「BtoBは理性的」はもう古い?プロが教える感情マーケティングで「選ばれる」5つの戦略【事例付】

「BtoBだから理性的?それは幻想です。」

19年間WEBマーケティングの現場で多くの中小企業を支援してきましたが、この思い込みを持つ経営者の方に本当によく出会います。確かに、法人間の取引は機能や価格、費用対効果といった論理的な要素が重視される傾向にあります。しかし、最後の最後、RFP(提案依頼書)で複数のベンダーの要件が横並びになったとき、何が決定打になるでしょうか?多くの場合、「この人と組みたい」「この会社は安心できる」といった“感情”が、最後の決め手となるのです。

象徴的な現場を想像してみてください。最終2社に絞られたベンダーの比較表は、機能も価格もほぼ同等。役員会での決裁の瞬間、ある役員の一言が場を動かします。「B社もいいが、A社の方が長期的な信頼を築けそうだ」——この“信頼”こそが、数値では測れない感情的価値の力です。

現代のBtoB市場では、機能や価格、サポートといったスペックだけで差別化を図ることが極めて難しくなっています。技術のコモディティ化が進み、RFPは横並び評価になりがち。プレゼンテーションも、単なる“お知らせ”に終始してしまうことがあります。

しかし、BtoBの領域においても感情の役割は無視できません。ある国内調査では、BtoB SaaSにおいて企業の価値観やカルチャーに共感している顧客は、そうでない顧客と比較して継続利用意向が58.8ポイントも高いという結果が報告されています(参考:冨岡晶『BtoB SaaSの選定・購買は6割以上が感情的判断』|2019|価値観・カルチャー共感層の継続利用意向は非共感層より58.8ポイント高い)。「機能が優れている」「価格が妥当」という論理的な価値だけでは、この決定的な差は生まれません。つまり、法人顧客が抱く「この会社は信頼できる」「ビジョンに共感する」といった感情的価値こそが、選ばれ続けるBtoBブランドの重要な差別化要因となっているのです。

当編集部では、世界的エンタメ企業で35年間にわたりブランドマネジメントに携わった専門家の知見に基づき、ブランドが顧客に提供する一連の「体験」が、最終的な購買行動や継続意思にどう影響するかを体系化しています。特に、BtoBにおいては、単なるスペックだけでなく、購買担当者の「個人的な成功」に寄り添うアプローチが重要であると考えます。

本記事では、この「論理×感情のハイブリッド設計」とも呼べるBtoB感情マーケティングについて、その定義から設計の原則、測定の方法まで、実践的に解説します。BtoB特有の5つの感情(信頼、安心、期待、尊敬、帰属)を核にした戦略を、マーケティング、営業、カスタマーサクセスの職能別に具体的な台本やテンプレートを交えてご紹介。Salesforce、HubSpot、freeeといった有名企業の事例分析を通じて、自社での適用ヒントも得られるでしょう。

それでは、まずBtoBにおける感情の役割について、その実態から見ていきましょう。なお、本記事で紹介する事例は、一般公開情報に基づく編集部の分析であり、各企業の公式見解ではない点にご留意ください。成果データも一次情報もしくは信頼性の高い二次情報のみ出典を明記しています。

目次

第1章:BtoBにおける感情の役割

BtoBの購買意思決定は「論理的」だと考えられがちですが、その裏側には常に「人」の感情が流れています。複雑な合議制のプロセスにおいても、最終的には“人の感情”が判断を動かす場面が少なくありません。

1-1 BtoB購買の「感情的現実」

意思決定のプロセスは、RFPの作成から複数のベンダー評価、社内での稟議、そして最終決裁へと進みます。この過程のいたるところに、購買担当者や関係者の感情が影響を及ぼしています。

早稲田MBAの調査(2022年12月、n=386)では、BtoB SaaSにおける顧客の継続意思に対して「感情的コミットメント」が影響を与えることが共分散構造分析で示されています(参考:澤井翔輝「B2B SaaS におけるブランド外の因子が顧客のコミットメントに与える影響について」|2023|感情的コミットメントと継続意思の関連性)。これは、論理的なスペックだけでなく、感情的なつながりがビジネスの継続に深く関わっていることを示唆しています。

BtoB購買において感情が強く働く典型シーン(4つ):

  1. ベンダー最終選定の瞬間
    • 機能や価格が拮抗する中で、「A社の方が担当者と話しやすい」「B社の方がサポートが手厚そう」といった感覚が、最後の決定を後押しすることがあります。
  2. 既存ベンダーからの乗り換え検討
    • 乗り換えにはコストやリスクが伴うため、「今のベンダーを変えて本当に大丈夫か」という不安や、「新しいベンダーへの期待」が大きく影響します。
  3. 高額投資の社内説得
    • 大きな予算を伴うプロジェクトでは、社内関係者への説得が必要です。「この投資で失敗したらどうしよう」という恐れに対し、「このシステムなら成功する」という確信や安心感をどう与えるかが鍵になります。
  4. 初期トラブル時の継続判断
    • 導入初期に予期せぬトラブルが発生した場合、「このベンダーならきちんと対応してくれるだろう」という信頼がなければ、関係はすぐに破綻しかねません。

これらのシーンにおいて、顧客がブランドに触れる各タッチポイントで生まれる感情を設計する重要性は、世界的エンタメ企業での実務でも重視される「ブランドエクスペリエンス」の考え方と共通しています。例えば、RFP配布時には「不安」、デモ参加時には「期待」、稟議前には「リスクへの恐れ」など、タッチポイントごとに顧客の優勢感情は変化します。

