帰属意識」と「所有感」を強化
本記事の第2章の分析に基づき編集部作成。

それでは、各社のユニークなアプローチを見ていきましょう。

2-1 Airbnb「Belong Anywhere」:帰属意識で宿を再定義

概要

Airbnbはそのブランドミッションを「Belong Anywhere」とし、帰属(belonging)をブランドの中心に据えています参考:Airbnb: Developing ‘Belong Anywhere’ Branding Strategy(Further Group)|2026|「Belong Anywhere」がAirbnbのブランドミッションとして定義され、ブランド戦略でBelongingに焦点を当てている。単なる宿泊施設の提供ではなく、「どこに行っても居場所がある」という感情的価値を訴求しました。

感情戦略の分析

ターゲット感情:帰属・冒険
旅行者が感じる「よそ者」としての疎外感を、「どこでも自分の居場所」という帰属感に転換しました。同時に、新しい場所での冒険や発見というポジティブな興奮も喚起しています。

感情トリガー:ホストとゲストの実話
Airbnbは、ホストとゲストの実際のストーリーを積極的にコンテンツ化し、「人と人とのつながり」を可視化しました。担当者インタビューでは、コミュニティ重視の文化やVoC(Voice of the Customer)を活用した顧客対応、AI/ML投資などが運営施策として挙げられています参考:Execs In The Know「Creating a World Where Anyone Can Belong Anywhere」|2022|担当者インタビューでコミュニティ重視の文化やVoC活用、AI/ML投資について言及)。

展開方法

ウェブサイト、アプリ、ソーシャルメディア、メールマーケティング、オフライン体験など、統合的なブランド体験を提供しました。企業はホスト向けに影響を受けた人々への無償提供の手続きを案内し、ウェブの寄付ツールを通じてこれまでに160万ドル超を集めたと公表しています参考:Airbnb「Helping people ‘belong anywhere’ matters now more than ever」|2026|ウェブの寄付ツールを通じてこれまでに$1.6M超を集めたと明記

成果

  • 複数の業界記事は長期滞在の増加を示唆していますが、提示される具体比率は一次ソースでの確認が必要です参考:Rental Scale-Up「Is Live Anywhere the New Normal for Airbnb?」|2022|「Live Anywhere」戦略や長期滞在への注目に関する示唆
  • Airbnbの規模感として、220か国、400万ホスト、1億5000万ユーザーという数字が報じられていますが参考:THMG「10 Brand Storytelling Case Studies」|2026|Airbnbに関する規模感(220か国、4Mホスト、150Mユーザー)が記載されているが、出典は明示されていない、これらは事例紹介記事の記載であり、公式IRでの確認が望ましいでしょう。

学べること

Airbnbの事例が示すのは「コミュニティで感情資産を蓄積」する戦略です。
一般的な宿泊予約サイトは「部屋」を売りますが、Airbnbは「帰属感」という感情を売っています。この違いは、単発の取引ではなく、ホストとゲストのコミュニティを育てることで、長期的な感情資産(ブランドへの愛着)を蓄積できる点にあります。
中小企業でも、顧客を「買い手」ではなく「コミュニティのメンバー」として位置づけることで、同様の感情資産を構築できます。顧客同士が交流できる場(オンライン・オフライン)を提供し、彼らのストーリーを共有することで、強い帰属感が生まれます。

2-2 Dollar Shave Club:ユーモアと解放感で業界に挑戦

概要

Dollar Shave Clubは2012年、約4,500ドルという低予算で制作した動画を公開し、48時間で約12,000件の注文を獲得しました参考:Digital Toppers「Case Study: Dollar Shave Club」|2026|約$4,500の制作費、公開後48時間で12,000件以上の注文)(参考:Storytelling for Entrepreneurs「How a $4,500 Video Turned Into a Billion-Dollar Success Story」|2026|約$4,500の制作費、48時間で12,000注文)。創業者自らが出演したこのユーモラスな動画は、高価なカミソリ市場の常識を覆し、業界に風穴を開けました。

感情戦略の分析

ターゲット感情:笑い・解放
従来のカミソリ業界は、高性能・高価格を訴求する真面目な広告が主流でした。Dollar Shave Clubは、そうした「お堅い」業界常識に対し、ユーモアと反骨精神で解放感を与えました。

感情トリガー:低予算バイラル動画
創業者が倉庫を歩きながら「我々のブレードはf***ing greatだ」と語るシンプルな動画は、大企業の洗練された広告とは真逆のアプローチです。この「荒削りさ」「本音感」が、視聴者に親近感と信頼感を与えました。

展開方法

YouTube動画を起点に、ソーシャルメディアでの爆発的な拡散を実現。その後、サブスクリプションモデルと定期的なユーモラスなコンテンツ配信で顧客を維持しました。

成果

学べること

Dollar Shave Clubの最大の教訓は「低予算でも感情×拡散は設計できる」という点です。
4,500ドルという予算は、大企業の広告費から見れば誤差の範囲です。しかし、ターゲット層(価格に敏感で、ユーモアを解する若年男性)の感情を的確に捉えたコンテンツは、予算の何千倍もの効果を生み出しました。
中小企業やスタートアップにとって重要なのは、予算の大小ではなく「狙う感情」と「ターゲット」の明確化です。大企業と同じ土俵で戦うのではなく、独自の感情訴求ポイントを見つけ、それを増幅させるチャネル(SNSなど)を活用することで、大きな成果が得られます。

関連記事:低予算で実施できる感情マーケティング施策については、今後の記事「中小企業のための感情マーケティング実践法(記事No.62)」で詳しく解説予定です。

2-3 Patagonia「Don’t Buy This Jacket」:逆説で責任感を喚起

概要

アウトドア衣料ブランドPatagoniaは2011年、ブラックフライデーに「このジャケットを買わないで(Don’t Buy This Jacket)」という挑発的な広告を出稿しました。過剰消費への警鐘と、環境保護への責任感を訴えるこの逆説的メッセージは、大きな注目を集めました。

感情戦略の分析

ターゲット感情:罪悪感→責任感
「買うな」と言われることで、消費者は自身の消費行動を振り返り、罪悪感を感じます。しかし同時に、Patagoniaが示す「修理して長く使う」「本当に必要なものだけ買う」という代替行動により、その罪悪感を環境保護への責任感に転換させました。

感情トリガー:理念と行動の一致
広告だけで「環境保護」を叫ぶブランドは多数ありますが、Patagoniaは修理プログラム、リサイクル素材の使用、環境団体への寄付など、一貫した行動で理念を裏付けています。この「言行一致」が、メッセージの真正性を高めています。

展開方法

新聞広告、ウェブサイト、店頭、ソーシャルメディアで展開。さらに、2016年のBlack Fridayにおいて、グローバル小売・オンライン売上の100%を草の根環境団体に寄付すると宣言し、実行しました参考:Green Money「Patagonia’s Record-breaking Black Friday Sales of $10 million all to Benefit the Planet」|2026|Patagoniaは2016年Black Fridayにおいて、グローバル小売・オンライン売上の100%を草の根環境団体へ寄付すると宣言)(参考:Business Chief「Meet the company: Patagonia proves purpose can be profitable」|2026|Black Fridayで「売上の100%を寄付」した事実に関する言及

成果

Patagoniaは2016年のBlack Fridayにおいて、同日のグローバル小売・オンライン売上の100%を草の根環境団体に寄付すると宣言し、当日は約1,000万ドル(US$10M)の売上を計上しました。同社の事前予想(約200万ドル)を約5倍上回る結果でした参考:Green Money「Patagonia’s Record-breaking Black Friday Sales of $10 million all to Benefit the Planet」|2026|約US$10Mの売上を計上し、同社の事前予想(US$2M)を約5倍上回ったと報じられている)(参考:Business Chief「Meet the company: Patagonia proves purpose can be profitable」|2026|記録的US$10Mの売上に関する言及

学べること

Patagoniaが教えるのは「価値観の一貫性が深い共感を生む」という原則です。
「買うな」という逆説的メッセージは、短期的には売上を減らすリスクがあります。しかし、環境保護という価値観に共鳴する顧客層にとっては、このメッセージこそがPatagoniaを選ぶ理由になります。
中小企業が感情マーケティングを実践する際、重要なのは「全員に好かれる」ことではなく、「特定の価値観を持つ層に深く共感される」ことです。自社の理念を明確にし、それに一貫した行動を取ることで、表面的な広告では得られない深い信頼と忠誠心を獲得できます。

【深掘りコラム】あえて「ネガティブ感情」を起点にする高度な感情設計とは?

多くのマーケターは「喜び」「感動」といったポジティブな感情を喚起することに注力します。しかし、Patagoniaの「罪悪感→責任感」やNikeの「不正義への怒り」のように、あえてネガティブな感情を起点とし、それをポジティブな行動へと転換させるアプローチは、極めて強力なエンゲージメントを生み出します。この手法の鍵は、顧客が既に潜在的に抱えている社会的な課題や個人的な葛藤(=ネガティブ感情)に光を当て、自社ブランドがその「解決策」や「より良い方向性」を提示するガイド役になることです。これは単なる問題提起ではなく、顧客をエンパワーメントする行為であり、深い共感とブランドへの信頼を構築します。ただし、炎上リスクも伴うため、法則2で述べた「ブランド価値との一致」と、顧客層の価値観理解が絶対条件となります。

2-4 Warby Parker:善行の喜びを購買体験に統合

概要

メガネのD2CブランドWarby Parkerは「Buy a Pair, Give a Pair」プログラムを展開し、1本購入するごとに発展途上国の人々に1本のメガネを寄付しています。Warby Parker公式発表によれば、2024年に2,000万本超の配布というマイルストーンを達成しました参考:Warby Parker「Buy a Pair, Give a Pair」|2026|2024年に「over 20 million pairs of glasses distributed」というマイルストーンを達成)。

感情戦略の分析

ターゲット感情:喜び・善行
メガネを購入するという個人的な喜びと、誰かを助けるという利他的な喜びを同時に提供しました。顧客は「自分のため」と「社会のため」を両立させることができます。

感情トリガー:Giveプログラム
抽象的な寄付ではなく「1本買えば1本寄付」という明確で分かりやすい仕組みが、顧客に具体的な貢献実感を与えます。

展開方法

ウェブサイト、店舗、ソーシャルメディア、メールマーケティングなど全チャネルでプログラムを訴求。さらに、Home Try-On(自宅試着)という革新的な顧客体験施策を組み合わせました。

業界記事はHome Try-Onを含む顧客体験施策と高いNPS(約83)を同一文脈で報告していますが、Home Try-On単独の因果関係を示す一次データは提示されていないため、「関連が示唆される」と表現するのが適切です参考:Causeartist「Warby Parker事例研究」|2026|Home Try-Onを含む顧客体験施策と高いNPS(約83)を同一文脈で報告しているが、Home Try-On単独の因果関係を示す一次データは提示されていない