1-2 BtoB特有の感情とBtoCとの差

BtoC取引における感情は「楽しい」「嬉しい」「欲しい」といった個人の欲求に直結することが多いですが、BtoBではより複雑で、組織目標と個人の立場が絡み合います。

比較項目BtoC(個人購買)BtoB(法人購買)
購買動機個人の欲求、趣味、利便性組織目標達成、課題解決、業務効率化
意思決定個人の判断、比較的短期複数人による合議、長期プロセス
感情の性質「楽しい」「欲しい」など直接的「信頼」「安心」など組織的・個人的リスクに紐づく
リスク感覚個人的な金銭的損失が中心組織的損失に加え、担当者個人の評価リスク
関係性の期待取引関係が主、短期的な繋がりも多い長期的なパートナーシップを期待
出典:本文の議論に基づき(参考:澤井翔輝「B2B SaaS におけるブランド外の因子が顧客のコミットメントに与える影響について」|2023|感情的コミットメントと継続意思の関連性)で示されたBtoBの感情的コミットメントの重要性を参考に編集部作成

この違いを踏まえ、BtoBにおいて特に重要となる5つの感情的価値を定義し、それが「なぜ効くのか」、そして「何をもって証明・伝達できるか」を明確にすることが、感情マーケティングの第一歩です。

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感情カテゴリなぜ効くのか?(担当者の深層心理)伝えるための「証跡」の具体例
信頼「約束を守る相手と長期的な関係を築きたい」導入事例(特に長期契約)、第三者評価、セキュリティ認証、透明性の高い情報開示
安心「この選択で失敗し、自分の評価を下げたくない」手厚いサポート体制、返金保証制度、SLA(サービス品質保証)、POC(概念実証)の提供
期待「この投資で、自分の業務や会社の未来を良くしたい」製品ロードマップの共有、イノベーション事例の提示、デモでの具体的な未来体験
尊敬「専門家から学び、正しい判断を下したい」業界レポートの発信、専門家による登壇・執筆、技術論文、受賞歴
帰属「単なる取引先ではなく、共に成長する仲間が欲しい」ユーザーコミュニティの運営、共同イベントの開催、ブランドミッションへの共感訴求
出典:本文の議論に基づき(参考:Alexander Kesler「Addressing The B2B Trust Deficit: How To Win Buyers In 2026」|2026|信頼ソースの比率(referrals 68%、third‑party opinions 71%等))を参考に編集部作成

1-3 購買担当者の「隠れた感情」

BtoBの購買担当者は、往々にして表面的には論理的なニーズを語ります。しかし、その裏には彼ら自身のキャリアや評価、仕事への情熱といった「隠れた感情」が潜んでいます。

表面的ニーズ(論理)隠れた感情的ニーズ(深層)
コスト削減「自分の評価を上げたい」
業務効率化「毎日の業務を楽にしたい」「ストレスを減らしたい」
品質向上「失敗して責任を問われたくない」「安心したい」
イノベーション導入「先進的な担当者と思われたい」「業界をリードしたい」
データ活用「データに基づき自信を持って判断したい」

これらの隠れた感情を理解するために、世界的エンタメ企業でも重要視される「ターゲットはあなたの顧客ではなく友達」という考え方がBtoBにおいても有効です。つまり、購買担当者を「肩書きの後ろにいる“個人”」として深く理解することです。

Buying Center(購買関与者グループ)別・感情ニーズ分析

BtoBの意思決定は、単一の担当者ではなく「Buying Center」と呼ばれる複数の役割を持つグループで行われます。

感情的価値を設計する際は、この役割ごとの異なる感情ニーズを理解することが不可欠です。

  • ユーザー(利用者): 「自分の業務が楽になるか」という期待と「使いこなせるか」という不安
  • インフルエンサー(影響者): 「技術的に優れているか」という尊敬と「自分の推薦が評価されるか」という自己肯定感
  • バイヤー(購買担当者): 「価格と条件は妥当か」という安心と「面倒な手続きを避けたい」という負担軽減
  • ディサイダー(意思決定者): 「投資対効果は確かか」という確信と「失敗して責任を問われたくない」というリスク回避
  • ゲートキーパー(情報管理者): 「信頼できる情報か」という信頼と「余計な手間を増やしたくない」という効率性

このように、各役割が求める感情的価値は異なります。すべての関与者の感情的ハードルを越えるアプローチが、BtoB感情マーケティングの鍵となります。

「肩書きの後ろにいる“個人”を見る」ためのヒアリング質問例:

  • 「御社でこのプロジェクトの成功は、〇〇様にとって具体的にどのような意味を持ちますか?」
  • 「上司や同僚の方々から、この件で最も評価されたい指標は何でしょうか?」
  • 「過去に似たような導入で、最も避けたいと感じた失敗談はありますか?」
  • 「〇〇様のチームにとって、この課題解決はどのような負担軽減につながるとお考えですか?」

これらの質問を通じて、担当者個人の「個人的成功」への意欲や、「失敗したくない」という恐れを深く理解することが、効果的な感情訴求の出発点となります。

コラム:”担当者”の感情か、”組織”の感情か?BtoB感情マーケティングの本当のターゲット

BtoB感情マーケティングを考える際、多くの人は「購買担当者個人の感情」にのみ注目しがちです。しかし、そこには盲点があります。BtoBの意思決定には、「組織としての感情」も大きく影響するのです。