成果

  • Warby Parkerの公表によれば、2024年時点で「over 20 million pairs of glasses distributed」という主要マイルストーンを達成しました。影響が「over 80 countries」に及んでいると記載されています参考:Warby Parker「Buy a Pair, Give a Pair」|2026|2024年に「over 20 million pairs of glasses distributed」、影響が「over 80 countries」に及んでいると記載
  • 2021年インパクトレポートでは「Over 10 million pairs have been distributed so far」と明記されており参考:Warby Parker 2021 Impact Report|2024|2021年インパクトレポートで「Over 10 million pairs have been distributed so far」と明記、3年間で配布数が倍増したことがわかります。

学べること

Warby Parkerの事例は「社会貢献を体験化し可視化」する重要性を示しています。
多くの企業が社会貢献を謳いますが、顧客にとってそれは遠い話に感じられがちです。Warby Parkerは「あなたが買った1本で、誰かが見えるようになる」という具体的で可視化されたストーリーにより、購買行為そのものを社会貢献の体験に変えました。
中小企業が社会貢献を訴求する際は、抽象的な「売上の一部を寄付」ではなく、「○○円購入で△△を1つ提供」のような具体的で分かりやすい仕組みを設計しましょう。さらに、その成果(累計寄付数など)を定期的に報告することで、顧客に貢献の実感を与え続けることが重要ですし、顧客は自身の購買体験を通じて社会貢献というポジティブな感情を得ることができます。

2-5 Glossier:自己肯定とコミュニティ共創

概要

美容ブランドGlossierは、従来の美容業界が押し付けてきた「完璧な美」ではなく、「ありのままの自分を肯定する美」を訴求しました。創業者Emily Weissが運営していた美容ブログ「Into The Gloss」のコミュニティを基盤に、顧客と共創するブランドとして成長しました。

感情戦略の分析

ターゲット感情:受容・連帯
Glossierが狙ったのは、従来の美容広告が生み出していた「理想に届かない自分」への不安を、「ありのままで美しい」という自己受容に転換することです。さらに、同じ価値観を持つ顧客同士のコミュニティが連帯感を生み出しました。

感情トリガー:ユーザーの声→製品
顧客のフィードバックやリクエストから製品を開発するプロセスを可視化することで、「私たちの声が聞かれている」という実感を顧客に与えました。これが「自分たちのブランド」という所有感と愛着を生み出しています。

展開方法

Instagram、ブログ、メールマーケティング、ポップアップストアなど、デジタルとリアルを融合させた展開。特にInstagramでのUGC(ユーザー生成コンテンツ)を積極的に活用し、顧客自身がブランドの語り手になる仕組みを作りました。

成果

  • Enrich Labsは、同社の説明を引用して「70% of online sales come from peer referrals」と報告していますが参考:Enrich Labs「Glossier Marketing Strategy: Case Study」|2026|「70% of online sales come from peer referrals」と報告しているが、元データや算出方法は出典内で明示されていない、元データや算出方法は出典内で明示されていないため、解釈には注意が必要です。
  • BeautyMatterによると、Glossierの2024年のフルイヤー予測売上は約200~250百万ドルとされ、同記事は2024年のオフライン配布ポイントを700と記載しています参考:BeautyMatter「The Big Glossier Business Reboot」|2026|2024年のフルイヤー予測売上は約$200〜$250M、2024年のオフライン配布ポイントを700と記載。該当数値は記事の予測表記です。

学べること

Glossierの最大の教訓は「参加型で帰属×所有を強化」する設計です。
顧客を単なる「買い手」ではなく「共創者」として位置づけることで、製品への愛着だけでなくブランドへの帰属意識が生まれます。さらに、顧客同士がコミュニティを形成することで、ブランドは彼らのアイデンティティの一部となります。
中小企業でも、製品開発やサービス改善に顧客を巻き込むことで、同様の効果を生み出せます。アンケートだけでなく、ベータ版のテスター募集、顧客アイデアコンテスト、ユーザー会の開催など、積極的に顧客参加の機会を作りましょう。「私たちが一緒に作ったブランド」という感覚が、最強のロイヤルティを生み出します。

関連記事:コミュニティを活用した感情マーケティングについては、今後の記事「感情マーケティング戦略ガイド(記事No.55)」で詳しく解説予定です。

第3章:日本企業の感情マーケティング5事例

3-1 サントリー「金麦」:日常の安らぎを10年以上継続

概要

サントリーの発泡酒「金麦」は2007年6月に発売され参考:Always Love Beer「累計販売本数160億本突破!「金麦」ブランド3商品がリニューアル」|2026|金麦は2007年6月発売)、「家族との団らん」「帰宅後の安らぎ」をテーマにした広告を10年以上にわたり継続してきました。女優・檀れいを起用したCMシリーズは、日本の日常生活に寄り添う情緒的な表現で知られています。

感情戦略の分析

ターゲット感情:懐かしさ・安らぎ
仕事を終えて帰宅した後の「ほっとする瞬間」「家族との穏やかな時間」という、誰もが共感できる日常の幸福感を訴求しました。

感情トリガー:季節・家庭・夕景
CMでは、季節ごとの風物詩(桜、夏の風鈴、秋の紅葉、冬の雪景色)と、家庭での夕食シーンが丁寧に描かれます。この「季節感×日常」の組み合わせが、視聴者に懐かしさと安心感を与えています。
金麦は「四季の金麦」として季節ごとに展開しており、2021年8月製造分から順次「秋の味」を季節限定で発売しています参考:Impress Gourmet Watch「サントリー「金麦」は“秋の味”へ。8月製造分から」|2026|2021年8月製造分から順次「秋の味」を季節限定で発売

展開方法

テレビCM、店頭プロモーション、ウェブサイト、SNSなど統合的に展開。特に、季節ごとにパッケージや味わいを調整することで、CMメッセージと製品体験を一致させました。