例えば、「失敗したくない」という感情は、担当者個人の評価への恐れであると同時に、「組織として間違った投資をしたくない」というリスク回避の感情でもあります。「このベンダーは信頼できる」という安心感は、担当者の心理的安定だけでなく、「組織の評判を損なわない」という社会的信用の維持にも繋がります。

優れたBtoB感情マーケティングは、担当者個人の「個人的成功」を支援すると同時に、その選択を組織全体が「合理的で安全な判断だ」と納得できる感情的根拠を提供します。この二つの側面を同時に満たすことこそが、複雑なBtoBの意思決定を動かす真の力となるのです。

消費者心理の全体像や感情の仕組みについては、「なぜ人は「つい買う」?脳科学が解き明かす6つの感情トリガーと売上UP戦略【実践テンプレ付】」もご参照ください。

第2章:BtoB感情マーケティングの5つの戦略

BtoB感情マーケティングの戦略は、「なんとなく良い雰囲気」を醸し出すものではありません。明確な意図をもって、各タッチポイントで特定の感情を喚起し、購買から継続利用までの顧客ジャーニーを最適化していくものです。

この章では、BtoB購買において特に重要となる5つの感情に焦点を当て、それぞれの戦略とその実装ポイントを解説します。なぜこれらの戦略が有効なのか、その背景には「リスク回避」「自己効力感の向上」「社会的証明の提供」といった心理的メカニズムが存在します。

【図2:BtoBの5感情×タッチポイント設計マトリクス】

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タッチポイント信頼安心期待尊敬帰属
Webサイト導入事例、受賞歴、セキュリティ情報FAQ、サポート体制、保証制度ロードマップ、ビジョン専門記事、登壇情報、ホワイトペーパーユーザーコミュニティ、イベント告知
コンテンツ業界レポート、データ導入ガイド、トラブルシューティング未来予測、トレンド解説研究発表、技術解説、専門家コラムユーザーボイス、共創事例
営業活動実績開示、正直な対話丁寧なリスク説明、POC未来像の提示、成功事例専門知識、洞察力、業界知見顧客の課題に寄り添う姿勢、共感
デモンストレーション実現可能性、安定性簡単な操作、サポートへの接続新機能、拡張性、業務効率化技術力、提案力、質問への即答顧客ニーズへの柔軟な対応
提案書/RFP客観データ、第三者評価SLA、契約の透明性、Q&AROIシミュレーション、将来性業界特化の知見、ソリューション共同プロジェクト、パートナーシップ
カスタマーサクセス定期的な連絡、進捗報告迅速な問題解決、専用窓口新機能の提案、改善フィードバック専門的アドバイス、データ分析ユーザー会、感謝イベント、共同事例
イベント/ウェビナー成功事例、顧客登壇QAセッション、サポートブースロードマップ発表、新技術紹介業界リーダー講演、専門家交流参加者交流会、ワークショップ

戦略1:信頼と安心を構築する

BtoB取引において、信頼と安心はすべての感情的価値の土台となります。顧客が「このベンダーは信用できる」「このサービスを選んでも大丈夫」と感じられなければ、どれだけ優れた機能があっても選ばれることはありません。世界的エンタメ企業での「体験の一貫性」の重視は、BtoBにおいても、各接点で“裏切らない体験”を積層することが心理的安全性を生むという点で共通しています。

なぜ効くか:BtoB購買において「失敗したくない」というリスク回避の感情は非常に強力です。信頼と安心は、このリスクを軽減する最大の要素となります。

実装のポイント

実績・事例の“関係性”訴求:単なる「導入社数1,000社」だけでなく、「10年超の伴走実績があるパートナー企業」のように、顧客との長期的な関係性を強調します。

リスク低減の可視化
・POC(概念実証)や無料トライアルの提供。
・返金保証、SLA(サービス品質保証)の明示。
・24時間サポート体制の図解や問い合わせ窓口の明確化。

専門性の証明
・業界のソートリーダーシップを示すホワイトペーパーや専門記事の発信。
・業界団体からの認証・受賞歴、主要な学会やイベントでの登壇歴の明示。
・SearchEngineJournal(2026)によれば、信頼の構築には技術的検証(セキュリティ認証等)と第三者による評価(リファラル、サードパーティ意見)が有効であり、referralsを重視する割合が約68%、third‑party opinionsが約71%、consultantsが約59%と報告されています(参考:Alexander Kesler「Addressing The B2B Trust Deficit: How To Win Buyers In 2026」|2026|信頼ソースの比率(referrals 68%、third‑party opinions 71%等))。

コピー例(対比):

  • ❌「導入企業1,000社」
  • ✅「10年超の伴走実績。なぜ選ばれ続けるのか、顧客の声から紐解きます。

KPI:

  • デモ申込率、RFP招致率、最終選定率、安全性に関する顧客からの定性的な声の件数。

注意点:未検証の数値や誇張表現は信頼を損ないます。必ず出典を明記し、事実に基づいた情報提供を心がけましょう。

戦略2:顧客の成功を物語で示す

論理的なデータだけでなく、顧客が「自分たちの未来」を想像できるような物語で成功事例を伝えることが、BtoBでは非常に効果的です。これにより、単なる効率化の数値だけでなく、具体的な「感情的な成功」を顧客が自己投影しやすくなります。

なぜ効くか:人は事実の羅列よりも物語に感情移入しやすく、自身に重ね合わせて理解する傾向があります。世界的エンタメ企業で重視される「顧客ヒーローのストーリー」(Ch.6の概念を援用)を、BtoBでは「主人公=顧客、企業=ガイド」という構図で展開し、“自己投影”を促します。

実装のポイント

Before→Afterを三層で記述:「業務」「感情」「評価」の側面から顧客の変革を描きます。

具体台本の活用
3分事例動画:「導入前の課題(Before)」→「導入後の具体的な業務改善(After-業務)」→「チームや担当者の感情の変化(After-感情)」→「社内外からの評価(After-評価)」の構成。
1,200字事例記事:動画と同様の構成に加え、具体的な数値や担当者のコメントを深く掘り下げます。
営業1枚サマリー:キーメッセージを絞り込み、視覚的に訴求できるようインフォグラフィックなどを活用します。

✔ Clwyd Probertの報告によると、ショート動画(1分未満)の視聴完了率は65–66%程度と高く、LinkedIn動画のエンゲージメント率は5.60% (by impressions) と報告されており、短尺動画でのストーリーテリングは有効な手段です(参考:Whitehat SEO「B2B Video Marketing Benchmarks 2026」|2026|ショート動画(1分未満)の視聴完了率65–66%、LinkedIn動画のエンゲージメント率5.60%)。

例文(対比):

  • ❌「当社のシステム導入で業務効率が30%向上」
  • ✅「経理チームが定時で帰れるように。社員からは『家族との時間が戻った』と喜びの声が。

KPI:

  • 事例閲覧完読率、営業現場での提示率、稟議書での事例引用率、事例動画の視聴完了率。

ストーリーテリングと感情の関係についてさらに深く知りたい方は、「なぜあなたのCMは心に残らない?世界的プロが解き明かす「感情と成果」を両立するストーリーテリングの型」も合わせてご参照ください。

戦略3:人と人の関係を構築する

BtoB取引は、最終的には人と人とのつながりによって成り立ちます。ブランドとして「同じ人格のチーム」が一貫したメッセージで顧客に接する設計は、世界的エンタメ企業での「体験全体設計」や「統合的コミュニケーション(IMC)」の重視と共通しています。

なぜ効くか:ビジネスパートナーとしての信頼感は、担当者個人への信頼に大きく左右されます。人間味のあるコミュニケーションは、顧客の「共感」や「帰属意識」を育みます。

実装のポイント

営業・CSの人格設計
営業担当者:専門知識に加え、顧客の課題に深く共感し、人間味ある対応を心がける。
カスタマーサポート:迅速かつ個別化された対応で「いつでも頼れる安心感」を提供し、“中の人”の顔が見えるコミュニケーションを意識する。

共体験の創出
・ユーザーカンファレンス、オンライン勉強会、少人数制の1on1ディナー、座談会など、顧客同士やベンダーとの直接的な交流の場を設けます。
・Vito Vishnepolskyの報告によると、複数チャネルでの顧客エンゲージメントは、購買者のLTVを最大約30%高め、企業の収益成長を最大で3.5倍速めるという報告があります(参考:Vito Vishnepolsky「Omnichannel Statistics 2026: Multi-Channel Trends for B2B Sales Success」|2026|Omnichannel購買者はLTVが最大約30%高く、Omnichannel顧客エンゲージメントを持つ企業は収益成長が最大3.5倍速い)。

台本パターン:

  • 初回接触1分自己紹介:「私は○○の課題解決に情熱を持っています。特に、御社のような○○業界の皆様が直面する課題を深く理解し、伴走することでご成功を支援したいと考えています。」
  • 共感起点の深掘り質問10選:「最近、御社の〇〇チームではどのような課題に最も時間を取られていますか?その背景にある感情的なストレスがあれば、ぜひお聞かせください。」

KPI:

  • 第2回打鍵化率、紹介発生率、イベント・ウェビナー参加率、NPS(顧客推奨度)。

戦略4:購買担当者の「個人的成功」を支援する

BtoBの購買担当者は、組織の目標達成だけでなく、その選択が自身のキャリアや社内評価にどう影響するかを常に意識しています。彼らの「個人的成功」を支援する視点を持つことは、強力な感情的動機づけになります。

なぜ効くか:購買担当者の「肩書きの後ろにいる“個人”を見る」という「ターゲットは友達」の視点(Ch.4の概念を援用)でベネフィットを提案することで、担当者の「自己効力感」や「自尊心」を満たし、強いロイヤルティに繋がります。

実装のポイント

個人のKPI後押し施策
・顧客企業の同意を得た上で、成功事例で担当者を名指しで称賛したり、業界誌への露出を支援したりします。
・導入後の成果を可視化するレポートを提供し、担当者が社内報告で活用できるようにします。

昇進・登壇・社内表彰支援
・「このプロジェクトの成果は、〇〇様のリーダーシップによるものです」といった感謝状や、社内共有用の成功報告テンプレートを提供します。
・担当者が業界イベントで登壇する機会を支援したり、社内表彰につながるようなストーリーを共に作成したりします。

コピー例:

  • この選択が、あなたのキャリアを押し上げる。
  • 「私たちのソリューションは、〇〇様がリーダーとして社内外から評価される一助となるでしょう。」

KPI:

  • 担当者の推薦コメント獲得数、社内共有報告書での自社ツール言及率、上申書テンプレートの使用率。

戦略5:長期的なパートナーシップを約束する

BtoB取引の最終的な目標は、単発の売買ではなく、長期的なパートナーシップの構築です。ブランドとして「共に成長する」という約束を、すべての接点で一貫して表現することで、顧客の「帰属意識」や「安心感」を醸成します。