成果

学べること

金麦の事例が示すのは「日常×継続でロイヤルティ蓄積」の力です。
派手な仕掛けや革新的なメッセージではなく、「いつもの安心感」を10年以上一貫して訴求し続けることで、ブランドは生活者の日常に深く根を張りました。この長期的一貫性が、競合製品との差別化と強いロイヤルティにつながっています。
中小企業が感情マーケティングを実践する際、短期的な成果を求めるあまり頻繁にメッセージを変更しがちです。しかし、同じ感情テーマを3年、5年、10年と継続することで、顧客の心に「このブランドはこの感情を代表する」という強い結びつきが生まれます。

関連記事:長期的なブランド感情戦略については、今後の記事「ブランドストーリーテリングと感情の統合(記事No.57)」で詳しく解説予定です。

3-2 東京ガス「家族の絆」:コモディティを家族愛で差別化

概要

東京ガスの「家族の絆」シリーズは2008年に開始され、料理を通じて家族の情景を情緒的に描く長期シリーズとして位置づけられています参考:Wikipedia「家族の絆シリーズ」|2026|シリーズ開始年が2008年であることを確認
ガスという無形のコモディティ商品を、家族の温かい思い出と結びつけることで、強い感情的価値を創出しました。

感情戦略の分析

ターゲット感情:家族愛・成長
親が子どもを育てる過程での喜びや葛藤、子どもの成長を見守る親の複雑な感情など、家族という普遍的なテーマに寄り添いました。

感情トリガー:風呂・食卓の情景
CMでは、お風呂での親子の会話、食卓を囲む家族の団らん、料理を通じた愛情表現など、ガスが使われる具体的な生活シーンが丁寧に描かれます。これらのシーンは、視聴者自身の家族の思い出を呼び起こします。
東京ガス公式リリースによれば、新作「ふたつの人生」篇は令和の娘と平成の母の価値観の違いを描き、キャリアと家庭の選択をテーマにしています参考:東京ガス公式ニュース「新作CM『ふたつの人生』篇 放映開始」|2026|新作「ふたつの人生」篇は令和の娘と平成の母の価値観の違いを描き、キャリアと家庭の選択をテーマにしている)。出演者として富田望生、池谷のぶえが記載されています。

展開方法

テレビCM、ウェブサイト、SNSなどで展開。CMは毎回ドラマ仕立ての高いクオリティで制作され、視聴者から「泣ける」と評価されることも多くあります。

成果

  • シリーズ開始年(2008年)、共通テーマ、制作方針、評価(受賞・賛否)が確認できます参考:Wikipedia「家族の絆シリーズ」|2026|シリーズ開始年(2008年)、共通テーマ、制作方針、評価(受賞・賛否)が確認できる
  • ただし、視聴率・GRP・好感度の具体的数値は企業未公表であり、SNS反響の定量的データも確認できていません。

学べること

東京ガスの事例が教えるのは「無形サービスでも強い感情価値を創出」できるという事実です。
ガスという商品は、顧客にとって「あって当たり前」であり、差別化が極めて困難です。しかし東京ガスは、ガスそのものではなく「ガスがもたらす家族の時間」に焦点を当てることで、機能的価値ではなく感情的価値で訴求しました。
BtoBサービスや無形商材を扱う中小企業も、製品・サービスそのものではなく「それがもたらす顧客の感情体験」に焦点を当てることで、強い差別化が可能になります。「何を売るか」ではなく「どんな感情を提供するか」で勝負しましょう。

3-3 大塚製薬「ポカリスエット」:青春と挑戦を世代を超えて継承

概要

ポカリスエットは2015年頃から「青春の味」的ポジショニングの表現を強化しており、以降、#ポカ写(2016年開始)やダンス動画募集など若年層向けの参加型施策を継続的に実施しています参考:キャククル「ポカリスエットの広告戦略・マーケティング戦略を調査」|2026|「青春の味」へのポジショニング転換(2015年頃のCM刷新等)、2016年#ポカ写開始)(参考:CBO「ポカリスエットの広告事例」|2022|2015年以降「青春の味」をテーマに高校生ターゲットのCM展開、2016年から#ポカ写を開始

感情戦略の分析

ターゲット感情:挑戦・純粋
部活動、体育祭、文化祭といった学生時代の「全力で何かに打ち込む瞬間」に寄り添い、青春期特有の純粋さと情熱という感情を喚起しました。

感情トリガー:汗・青空・音楽
CMでは、汗を流しながら走る学生、真っ青な空、爽やかな音楽が印象的に使われます。この視覚的・聴覚的な要素が、「青春」という抽象的な感情を具体的なイメージに落とし込んでいます。
業界誌の報道では、ダンス動画募集型のWebキャンペーンにおいて「昨年600作品超、今年700作品超」の応募があったと報じられています参考:販促会議「マス×デジタルで広く深く ポカリの広告クリエイティブ」|2026|ダンス動画募集型のWebキャンペーンにおいて「昨年600作品超、今年700作品超」の応募があったと報告。この投稿件数は検証済みの具体値として引用可能です。

展開方法

テレビCM、YouTube、SNS(特にInstagram、TikTok)、学校での試供品配布、イベントスポンサーシップなど、若年層にリーチできる多様なチャネルで展開しました。

成果

  • ポカリスエットのマーケティング概観、青春・学生イメージの訴求、季節キャンペーンに関する示唆が確認できます参考:みつか「四季を味方につけた水分補給、ポカリスエットのマーケティング戦略とは?」|2026|ポカリスエットのマーケティング概観、青春・学生イメージの訴求、季節キャンペーンに関する示唆が確認できる。ただし、公式のKPI実績(ブランド認知率の向上幅、売上寄与率など)の公開資料は確認できませんでした。