なぜ効くか:顧客は「このベンダーとなら将来にわたって安心できる」と感じ、不確実性の高いビジネス環境下で「安定」という感情的価値を得られます。これは世界的エンタメ企業が「約束と原則」として重視するブランドステートメント(Ch.2の概念を援用)や、IMCにおける「一貫したブランド人格」(Ch.8の概念を援用)のBtoB応用と言えます。

実装のポイント

ロードマップ共有:製品やサービスのロードマップを顧客と共有し、将来のビジョンや共同開発の可能性を話し合います。

共同開発の枠組み:顧客からのフィードバックを製品開発に反映する仕組み(Feedback to Product)を公開し、顧客を「共創パートナー」として巻き込みます。

定期的なコミュニケーション:四半期ごとのレビュー(QBR)、ユーザー会、個別の相談会などを通じて、顧客との関係性を深化させます。

✔ Imaan Sultanによれば、高パフォーマンスのB2B企業はNRR(Net Revenue Retention)が120%を超え、体系的なアップセルプログラムにより平均取引額が15–25%高まり、拡張収益が30–50%増加する例が示されています(参考:Imaan Sultan「B2B Sales KPIs: The Complete Guide to Measuring and Optimizing Sales Performance in 2026」|2026|NRRベンチマーク、アップセルによる収益増)。

言い換え辞書:

  • ❌ベンダー → ✅パートナー
  • ❌契約 → ✅関係
  • ❌導入 → ✅一緒に始める

KPI:

  • 継続率、NPS(Net Promoter Score)、アップセル率、共同プロジェクト参加率。

感情ロイヤルティの構築法については、「感情ロイヤルティ構築法」でさらに掘り下げています。

第3章:BtoB感情マーケティングの実践

BtoB感情マーケティングは、単なる概念に終わらせず、日々のマーケティング活動、営業、そしてカスタマーサクセスまで、すべての顧客接点で一貫して実践されてこそ真価を発揮します。ここでは、各職能での具体的な感情訴求の実践方法を解説します。

3-1 コンテンツマーケティングでの感情訴求

コンテンツは、顧客との最初の感情的な接点を作り出す重要なチャネルです。ストーリーテリング(Ch.6の概念を援用)と一貫したブランド体験(Ch.2の概念を援用)を意識し、顧客の感情に訴えかけるコンテンツを設計しましょう。

【図3:コンテンツ種別×狙う感情×KPIマトリクス】

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コンテンツ種別主要な狙う感情実装例KPI(例)
ホワイトペーパー信頼、安心、尊敬課題共感フック、物語的事例、未来への希望、専門的知見DL数、完読率、MQL化率
ブログ/ナレッジ共感、安心、期待、尊敬業界課題への共感、具体的な解決策、専門家コラム、未来志向PV、滞在時間、回遊率、問い合わせ
動画コンテンツ期待、共感、安心、尊敬顧客ヒーローストーリー、チーム紹介、舞台裏、製品デモ視聴完了率、シェア数、CVR
営業提案書信頼、安心、期待、個人的成功機能表の前に成功見取図、担当者メリット、リスク軽減策提案採択率、決裁者同席率
  • ホワイトペーパー
    • 構成テンプレ:冒頭でターゲットの抱える深い「感情的な課題」に共感を示すフックを置きます。次に、その課題を解決した顧客の「物語的事例」を展開し、最後に導入後の「希望に満ちた未来」を提示する構成が有効です。専門的な内容に終始せず、感情の動きを意識しましょう。
  • ブログ/ナレッジ記事
    • 業界の共通課題に対して深く共感し、その解決への「安心感」を提供します。具体的な解決策とともに、自社の専門性や洞察を示すことで「尊敬」の感情を喚起します。
  • 動画コンテンツ

3-2 営業活動での感情訴求

営業担当者は、顧客と直接対話する最も重要な感情接点です。論理的な提案だけでなく、顧客の隠れた感情に寄り添い、個人的な成功を支援する姿勢が求められます。

  • 初回商談
    • 共感オープナー(30秒):「多くの〇〇企業様が、近年〇〇という課題に直面されていますよね。特に、その裏には『失敗できない』というプレッシャーがあるのではないでしょうか。」と、顧客の課題とそれに伴う感情に触れることから始めます。
    • “理解している感”を作る質問(5つ):「今回のプロジェクトで、〇〇様が最も期待されている個人的な成果は何でしょうか?」「過去の導入経験で、特に難しかったと感じたのはどんな点ですか?」といった質問で、担当者の立場や感情を深く掘り下げます。
  • 提案活動
    • 機能表の前に「成功後の姿」見取り図:詳細な機能説明に入る前に、導入後に顧客が享受する具体的な成功イメージや感情的なベネフィットを視覚的に提示します。
    • 担当者個人メリット欄:提案書に、担当者個人がこのソリューション導入で得られるメリット(例:社内評価向上、業務負荷軽減)を明記する欄を設けます。
    • リスク軽減欄:懸念されるリスクに対し、自社がどのように対応するか(保証、サポート、POCなど)を具体的に示し、「安心」を提供します。
  • クロージング台本例
    • 「私たちは単なるベンダーではなく、〇〇様の成功を共に追求するパートナーとして、長期的な関係を築きたいと考えています。」
    • 「〇〇様の『〇〇を達成したい』というお気持ちに、私たちも全力で応えます。ぜひ、一緒に成功への一歩を踏み出しましょう。」
  • KPI