学べること

ポカリスエットの事例は「一貫感情ポジショニングの強さ」を示しています。
10年以上にわたり「青春」という一つの感情軸に一貫して訴求し続けることで、「ポカリ=青春」という強い連想が形成されました。この一貫性により、新しい世代の若者も「先輩たちが飲んでいたあの青春の味」として受け入れます。
中小企業が感情マーケティングで成功するには、複数の感情テーマを追いかけるのではなく、一つの感情軸に絞り込み、それを長期的に訴求し続けることが重要です。「うちのブランドといえばこの感情」という強い結びつきを作ることで、競合との差別化と記憶への定着が実現します。

3-4 ユニクロ「LifeWear」:機能を生活の感情に翻訳

概要

ユニクロのブランドコンセプト「LifeWear」は「シンプルで高品質、機能的な日常着」をコアメッセージとし、HEATTECH や AIRism などの素材・技術を通じて日常の課題解決を訴求しています参考:Marketing Monk「Uniqlo’s LifeWear-Driven Marketing Strategy」|2026|LifeWearは「シンプルで高品質、機能的な日常着」をコアメッセージとし、HEATTECH や AIRism などの素材・技術を通じて日常の課題解決を訴求している

感情戦略の分析

ターゲット感情:解放・自己実現
「着心地の良い服を着ることで、もっと自由に、もっと自分らしく生きられる」というメッセージにより、服という物理的な快適さを、精神的な解放感や自己実現という感情に昇華させました。

感情トリガー:多様な人の日常シーン
CMでは、年齢、性別、職業、国籍を問わず、多様な人々が日常生活でユニクロを着用するシーンが描かれます。この多様性の表現が、「誰でも自分らしくいられる」という包摂的な感情を喚起しています。

展開方法

テレビCM、デジタル広告、店舗体験、ウェブサイト、SNSなど、グローバルに一貫したメッセージで展開。Fast Retailing の公表によれば、UNIQLO Europe は FY2024 に revenue ¥276.5 billion(YoY +44.5%)、operating profit ¥46.5 billion (+70.1%)を計上しており、同社はLifeWearを成長要因として挙げています参考:FAST RETAILING 「UNIQLO Business Strategy」|2026|UNIQLO Europe は FY2024 に revenue ¥276.5 billion (YoY +44.5%)、operating profit ¥46.5 billion (+70.1%)を計上

成果

  • 欧州では年間約20店舗の出店を継続する方針とされています参考:FAST RETAILING 「UNIQLO Business Strategy」|2026|欧州では年間約20店舗の出店を継続する方針とされている
  • 専門家の分析では、サステナビリティ施策(耐久性・リサイクル・修理プログラム等)を通じた信頼構築が示唆されており、これが消費者の感情評価に寄与している可能性があります参考:Marketing Monk「Uniqlo’s LifeWear-Driven Marketing Strategy」|2026|サステナビリティ施策(耐久性・リサイクル・修理プログラム等)を通じた信頼構築が示唆されており、これが消費者の感情評価に寄与している可能性

学べること

ユニクロの事例が示すのは「機能を生活の感情に翻訳」する重要性です。
HEATTECHやAIRismといった機能素材の説明だけでは、競合との差別化は困難です。しかしユニクロは、これらの機能を「寒さから解放される」「蒸れから解放される」という感情的ベネフィットに翻訳することで、技術を人間の感情と結びつけました。
BtoBや技術系の中小企業も、スペックの羅列ではなく「その技術が顧客の日常にどんな感情的変化をもたらすか」を語ることで、強い訴求力を持つメッセージを作れます。「〇〇という技術により、あなたは△△という煩わしさから解放される」という構造で設計しましょう。

3-5 ライザップ:劇的Before→Afterで希望と達成感を可視化

概要

パーソナルトレーニングジムのライザップは、「結果にコミット」というキャッチコピーと、劇的なBefore→After写真・動画により、強烈な印象を与えてきました。

感情戦略の分析

ターゲット感情:期待→達成
現在の体型に不満を持つ人の「変わりたい」という期待感と、実際に変わった後の達成感・自己効力感を喚起しました。

感情トリガー:変身映像・強い約束
Before→Afterの劇的な変化を視覚的に示すことで、「自分も変われるかもしれない」という希望を具体化しました。さらに「結果にコミット」という強い約束が、期待感を高めています。
RIZAP公式事例では、個別の具体的なBefore/After数値、写真・動画の存在、プログラム期間、結果の個人差に関する注意書きが確認できます参考:RIZAP公式サイト「ビフォーアフター(WOMEN)」|2026|個別の具体的なBefore/After数値、写真・動画の存在、プログラム期間、結果の個人差に関する注意書きが確認できる

展開方法

テレビCM、YouTube、ウェブサイト、SNS、店舗など全方位で展開。特に、著名人を起用したBefore→Afterは大きな話題を呼び、メディアでも取り上げられました。

成果

  • CVR(申込率)や平均単価、著名人起用による数値的効果などのマーケティングKPIは公開されておらず、公表データがないため推測はできません。
  • 一部の一般ウェブメディアでは個別事例がまとめられていますが、編集者によるまとめのため収集基準が明示されておらず、一次出典での再確認を推奨します参考:tacamablog.com「ライザップのビフォーアフターまとめ」|2023|一部の一般ウェブメディアでは個別事例がまとめられているが、収集基準が明示されておらず、一次出典での再確認を推奨

学べること

ライザップの最大の教訓は「高単価でも感情×約束で選ばれる」という事実です。
ライザップの料金は決して安くありませんが、「変われる」という感情的価値と「結果にコミット」という強い約束により、価格以上の価値を感じさせています。Before→Afterという視覚的証拠が、その約束の信憑性を高めています。
高単価商品・サービスを扱う中小企業も、価格の正当化には機能説明だけでは不十分です。顧客が得られる感情的変化(不安から安心へ、劣等感から自信へなど)を明確に示し、その変化を実現する約束を強く打ち出すことで、価格を超える価値を伝えられます。

関連記事:顧客の変容を描くストーリーテリング手法については、今後の記事「ブランドストーリーテリングと感情の統合(記事No.57)」で詳しく解説予定です。

第4章:15事例から学ぶ成功の5つの共通法則

ここまで15の事例を見てきました。業種も規模も国も異なる企業ですが、成功した感情マーケティングには明確な共通パターンがあります。ここでは、それを5つの法則として抽象化します。

これら5つの法則は独立したものではなく、以下の図のように相互に関連しあうシステムとして捉えることが重要です。

それでは、各法則を一つずつ解説します。

法則1:明確な感情ターゲット

狙う感情を1つ「主軸」に固定

成功事例はすべて、訴求する感情を明確に絞り込んでいます。P&Gは「感謝」、Nikeは「勇気」、Airbnbは「帰属」、サントリー金麦は「安らぎ」というように、主軸となる感情が一つに定まっています。

世界的ブランド戦略において、感情体験の設計は一貫したタッチポイント管理と密接に関連しています。顧客との接点すべてで同じ感情を喚起することで、ブランドと感情の結びつきが強化されます。

感情ターゲットを絞り込む重要性は、グローバルな調査でも裏付けられています。世界的な調査会社Ipsosのレポートによると、感情に訴える広告は長期的なブランド構築に極めて効果的であると結論づけられています参考:Ipsos「Beyond the Hype – The Value of Emotional Advertising」|2024|感情訴求広告は長期的なビジネス成果に寄与すると主張)。

【独自インサイト】

このデータから、専門家として「全ての感情が等しく効果的ではない」ということが言えます。例えば、短期的な注目やシェアを狙うなら「驚き」「喜び」といった高揚感のある感情が、長期的な顧客ロイヤルティを構築するなら「安心」「信頼」といった穏やかな感情が有効である、という仮説が立てられます。自社のビジネスモデル(短期刈り取り型か、長期LTV型か)によって、狙うべき感情の「種類」も戦略的に選択する必要があるのです。

実際に、本記事で紹介した成功事例も、この観点で整理できます。

スクロールできます
事例(企業名)主軸感情ビジネスモデルタイプKPIの方向性
Nike「Dream Crazy」勇気・正義感長期LTV型(ブランドロイヤルティ)ブランド価値向上、Earned Media
Dollar Shave Club笑い・解放初期獲得型 → 長期LTV型(サブスク)初期CVR、バイラル拡散数、継続率
P&G「Thank You, Mom」感謝・愛情長期LTV型(ブランドイメージ)ブランド好感度、メディアインプレッション
ライザップ期待→達成短期刈り取り型(高単価CV)CVR(申込率)、顧客獲得単価
出典:参考:Contagious / Cannes Lions「Creative Effectiveness Winners 2021」|2026|)、(参考:Digital Toppers「Case Study: Dollar Shave Club」|2026|)、(参考:Wieden+Kennedy「P&G: Thank You, Mom」|2026|)、(参考:RIZAP [ライザップ] 公式サイト|2026|)に基づき編集部作成。

ご覧の通り、ビジネスモデルによって狙うべき感情とKPIの方向性が異なっていることがわかります。

実践ポイント

自社は「顧客にどんな感情を提供するか」を一句で言語化してください。
複数の感情を同時に訴求すると、メッセージが拡散し記憶に残りません。まずは一つの感情軸を決め、それに一貫して訴求することが成功の第一歩です。

図1:感情ターゲット×チャネル評価マトリクス

  • 感謝:動画◎ / SNS○ / 店頭△
  • 勇気:SNS◎ / 動画◎ / 店頭○
  • 安らぎ:動画◎ / 店頭◎ / SNS△

法則2:ブランド価値との一致

理念・約束と感情訴求の整合が必須

Alwaysの「#LikeAGirl」が成功したのは、生理用品ブランドと思春期女性のエンパワーメントが自然に結びついたからです。逆に、自社の理念や製品と関係のない感情を訴求すると、「売るための口実」と見透かされます。

世界的なブランディング理論では、ブランドの約束(Brand Promise)と顧客体験の一貫性が、長期的な信頼構築の鍵とされています。

【コラム】ブランドアーキタイプで感情の「人格」を設計する

成功する感情マーケティングは、ブランドが一貫した「人格」を持つことから始まります。その人格設計に役立つのが「ブランドアーキタイプ(12原型)」のフレームワークです。これは心理学者ユングの元型理論を応用したもので、ブランドを12の基本的な人格(例:「賢者」「英雄」「道化師」)に分類し、一貫したトーン&マナーを規定します。例えば、Nikeの「勇気」は「英雄」のアーキタイプ、サントリー金麦の「安らぎ」は「無垢な人」のアーキタイプに分類できます。自社のブランドがどのアーキタイプに最も近いかを定義することで、訴求すべき感情ターゲットがブレなくなり、法則2で述べた「ブランド価値との一致」を高いレベルで実現できるのです。

実践ポイント

自社の理念・ミッション・製品価値と、訴求したい感情が自然につながるかを検証してください。
もし無理やり感があるなら、別の感情軸を探すか、自社の価値を見直す必要があります。価値観の不一致は短期的な炎上リスクだけでなく、長期的なブランド毀損につながります。