3-3 カスタマーサクセスでの感情維持

カスタマーサクセスは、契約後の顧客の「信頼」と「安心」を維持し、さらに「期待」や「帰属」の感情を育むための最前線です。

  • オンボーディング
    • 歓迎と感謝:丁寧な歓迎メッセージとともに、顧客が「選んでくれてありがとう」と感じるような感謝の気持ちを伝えます。
    • 最初の成功の設計:導入後の早い段階で「小さな成功体験」を提供し、顧客が「これで大丈夫だ」という「安心」を得られるよう支援します。
    • “いつでも頼れる安心”の周知:サポート体制、問い合わせ窓口、FAQへのアクセス方法を明確に伝え、困ったときにいつでも相談できる環境を整えます。
  • 継続的な関係構築
    • 四半期レビューで“成功確認と称賛”:定期的なQBR(四半期ビジネスレビュー)で、顧客の成功をデータで可視化し、担当者やチームを称賛します。
    • 小さな勝利の可視化:目立たない改善点でも積極的にフィードバックし、顧客がサービスの効果を実感できるようサポートします。
  • 更新・アップセル時

顧客の感情的価値の測定は、見えにくい効果を可視化する上で重要です。経済的視点と消費者視点、見える指標と見えない指標の「評価の二軸」で総合的に捉えるフレームワーク(Ch.10の概念を援用)については、感情マーケティングの効果測定(記事No.XX)で詳しく解説しています。

第4章:BtoB感情マーケティング事例

有名企業の成功事例から、BtoB感情マーケティングの実践ヒントを探ります。単に機能や規模だけでなく、顧客の感情にどう訴求しているかに注目しましょう。

(※本章で紹介する事例は、一般に公開されている情報に基づいた分析であり、特定の企業との提携関係を示すものではありません。)

4-1 Salesforce

Salesforceは、クラウドベースのCRM(顧客関係管理)を提供する世界的な企業です。そのマーケティングは、顧客の成功を最上位価値に据え、感情的つながりを強く意識しています。

  • 戦略サマリ
    • Customer Successを企業の核に置き、「Trailblazers(開拓者たち)」と呼ばれるユーザーコミュニティを育成。
    • 大規模イベント「Dreamforce」では、単なる製品発表に留まらず、参加者に「感動的な体験」と「成長の機会」を提供。
    • 顧客の成功事例を「物語」として積極的に発信。
  • 感情価値マップ
    • 信頼:長期的な顧客関係を重視する姿勢、強固なプラットフォーム。
    • 帰属:Trailblazersコミュニティでの「仲間意識」、共に成長するパートナーシップ。
    • 期待:常に進化するテクノロジーへの期待、未来のビジネスを共に創るビジョン。
  • 学びの翻訳(中小〜大企業向け)

4-2 HubSpot

HubSpotは、インバウンドマーケティング、セールス、サービスツールを提供する企業です。「顧客に価値を提供し、引きつける」というインバウンド思想自体が、感情的価値に基づいています。

  • 戦略サマリ
    • 「インバウンド」という哲学と実践法を広める教育コンテンツを豊富に提供。
    • ユーザーグループ「HUG(HubSpot User Group)」を通じて、顧客同士の学習と交流を促進。
    • 大規模イベント「INBOUND」で、最新の知見とネットワーキングの機会を提供。
  • 感情価値マップ
    • 共感:「顧客中心主義」という思想への共感。
    • 尊敬:業界の新しい思想や手法を啓蒙する専門性への尊敬。
    • 帰属:HUGやINBOUNDでの「同じ志を持つ仲間」とのつながり。
  • 学びの翻訳(中小〜大企業向け)
    • INBOUNDはHubSpot主催の大規模イベントであり、公式ページには参加者の肯定的な推薦の声が多数掲載されています(参考:HubSpot INBOUND 公式サイト|2024|INBOUNDイベントの性質と参加者の肯定的な推薦の声)。
    • 無償の教育コンテンツで信頼を築く:ブログ記事、ホワイトペーパー、無料ツールなどを通じて、顧客が抱える課題解決に役立つ情報を提供します。これは、まず「与える」ことで、顧客からの「信頼」と「尊敬」を獲得し、結果として自社製品の採用に繋がる王道のアプローチです。
    • ユーザーコミュニティでファンを育てる:顧客が孤立しないよう、知識共有や交流ができるオンライン・オフラインの場を提供しましょう。顧客はそこで「学び」「助けられ」、そして「貢献」することで、ブランドへの深い「帰属意識」を感じるようになります。

4-3 freee(日本)

freeeは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、クラウド会計ソフトなどを提供する日本のSaaS企業です。中小企業の「困った」に寄り添い、感情的なサポートを重視しています。

  • 戦略サマリ
    • 明確なミッションステートメントに基づき、スモールビジネス経営者の「孤独」や「不安」に寄り添うメッセージを発信。
    • ユーザーの成功事例を「物語」として丁寧に紡ぎ、共感と希望を喚起。
    • 手厚いカスタマーサポートと、困り事を解決するコンテンツで「安心」を提供。
  • 感情価値マップ
    • 共感:「スモールビジネスの味方」という姿勢への共感。
    • 期待:freee導入後の「経営が楽になる」未来への期待。
    • 安心:いつでも頼れるサポート体制と、税務・会計の不安からの解放。
  • 学びの翻訳(中小〜大企業向け)
    • freee公式サイトには導入事例や利用者の声が掲載されており、サポート関連の告知も確認できます(参考:freee 公式サイト|2024|freeeの導入事例とサポート活動)。
    • 「個人の成功」支援メッセージを明示する:「世界の主役に」というミッションは、単なる機能の話ではなく、個々の経営者の「自己実現」や「達成感」という感情に強く訴えかけます。自社製品が顧客担当者の「キャリア」や「個人的な夢」にどう貢献するかを明確に伝えましょう。
    • 「中の人」の顔が見える安心感:カスタマーサポートの担当者がブログに登場したり、イベントで直接顧客と交流したりすることで、単なるシステムではなく「人が支えている」という安心感と信頼が生まれます。

感情マーケティングの成功事例についてより多くの情報を知りたい方は、「感情マーケティング事例15選|世界的大手が実践する感情訴求と5つの成功法則」もご活用ください。

まとめ

本記事では、BtoBにおける感情マーケティングについて、その定義から5つの戦略、実践ステップ、そして成功事例までを体系的に解説しました。

要点の振り返り

BtoBの購買意思決定は「論理的」という幻想の裏に、「人」の感情が深く関わっています。機能や価格だけでは差別化が難しい現代において、「この人と組みたい」「この会社は信頼できる」といった感情的価値が、法人顧客の心を動かす決定打となります。

BtoBに特化した5つの感情(信頼、安心、期待、尊敬、帰属)を核に、「論理×感情のハイブリッド設計」に基づいた戦略を設計し、マーケティング、営業、カスタマーサクセスといった各職能で一貫して実装することが重要です。これにより、単なるベンダーではなく、顧客の課題解決を共に推進する長期的なパートナーとして選ばれるブランドを築くことができます。

KPIのトレンドを見ても、clabelの調査(2025年、n=225)によれば、「リード数至上主義」から「案件化数」「受注数・受注金額」といった事業成果に直結するKPIへとシフトする傾向が報告されており、量だけでなく質、そして顧客との感情的なつながりが重視されています(参考:シーラベル「【シーラベル、BtoBマーケ関連企業16社と共同調査】BtoB活動KPI変化報告」|2026|KPIがリード数から事業成果へシフトする傾向)。

実践ツール:BtoB感情訴求ブリーフの活用

ここでは、BtoB感情マーケティングを実践するための「BtoB感情訴求ブリーフ」をご紹介します。このシートを使って、自社のターゲットが抱える「隠れた感情ニーズ」を掘り下げ、効果的な感情訴求戦略を設計しましょう。

BtoB感情訴求ブリーフ

このブリーフは、社内チームで共有し、コンテンツ作成、営業トーク、CS対応など、あらゆる顧客接点で一貫した感情訴求を行うための指針となります。

  1. ターゲットペルソナ
    • 役職と部署:
    • 担当者個人の責任と評価指標:
    • 組織内での役割と影響力:
  2. ターゲットの「隠れた感情ニーズ」
    • 最も避けたい失敗とそれに伴う「恐れ・不安」:
    • 最も達成したい個人的成功とそれに伴う「期待・喜び」:
    • 社内での立場や人間関係における「共感・帰属」ニーズ:
    • 現状の課題から解放されたい「安心」への欲求:
    • 専門家として認められたい「尊敬」への欲求:
  3. 感情訴求の「証拠設計」
スクロールできます
感情カテゴリーターゲットが「信じる」ための具体的証拠(コンテンツ、機能、実績、サポート)
信頼例: 長期契約実績、第三者機関の認証、透明性のある情報公開、一貫したブランドメッセージ
安心例: 返金保証、迅速なサポート体制、導入プロセス詳細、リスクマネジメント説明
期待例: 製品ロードマップ、成功事例動画、新機能デモ、ビジョン・ミッション共感
尊敬例: 業界レポート、専門家ブログ、登壇歴、技術論文、ソートリーダーシップ
帰属例: ユーザー会、コミュニティ、共同開発、顧客中心の改善フィードバック
  1. 感情訴求の「台本骨子」
    • コンテンツ(ホワイトペーパー、ブログ、動画など)の冒頭フック:
      • 例: 「多くの〇〇企業が、〇〇という見えないプレッシャーと戦っています。」
    • 営業トーク(初回、提案、クロージング)での感情的キーフレーズ:
      • 例: 「この選択が、〇〇様ご自身のキャリアにどう貢献するか、ぜひ想像してみてください。」
    • カスタマーサクセス(オンボーディング、定期連絡)での関係性構築メッセージ:
      • 例: 「〇〇様がこのプロジェクトで成功されることが、私たちの最大の喜びです。」
  2. 感情効果の「測定KPI」
    • 信頼・安心:デモ申込率、RFP招致率、初期チャーン率、NPSの「推奨者」割合。
    • 期待:ロードマップコンテンツ閲覧率、新機能利用率、製品トライアル申込率。
    • 尊敬:専門記事読了率、ホワイトペーパーDL数、ウェビナー参加率。
    • 共感・帰属:ユーザー会参加率、コミュニティ活性度、SNSエンゲージメント率、紹介率。
    • 個人的成功:担当者からの推薦コメント数、社内成功事例での自社ツール言及数。