法則3:顧客を主人公に

企業はガイド、顧客が物語の主人公

GoogleのLorettaは、Googleの技術を自慢するのではなく、高齢男性が亡き妻を思い出す物語の主人公でした。ライザップも、企業ではなく「変わった顧客」が主人公です。

効果的なストーリーテリングでは、顧客の変容(Before→After)を描くことが基本原則とされています。企業は顧客の変容を支援するガイドとして位置づけられます。

実践ポイント

「顧客のBefore→After」を絵で描けるか確認してください。
顧客がどんな課題を抱え(Before)、自社の製品・サービスを通じてどう変わるのか(After)を明確にしましょう。その変容こそが、顧客が共感する物語の核心です。

法則4:一貫性と継続性

3年以上続ける感情テーマを選定

サントリー金麦やポカリスエットのように、10年以上同じ感情軸で訴求し続けることで、ブランドと感情の強い結びつきが生まれます。

マーケティング理論では、統合マーケティングコミュニケーション(IMC)の観点から、すべてのタッチポイントで一貫したメッセージを継続的に発信することが、ブランド想起を高めると指摘されています。

実践ポイント

短期的な流行に流されず、少なくとも3年は続けられる感情テーマを選びましょう。
毎年メッセージを変えると、顧客の記憶に定着しません。「このブランド=この感情」という強い連想を作るには、長期的な一貫性が不可欠です。

法則5:行動への転換設計

感情→次アクション(シェア・購入・参加)導線は必須

Dollar Shave Clubは動画で笑わせただけでなく、その場で簡単に申し込める導線を用意しました。Coca-Colaは「Share a Coke」で、購入後にSNSでシェアしたくなる仕掛けを作りました。

感情を喚起しても、次のアクションへの明確な道筋がなければ、ビジネス成果につながりません。

実践ポイント

SNSで「シェアしたくなる仕掛け」と店頭・ECの受け皿を同時設計してください。
感情を動かした直後に、顧客が取るべきアクション(購入、シェア、会員登録、イベント参加など)を明確に提示し、その導線をスムーズに設計することが重要です。

感情をビジネス成果に繋げる流れは、以下の図のようにシンプルに設計できます。

感情を動かした後の受け皿を必ず用意しましょう。

15の事例と5つの法則を解説してきましたが、最後にこれらの事例を俯瞰して自社の戦略立案のヒントにしてみましょう。

このマップを参考に、貴社が狙うべき感情とトリガーの組み合わせを検討してみてください。

関連記事:感情マーケティングを戦略として体系化する方法については、今後の記事「感情マーケティング戦略ガイド(記事No.55)」で詳しく解説予定です。

第5章:感情マーケティングを自社で実践するツールキット

本記事で紹介した5つの法則を自社に適用するための実践シートやスコアリングツールを、ダウンロードではなく直接こちらに掲載します。

感情ターゲット定義&EMOTION設計シート

感情設計のフレームワーク「EMOTION」に沿って、自社の主軸となる感情を定義し、具体的な施策をラフ設計するためのワークシートです。

EMOTIONフレームワーク

  1. Empathy (共感): 顧客はどんな課題・感情を抱えているか?
  2. Moment (瞬間): どのタッチポイントで感情を動かすか?
  3. Origin (起点): ブランドのどこからその感情が生まれるか?
  4. Tension (緊張): 感情を喚起する「きっかけ」は何か?
  5. Insight (洞察): 顧客の深層心理にある欲求は何か?
  6. Outcome (結果): その感情が最終的に顧客にもたらす変化は何か?
  7. Next (次の一手): 感情が動いた後、次にどんな行動を促すか?

感情ターゲット定義ワークシート

  • 自社の主軸感情(一言で): 例:「安心」「勇気」「つながり」
  • ターゲット顧客のEmpathy: どんな課題・感情を解決したいか?
  • 感情喚起のMoment: どの場面で感情を動かしたいか?
  • ブランドのOrigin: なぜ自社がその感情を提供できるのか?
  • 感情Tensionの設計: 具体的なトリガーは何か?
  • 顧客Insight: 顧客はその感情で何を求めているか?
  • 顧客Outcome: 最終的に顧客はどう変化するか?
  • Next Action: どんな行動に繋げたいか?

感情マーケティング施策スコアリングシート

あなたの会社のマーケティング施策に以下の5項目を当てはめて1〜5点で評価し、合計点を算出してください。20点以上なら合格です。

  1. 感情ターゲットの明確さ (1-5点): 狙う感情を一句で言えるか?
  2. ブランド価値との一致 (1-5点): その感情は自社の理念と自然に繋がるか?
  3. 顧客の主人公度 (1-5点): 顧客の変容(Before→After)が描かれているか?
  4. 一貫性と継続性 (1-5点): 3年以上続けられる感情テーマか?
  5. 行動への転換設計 (1-5点): 感情が動いた直後のアクション導線は明確か?

合計点: ___ / 25点

FAQ

Q1. 自社に近い事例が見つからない場合、どの感情から設計すればいいですか?

A. 感情ターゲットは業種ではなく「顧客の課題」から逆算して選びます。
まず、顧客が現在抱えている主要な課題(不安、不満、欲求)を特定してください。次に、自社の製品・サービスがその課題を解決した後、顧客がどんな感情状態になるかを想像します。

例えば:

  • 課題「時間がない」→ 解決後の感情「解放感・余裕」
  • 課題「失敗が怖い」→ 解決後の感情「安心・自信」
  • 課題「孤独」→ 解決後の感情「帰属・つながり」

この「解決後の感情」があなたのブランドが訴求すべき感情ターゲットです。業種が違っても、顧客の感情パターンは共通しています。本記事の15事例から、似た感情軸の設計パターンを参考にしてください。

Q2. 批判が起きるリスクが怖いです。どう回避すればいいですか?