今日からの3ステップ

  1. 今日:既存顧客事例を「感情ベース」で書き換える
    • 既存の顧客成功事例を、本記事で紹介した「Before→Afterを三層(業務・感情・評価)で記述」する視点で見直してみてください。事例に登場する担当者が「どんな感情を抱き、どう変化したか」を具体的に描写することで、より共感を呼ぶコンテンツに生まれ変わります。
  2. 今週:営業提案書に「担当者個人メリット」欄を新設
    • 次回の提案書から、機能やROIの説明に加え、「このソリューション導入が、〇〇様ご自身のキャリアや社内評価にどう貢献するか」を具体的に記述するセクションを追加してみてください。担当者の隠れた感情ニーズに訴えかける強力なツールになります。
  3. 今月:感情ジャーニー×KPI設計に着手する
    • 自社の購買プロセスにおける「BtoB感情ジャーニーマップ」を作成し、各タッチポイントで顧客がどのような感情を抱くか、そしてどのような感情を喚起したいかを特定します。それらの感情と連動するKPIを、本記事の「BtoB感情訴求ブリーフ」や感情マーケティングの効果測定(記事No.XX)で紹介する指標群を参照しながら設計し、測定を開始しましょう。

関連記事への案内

感情マーケティングの全体像をさらに深めたい方や、具体的な戦略を学びたい方は、以下の記事もご活用ください。

FAQ

Q1:BtoB感情マーケティングは本当に効果があるのでしょうか?

A:はい、非常に効果的です。BtoBの購買意思決定は多岐にわたるステークホルダーが関わる複雑なプロセスですが、最終的には「人」が判断します。早稲田MBAの調査(2022年12月、n=386)では、BtoB SaaSにおける顧客の継続意思に「感情的コミットメント」が影響を与えることが示されています(参考:澤井翔輝「B2B SaaS におけるブランド外の因子が顧客のコミットメントに与える影響について」|2023|感情的コミットメントと継続意思の関連性)。また、Impressの調査(2019年、n=444)では、BtoB SaaSにおいて企業の価値観やカルチャーに共感している顧客は、そうでない顧客と比較して継続利用意向が58.8ポイントも高いと報告されています(参考:冨岡晶『BtoB SaaSの選定・購買は6割以上が感情的判断』|2019|価値観・カルチャー共感層の継続利用意向は非共感層より58.8ポイント高い)。論理的な優位性が前提となるBtoBでは、感情的価値が決定的な差別化要因となり、長期的な関係構築と事業成果に直結すると言えるでしょう。

Q2:理性的な経営層に感情マーケティングの重要性をどう説明すれば良いですか?

A:経営層への説明には「数字」と「リスク回避」の視点が最も効果的です。まず、本記事で紹介した「感情的コミットメントが継続意思に影響する(早稲田MBA論文)」「価値観共感が継続利用意向を58.8ポイント高める(Impress調査)」といった定量データを提示します。次に、「感情的価値への投資は、単なる感情論ではなく、長期的なLTV向上、解約率の低減、そして競争優位性の確立に繋がる費用対効果の高い戦略である」と説明します。特に、CMSWire(2026)が指摘するように、AI生成コンテンツの増加による「同質化」が進む中で、感情的ストーリーテリングと「人間の判断」こそが差別化の鍵となると伝えます(参考:Don Knapp「The AI Content Reset: What B2B Marketers Must Stop and Start in 2026」|2026|AI生成コンテンツの同質化と感情的ストーリーテリングの重要性)。「競合が機能や価格で横並びになる中、感情的価値こそが、顧客に『選ばれ続ける理由』を与える」と訴えれば、経営層もその戦略的意義を理解しやすいでしょう。

Q3:稟議書やRFPで感情的な価値をどう伝えれば良いですか?

A:稟議書やRFPでは、感情的な価値を「論理的な成果」に翻訳して伝えることが重要です。MarketingProfs(2026)が引用するB2Bバイヤー調査では、RFP回答が意思決定に81%影響することが報告されており、勝者選定で業界専門性、価格構造、イノベーション、製品適合が重視されることが示されています(参考:Ayaz Nanji「How Today’s B2B Buyers Approach RFPs and Vendor Selection」|2026|RFP回答が意思決定に81%影響、勝者選定で業界専門性・価格構造・イノベーション・製品適合が重視)。具体的には、以下の要素を盛り込みましょう。

  • 「信頼」と「安心」の数値化:セキュリティ認証、SLA(サービス品質保証)の具体的な数値、顧客の導入事例(特に長期契約実績)を明示し、リスク軽減効果を強調します。
  • 「期待」の未来像:導入後のロードマップや、ビジネスがどう「進化」するかを具体的に描き、ROI試算だけでなく、未来へのポジティブな影響を視覚的に示します。
  • 「個人的成功」の裏付け:導入担当者が得られる社内評価やキャリアアップの可能性を、「〇〇様のチームのKPI達成に貢献」といった形で論理的に記述し、その根拠となる成功事例や支援体制を添えます。
  • 「尊敬」の専門性:業界における自社のソートリーダーシップ(専門家による論文発表、業界レポート、受賞歴など)を盛り込み、高付加価値パートナーとしての地位を確立します。

感情的価値を数値や具体的なメリットと紐づけることで、論理的な裏付けを持った説得力のある稟議書・RFPを作成できます。

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この記事を書いた人

当編集部は、世界的エンタメブランドでの実績を持つブランディング専門家の知見をもとに、実践的なブランドマネジメント情報を発信しています。

編集方針:
セサミストリート、ディズニー、ウルトラマンなど、数々の世界的ブランドを手がけた35年の業界経験から導き出された理論と実践ノウハウを、検索ユーザーの課題解決に役立つ形で体系化。最新のブランディング手法を分かりやすく解説します。

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