A. 完全な回避は不可能ですが、リスクを最小化する方法はあります。
1. 価値観一致の確認
Nikeの事例が示すように、自社のコアターゲット層の価値観と合致していれば、一部の批判は長期的にはプラスに働きます。重要なのは「全員に好かれる」ことではなく「支持してほしい層に深く共感される」ことです。
2. 段階的テスト
いきなり大型キャンペーンを打つのではなく、まず小規模(例:Instagram投稿1本)でテストし、反応を見て調整しましょう。
3. 真正性の担保
法則2(ブランド価値との一致)で述べたように、自社の理念や製品と自然につながる感情テーマを選べば、「売るための口実」と見られるリスクは減ります。
4. 準備と覚悟
社会的メッセージを含む感情訴求(勇気、正義感など)を行う場合、賛否両論は必ず起きます。事前に想定される批判とその対応を準備し、経営層の覚悟を確認してください。
批判を恐れるあまり、どこにも引っかからない無難なメッセージになると、誰の心にも届きません。「誰に嫌われても構わないか」を明確にすることが、強い支持を生む鍵です。

Q3. 感情喚起と売上をどう結びつければいいですか?

A. 法則5(行動への転換設計)が鍵です。感情を動かした直後に、明確なアクション導線を設計してください。
感情喚起だけでは不十分
Dollar Shave Clubの動画が成功したのは、笑わせただけでなく、動画の最後に「DollarShaveClub.comで申し込もう」という明確なCTAがあったからです。

3段階の設計

  1. 感情ピーク:広告やコンテンツで感情を最高潮に高める
  2. CTA(行動喚起):感情が高まった直後に、次のアクション(購入、登録、シェア)を明示
  3. 受け皿:アクションを取りやすい導線(1クリックで購入、簡単な登録フォームなど)を用意

測定可能なKPI設定

  • SNSエンゲージメント(いいね、シェア、コメント)
  • サイト流入数とCVR
  • ブランド検索数の増加
  • NPS(ネットプロモータースコア)の変化

これらのKPIで効果を測定し、PDCAを回すことで、感情マーケティングをビジネス成果に確実につなげられます。
詳しい効果測定の方法は、今後の記事「感情マーケティングの効果測定(記事No.66)」でご参照ください。

まとめ

本記事では、世界的ブランド、D2C・スタートアップ、日本企業の計15事例を「ターゲット感情/感情トリガー/展開方法/成果/転用ポイント」の5つの観点で分解し、「成功の5つの共通法則」として抽象化しました。

重要なのは、これらの事例を「すごいな」で終わらせず、自社に転用可能な形に落とし込むことです。

次のアクション

  1. 今すぐ実践:感情ターゲットの定義
    • 本記事の「感情ターゲット定義&EMOTION設計シート」を使い、自社の「主軸感情」を1つ決めてください。
    • EMOTION(Empathy/Moment/Origin/Tension/Insight/Outcome/Next)に沿って、まずは60分でラフ設計を行いましょう。
  2. 小さくテストする
    • 1チャネル(例:SNS短編動画)で小さくテストし、効果測定のKPIで検証する方法については今後の記事「感情マーケティングの効果測定(記事No.66)」でご参照ください。
  3. さらに学ぶ
    • 理論の全体像を把握したい方:感情マーケティング完全ガイド
    • 基礎から学びたい方:感情マーケティングとは?基本から徹底解説
    • クリエイティブ制作の実務:今後の記事「感情に訴える広告の作り方(記事No.54)」で詳しく解説予定です。
    • コピーライティング技術:今後の記事「感情訴求コピーライティング実践法(記事No.53)」で詳しく解説予定です。
    • 戦略統合:今後の記事「感情マーケティング戦略ガイド(記事No.55)」で詳しく解説予定です。
    • ストーリー連携:今後の記事「ブランドストーリーテリングと感情の統合(記事No.57)」で詳しく解説予定です。
    • 中小企業向け:今後の記事「中小企業のための感情マーケティング(記事No.62)」で詳しく解説予定です。
    • 効果測定:今後の記事「感情マーケティングの効果測定(記事No.66)」で詳しく解説予定です。

感情マーケティングは、予算の大小ではなく「狙う感情」と「一貫性」で勝負が決まります。今日から、あなたのブランドが提供する感情を明確にし、それを一貫して訴求していきましょう。

関連記事リンクまとめ

  • 理論の全体像:感情マーケティング完全ガイド
  • 基礎定義:感情マーケティングとは?基本から徹底解説
  • 広告制作:今後の記事「感情に訴える広告の作り方(記事No.54)」で詳しく解説予定です。
  • コピーライティング:今後の記事「感情訴求コピーライティング実践法(記事No.53)」で詳しく解説予定です。
  • 戦略統合:今後の記事「感情マーケティング戦略ガイド(記事No.55)」で詳しく解説予定です。
  • ストーリー連携:今後の記事「ブランドストーリーテリングと感情の統合(記事No.57)」で詳しく解説予定です。
  • 中小企業向け:今後の記事「中小企業のための感情マーケティング(記事No.62)」で詳しく解説予定です。
  • 効果測定:今後の記事「感情マーケティングの効果測定(記事No.66)」で詳しく解説予定です。
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この記事を書いた人

当編集部は、世界的エンタメブランドでの実績を持つブランディング専門家の知見をもとに、実践的なブランドマネジメント情報を発信しています。

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セサミストリート、ディズニー、ウルトラマンなど、数々の世界的ブランドを手がけた35年の業界経験から導き出された理論と実践ノウハウを、検索ユーザーの課題解決に役立つ形で体系化。最新のブランディング手法を分かりやすく解説します。

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